第22回:森山奈美 評議員
(株式会社御祓川 代表取締役)

 

流れが変わったな、と思う。

特に、311以降の変化が顕著である。

かつて、若者が能登という田舎に帰ってくることは、どこか後ろ向きなイメージがあった。

夢破れて失意のうちに、または長男なので仕方なく。

当事者が、どれだけ前向きな気持ちでいたとしても、世の中の大半が東京を先頭とした序列の後ろの方に能登を置いているので、「能登はいいところだ」という言葉も、どこか負け惜しみを言っているように聞こえたものである。

数少ない移住者たちは「何でまた、こんな田舎に」と、奇異の目で見られていた。

ところが、今はどうだろう?

能登への移住者は絶え間なく、それも、とても軽やかに、自分らしい暮らしを楽しんでいる。

被災地に行けば、自分の能力を、自分の人生を、被災地の復興のために使いたいという若者たちに次々と会うことができる。

そのような人たちに憧れさえ持って、多くの人が「田舎」を訪れている。

そう。確実に流れは変わってきているのだ。

とはいえ、地域の課題は山積である。

世界農業遺産「能登の里山里海」を後世に伝えようとしても、高齢化がすすみ、里山が荒廃し、現在の担い手がいなくなるのも時間の問題である。

やるべきことはたくさんあるのに、圧倒的に担い手が足りない。

この状況を何とかするため、この能登というフィールドで、地域や企業の課題を若者と共に解決しようという、実践型インターンシップ「能登留学」に取り組み始めて丸4年が経つ。

能登の地に、若者が新しい風を運んできた。

社会人経験もスキルもない若者が、本気で向き合い、壁を乗り越え、多くの人に支えられることで、若者だけではなく、企業も地域も育つという物語を生み出してきた。

能登留学のフィールドとなるのは、ソーシャルビジネスという言葉がなかった頃から、地域に根ざして、地域への貢献を当たり前の価値観としている地元の企業である。

利益を地域に還元し、「三方良し」を背伸びすることなく続けている。

若者たちは、その現場で、効率的なことだけが正解ではないこと、不合理の中にこそ人々の喜びがあること、貨幣価値以外の価値交換が現実に起こっていることなどを肌で感じていくのである。

今はまだ、小さなうねりでも、これらの物語を積み重ねていくことによって、きっともっと大きな「流れ」を生み出すことができると信じている。

変革の波は、いつでも辺境から。

能登で学んだ若者たちが、どんな状況からも希望を持ってチャレンジをしていく。

この日本を変革していく担い手として。

 

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