第11回:原田勝広 理事
(明治学院大学教授、ジャーナリスト〔元日本経済新聞編集委員〕)

 

「蛤と為り不明者と会う雀」

 

最近、新聞で見かけた句である。人里ではどこにも雀のちょんちょん跳ねるかわいい姿がある。しかし、人がいなくなると雀もいなくなるという。不明者が死者となって眠る大海原では、スズメも貝に姿を変えているのであろうか。

 

もう一句。

 

「父逝きし海より海胆(うに)はあがれども」

 

漁業が再開され、ウニもさんまもカキも戻ってきた。ただひとり、父親は帰って来ない。被災者の喪失感はかくも深いのである。行政も、NPOもボランティアも無力だ。とりわけ、マイナスをゼロに戻そうとするような活動は、この深い喪失感の闇を埋めることはとてもできない。そんな思いがしてならない。

 

ひとつの希望は、少子高齢化、医療過疎、産業衰退といった課題が一層深刻化している被災地に、同情したり、いたわったりするのではなく、逆に、日本再生のモデルにできないかと、社会起業家による創造的な挑戦があちこちで始まっていることだ。

 

例えば、イチゴ農家が被災した宮城県亘理郡山元町で、ITを駆使した先端施設で新たなイチゴ栽培に取り組んでいる岩佐大輝さん。伝統的な技と最新技術を結び、高齢者でも女性でも働け、ネットで販売できる仕組みを開発した。今後10年で1万人の雇用を目指すという。この日本式イチゴ生産をインドに持ち込み、貧困に苦しむインドの女性に雇用を創出するプロジェクトも動き出した。世界で戦える被災地発のグローバル企業といえる。

 

陸前高田市内の本社、工場が流されても従業員を解雇せず、再建を果たした、老舗の醸造業、八木澤商店(陸前高田市)の河野通洋さんも「10年後には50社のベンチャー企業を陸前高田に」と復興に燃えている。

 

岩佐さんが代表を務めるGRAグループを支えたのはグロービス大学院時代の仲間であり、NECである。河野さんの仲間は、岩手県中小企業家同友会気仙支部の経営者。そして、なつかしい未来創造㈱のパートナーであるソーシャルビジネス・ネットワークである。こういう東京につながる「ネットワーク・コミュニティ」の存在がなければ、社会起業家も活躍できない。二人が人材育成に力を入れようとしているのも理解できる。

 

そういえば、仙台で復興人材を育てているワカツクの渡辺一馬代表も、ETIC.と連携している。ネットワーク・コミュニティがさらに広がり、東日本から日本再生が始まることを期待したい。

 

 

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