第10回:中川芳江 理事
(OFFICE SPES 代表)

 

最近、「幸せ」「幸福」について目にすることが多い。自分の関心がそこに向かっているからかもしれない。そう思い、試しに国立国会図書館蔵書検索で「幸福」をキーワードに検索すると、1994~2003年の10年間に2,355件だった該当文献が、2004~2013年の10年間では4,326件、1.8倍とやはり増加していた。前者には阪神・淡路大震災が、後者には新潟県中越地震を挟んで東日本大震災があった。私自身1995年当時、震災を経験して幸せについてずいぶん考えたが、それは特異なことではないようだ。3.11以降、幸せとは何か、という問い直しは、全国で繰り返されている。このソーシャルビジネス・ネットワークでも、様々な事業を通じて問いかけ続けている。

 

幸せの答えを見つけているわけではない。日々の仕事の合間に、雑事がひと段落した夜中に、ふと想い巡らせている。早朝に青空を見上げて、小さな幸せを感じることもある。あまりにもささやかで気恥ずかしいが、こういう日は颯爽として笑顔になる。そして笑顔には笑顔が返ってくる。

 

あたり前に思えていたものが一気に崩れ去った時、幸せの景色は変わる。

 

ブータンに行けば幸せがころがっているのではないと誰もがきっとよくわかっている。日々の経済活動は、持続的に生きていくために不可欠で、経営と雇用のためには必須だ。社会に貢献する理念だけで食べていけるわけではない。それでも、自分(達)の事業が社会に影響をもたらすならば、社会課題を解決できるようにありたいし、そのように行動していたい。右手に理想、左手にそろばん、どちらも追及して、ぎりぎりの判断を迫られても自分を裏切らない判断をしたい。1998年に自然環境保全を事業化しようと株式会社ネイチャースケープを設立した時から、あがきながらも自分の中で守ってきたことである。

 

仕事や事業を通じて、自分の幸せ、他人の幸せ、みんなの幸せが追及できれば、それこそ、幸いなことだ。「いつか幸せになるのではない。今日の、明日の幸せの連続と積み重ねが明後日の幸せをつくるのだ」と聞いた。だとしたら、ソーシャルビジネスをキーワードに若い方々もしなやかに挑戦している今、それが希望であり、その希望が未来へ続く、今の幸せなのかもしれない。

 

 

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