第33回: 高津玉枝 評議員
(株式会社福市/LOVE&SENSE 代表取締役)

 

あちこちに草が生え、荒涼とした平地には寒々しい風が吹いている。

時折、土にまみれたトラックが騒音をまき散らして、走り去っていく。

被災地の今の風景だ。

EAST LOOPという手仕事でニットブローチを編んでもらう東北支援をおこなってきた。

作り手である彼女たちとの会話は明るく弾むが、内容は過酷で生々しく、被災地の風景のように厳しい状態は今も変わっていない。

 

震災後、各地にさまざまな手作りプロジェクトが生まれた。

女性たちを精神的にも支えていた、「チャリティグッズ」の多くはことごとく、今、市場から姿を消した。

私たちのプロジェクトも、同様の道をたどりつつある。

しかし、それは最初から想定できたことでもあった。

スタート時に「このプロジェクトは一年限り。一年後には元の仕事に戻ってほしいし、新しい仕事を探してほしい。万が一続けたいと思う人たちがいれば、その人たちに譲っていきたい」という文章を参加者と共有した。

一年経ち、二年経っても被災地は厳しさを増すばかりで、私たちは、プロジェクトをそのまま続けたが、三年目に現地に法人を設立し、移管に踏み切った。一つの方向性が見えたからである。

 

7万個以上の手編みのブローチが編まれ、消費者の元に届いた。

編み手さんは数百個、多い人で千個以上のブローチを作り続けてきたことで、「初心者」が「編み物の熟練者」に成長し、奇しくも、数十人ものプロの編み手集団が、被災地に生まれていたのである。

毛糸メーカーに尋ねると、編み手をさがしているという。

商品のサンプルを編む、店頭に置くための販促物の制作など、こまごまとした、しかし正確さと納期を求められる編み物の仕事がここにあるではないか。

それはチャリティでもなく、施しでもなく、継続していくことができるまぎれもない「仕事」。

 

震災によって生まれた手仕事が、地元の財産に変化し、それを活用することで、小さいかもしれないがビジネスにつなげていくことができる。

これを軌道に乗せて、継続していくことで、はじめてソーシャルビジネスと呼ばれるものになるのだと思う。

まさに、今からが、正念場である。

 

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