第24回: 山口亮三 評議員
(NPO法人 三鷹ネットワーク大学推進機構 常務理事)

 

「心にのこる童話」

 

おぼろげな記憶をたどっていくと木造の園舎の一室で、役になりきった幼稚園の先生がいくつかの登場人物を演じていたのを憶えています。

その紙芝居はオスカー・ワイルドの「幸福な王子」です。

町の中心部にそびえ立つ王子の像が運び屋のツバメに託して、自分の身に付けていた宝石や金箔を悲しみのなかにいる町の人々に分け与えていくお話しです。

最後はみすぼらしい姿になった王子像と南に渡っていくチャンスを逃して凍え死んだツバメが残るという悲しい結末です。

 

もうひとつ印象的なお話しがあります。

小学校の国語の教科書に登場した浜田廣介氏の「泣いた赤鬼」です。

人間と仲よくなりたい赤鬼のために青鬼が悪者役をかって出て、人間を助けることで赤鬼は人間と仲よくなるというお話しです。

最後は姿を消した青鬼を思って泣く赤鬼の場面で終わります。

 

どちらもつらいラストシーンでしたが、子どもごころに胸が熱くなったのを憶えています。

このふたつの話しに共通しているテーマは「自己犠牲」です。

その目的は違いますが、町の人や友だちのために自分を犠牲にするという精神です。

人間は本能的に常に誰かのために何かをしたいと思って生きています。

その思いは歳をとるほどに大きくなり、社会のために、地域のために、役に立つことをやり続けたいと感じていくのではないでしょうか。

 

3.11 東日本大震災の際に自分の身の危険を顧みず、防災無線で避難を呼び掛けた自治体職員、被災した人を助けるために自らの命を賭した消防士や警察官、多くの方が誰かを助けるために命懸けの取り組みを行い、尊い命を落としました。

 

果たして自分はそうした場面に遭遇して、自らの命を懸けて同様な行動がとれるのか、最近よくそんなことを考えます。

おそらく予め想定して、その通りに実行できるものではなく、その瞬間に自然と出てくる行動であろうと思いますが、常にそのことを自分に問いかけながら、そしてその気概を持って生きていくことが、被災者の皆さんのために何かをしなければと思いながら結果的に何もできていない自分へのせめてもの慰めであり、言い訳なのかもしれません。

 

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