第16回:加藤 喜久 理事
 (Informa Investment Solutions Japan – GM / (株)レスポンスアビリティ- GM)

 

去る3月5日、6日の両日に東京証券取引所で開催されたRI(Responsible Investor) Asia 2014のカンファレンスに参加する機会を得た。「ESG and Sustainable Finance」を標榜するRI誌が今年はアジアを皮切りに欧州や北米でも順次開催するもので、日本では日本取引所グループ(JPX)が会場の提供だけに留まらず「共催」と言う形で深く関与している。私は証券会社や商社に長く籍を置き、今またグローバル投資データベースの日本展開を担当し、マーケット/市場に常にコミットしてきたつもりだが、やはりその日本の中心地たる東証でこのような催しが開催される事に、深い感慨を覚えずにはいられなかった。私はこのセミナーには、スポンサーの内の一社でもあり、環境評価データベースのパイオニアである英Trucost社 (http://www.trucost.com/jp/what-we-do) の、日本側でのパートナーたる(株)レスポンスアビリティ (http://www.responseability.jp/about-us) の一員として参加した。

 

私はSBNの前身、SIJの頃からファンド委員会のメンバーとして、主に機関投資家に対し「ESG」に沿った投資を呼びかけ、その為の出資を募る努力を続けてきたが、残念ながら成果を上げるに至っていない。その要因の一つに投資家側が(SRIと言っていた時代から)どこか腰が引けている、即ち「CSRは企業イメージや顧客満足度の向上を目指すコストであり、利益を生むものではない。」との認識から、積極的に資本を投下しないと言う考え方が裏側にあるように思う。しかし今回のセミナーに於いてJPXは、「ESGを意識した経営が企業の収益を向上させる」事、また「ESGに積極的な企業への投資がより高いパフォーマンスを投資家にもたらす」事を自ら提唱した。既にS&Pダウジョーンズ及びTrucost社と共同でS&P TOPIX(東証株価指数)150 Carbon Efficient指数をJPXが開発しており、その指数は通常のS&P TOPIX150 指数に対して過去5年間に渡ってアウトパフォームしている。

 

SBNファンド委員会のテーマの一つに、投資収益(Financial Return)と社会収益(Social Return)の両立を掲げているが、この2つは矛盾するものではなく、寧ろ後者が前者を押し上げる要因となっている事に気付かされる。環境だけでなく、例えば女性やマイノリティの積極的役員登用が新たなマーケットの開拓やガバナンスの向上に繋がり企業の収益を伸ばしたり、環境の中でも例えば、水資源の周辺環境に配慮した活用をそのサプライチェーン全体に見直したグローバルな食品企業が、現在の収益と将来の持続可能性の両方で高い評価を得て市場での株価に反映されたりしている。ESGは企業の収益や投資家のパフォーマンスに不可欠な要素となっているのである。

 

3.11の影響は近代日本の固定観念のいくつかを創造的に破壊し、新しい概念を生まれさせている。私はマーケットの一参加者として「投資」をESGの基本理念の元、広く社会に浸透させたいと願ってきたが、時代は、私の様な未だ「投資収益」に拘る古い型の投資家など追い越し、「社会収益だけでも十分だ」とする新しい投資概念が常識になる様な、空恐ろしくも素晴らしい時代の到来さえ予感させてくれる。

 

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