第5回:鈴木均 理事
(株式会社国際社会経済研究所 代表取締役社長 兼 NEC CSR・環境推進本部 主席主幹)

 

私が本格的にソーシャルビジネスに関わったのは、2002年にNPO法人ETIC.と共に「NEC社会起業塾」のプログラムを立ち上げた時である。この活動を立ち上げた背景は4点。ひとつは、NPOのキャパシティを強化するには事業(ソーシャルビジネス)の視点が不可欠であり、起業家としての能力を備えた人材を育成したかったこと、二点目は、日本の産業構造が製造業中心からサービス事業型にパラダイムシフトを起こしている中で、将来の雇用の受け皿としての一翼を担えるソーシャルビジネスを創出していく必要性があったこと、三点目は社会起業家を目指す若者に教育機会を提供したかったこと、そして最後にICTを活用した生活者視点のサービスソリューション事業を共創したかったからである。

 
特に一つ目の狙いが重要だった。1998年に米国勤務から本社に帰任した時に、丁度NPO法が成立し、NPOに対する社会的認知と共に期待の高まりを感じた。それと共に若者の間にNPOへの関心が高まった。ところが米国のNPOと違って、志高くNPO活動に従事するものの活動を継続できないというNPOの組織面や財務面での脆弱さを痛感した。社会課題の解決に一所懸命取り組んでいる若者が、取り組みを継続できるようにするためには、組織自身の持続可能性を担保する安定した事業収入が不可欠であると強く感じた。

 
お陰さまで40余りの社会起業家を輩出した。その中には、NPO法人フローレンスの駒崎さん、株式会社ケアプロの川添さんなどのように成功に向けてしっかり歩んでいる多くの若者がいる。彼らが3.11の救援や復興に関わり多大な貢献をされていることも嬉しい。私自身も彼らから多くの刺激と学びを得た。社会起業家には、社会を変えるという情熱、社会を変えるための革新的なビジネスモデルを発想できる柔軟性と社会感度の高さに加え、外部リソースをうまく利用できる人的な魅力と仲間作り(絆)の能力、の三点が備わっているようだ。

 
この「絆」は、3.11においても証明されたように、日本人が本来大事にしてきた価値観だと思う。企業も、ステークホルダーとの対話や連携によって、事業活動や企業市民の立場で社会課題の解決に貢献することがステークホルダーから期待されている。その実践がCSRであり、成果が企業の品格であると思う。それを考えると、社会感度の高さや社会をイノベーションで変えるというパッション、また人と人との「絆」に基づく共創の精神と実践は、社会課題の解決を目指す企業活動には不可欠であり、それらが企業人にも求められる時代になったと思う。

 

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