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2015.11.27 UPDATE

社会事業家100人インタビュー特別企画
先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ

2015年10月25日(日)

菅原 弘紀氏

ゲスト:菅原 弘紀さん 

株式会社山形県自動車販売店リサイクルセンター 専務取締役

特定非営利活動法人山形県自動車公益センター 専務理事

<プロフィール>

1966年トヨタカローラ山形(株)へ途中入社。74年より所長職。以後・各地域を担当、2001年2月の本社営業本部地区長を最終とし、同年2月(般社)日本自動車販売協会連合会山形県支部常務理事として出向。翌年、専務理事就任。05年9月、同支部会員のメーカーディーラー全社の出資により、(株)山形県自動車販売店リサイクルセンターを設立。09年1月には、同支部の公益活動を基に、新たな取り組みをスタートさせるため、(特)山形県自動車公益センターを設立。山形県内自動車販売業界が一丸となって、環境に配慮した取り組み、エコドライブ推進、エコカー普及、環境マイスター認定制度支援、エコ整備(法定定期点検)推進、交通安全推進の他、循環型社会の構築にむけた開発研究等(再利用、再商品化、再資源化)、効率的な作業を行っている。

 

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<今回のインタビューのポイント>(川北)

自動車の販売に永く携わり続けてきたからこそ、自動車が販売された後に、ドライバーによって運転され、廃車されるまでのライフサイクルを通じて発生する社会課題に挑み続ける菅原さん。同じ課題に向かう行政やNPOと連携しながら、具体的な手法を試し続けているところに学んでほしい。

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自動車販売業界の社会的責任に、協働で挑む

 

自動車を「社会悪」としないために、パートナーシップを組む

山形県において、自動車とは生活になくてはならない必需品です。
今から30年程前のバブル経済・まっただ中のとき、私は自動車販売会社の米沢営業所に勤めておりました。
当時は「交通戦争・交通地獄」と言われるほど多発交通事故が深刻な社会問題となり、悲惨な事故がおこるたびに、消費者団体や婦人団体から怒りの声があがるなど、私自身、自動車販売に携わる者として、いたたまれない思いが続く日々でした。山形県警に勤める友人に、「交通事故のない社会をつくりたい」と交通安全キャンペーンの開催を相談したところ、「良いことだから米沢市だけでなく県内で一斉にやるべきだ」と後押しされました。

その為、山形県警と(般社)日本自動車販売協会連合会山形県支部(以下、自販連山形県支部)との連携により、自動車メーカーディーラー全社の拠店長が山形市内ホテルへ一同に集まり、交通事故を防止し、安心安全で暮らせる交通社会の実現に向けた組織を結成、山形県自動車販売店交通安全対策推進協議会がスタートしました。その翌年には全国に広がり、(般社)日本自動車販売協会連合会交通安全対策協議会が発足し、全国各地域においてそれぞれのやり方で交通安全対策を推進しています。

1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)で京都議定書が採択され、日本ではCO2の約2割を自動車等の運輸業が排出しているということを知り、ショックを受けました。自動車の排ガスは、ユーザーが車の乗り方を変えることによって低減できます。車間距離をとって急ブレーキを避ける運転は、安全運転でもあります。これまでの活動と同じ仕組みで、地球温暖化も防止できると考えました。

経済活動と環境保全は両立できるし、両立できなければ長続きしません。安全運転で事故を減らすとユーザーは保険料が下がり、排ガスを抑える乗り方でガソリン代も節約できます。ちょうどその頃、低公害車(エコカー)の普及推進が始まり、県庁と協働で取り組むことになりました。県庁の駐車場を借りて、県内のメーカーディーラーから低公害車を集めて展示会を開催。「民間団体に県庁の駐車場を貸すとは何事か」とのクレームもありましたが、地球温暖化の防止という目的は行政と共通しており、県庁の担当者ががんばってくださいました。

その後も行政とは10年間以上継続して協働していますが、行政と業界団体が長期にわたって協働する環境の取り組みは世界的にも珍しいと注目され、14年10月には国連本部(ニューヨーク)にて開催された国連エコドライブカンファレンスの事例発表には日本から他の2団体とともに私ども自販連山形県支部・(特)山形県自動車公益センターが招かれプレゼンをする事ができました。自動車を生業とするものとして、自動車を社会悪だと言い訳したくはありません。環境問題も交通安全推進も、話し合い・理解が深まれば行政はバックアップしてくれます。

 

環境マイスター認定制度を山形に立ち上げる

地球温暖化については、当時、自動車を販売する私たちに十分な知識がなかった事から、3,000名以上いる山形県内の自動車販売スタッフ全員に学ばせるための資金を得ようと、05年に「先駆的省資源・省エネルギー実践活動等推進事業」という内閣府の公募事業に応募、結果は次点で採用されませんでしたが、環境市民(京都府)というNPO法人と出会うきっかけとなりました。環境市民は「環境に配慮した買い物(グリーン購入)」の普及をめざして、消費者に環境配慮型製品について適切な情報が伝えられる販売スタッフを増やすことに取り組んでいました。そこで、山形県では環境市民と私たち自販連、サッシ・ガラス協同組合、家電の販売組合等が協働して、地球温暖化防止、省エネルギー、グリーン購入等の知識を学び試験を突破した販売スタッフを「環境マイスター」に認定する制度を始めました。

認定を受けた販売スタッフは、エコカーやエコ運転がいかに節約になるかということもしっかり説明するなど、地球温暖化防止と経済的なメリットの両方を伝え、交通事故削減にも貢献できます。販売スタッフが自信をもって接客できることで、販売店のモチベーションも上がるなど、環境マイスターが増えることは、自動車販売業界全体のステータス向上へと繋がります。

翌年、同公募事業に再度チャレンジし、その時に認められた予算では、私たちだけが知識を得るにとどめず、エコ安全運転を広く呼び掛ける「YBCやまがたドライビングエコ」というラジオ番組をスタートし、その後も10年にわたり継続して放送しています。

山形県では環境マイスターが900人を超えました。環境マイスターによるエコ安全運転の啓発活動は10年間で750回を数えます。更なるエコ安全運転の普及推進のために、今年からは小学校5年生の子どもたちに地球温暖化を伝え、その対策としてのエコ安全運転を早期教育する「こどもエコドライブ推進事業」を始めました。修了後に子どもライセンスを発行すると、子どもたちは喜んで親にドライブマナーを伝えたり、子どもの目線で「エコでないドライブ」を指摘するなど、子どもたちを巻き込みながら社会を変えるプログラムです。

山形県自動車公益センター

使用済み自動車の適正処理事業への挑戦

日本では年間約360万台の自動車が廃車になっています。鉄やアルミ等の金属部分以外はリサイクルされず廃棄されることが多く、時に不法投棄という問題も発生します。その対策のために、自動車リサイクル法が05年に施行されましたが、その直前に、県内で過去最大規模の不法投棄事件がありました。倒産した廃棄業者が6,000台もの廃車を山間部に放置したのです。撤去するためには、一台ずつ、元の持ち主であるお客様と連絡を取る必要がありました。そこで、お客様は私たちを信じて買い取り(下取り)を頼んでくださっているので、自分たちにも責任の一端があると気づかされました。

当時、県内には廃棄・解体業者が4団体、54事業所があり、このような不法投棄が2度とないよう県内組織を作り、どこかが倒産したときは、業界として責任を持つようにして欲しいとの話し合いを何度も行いましたが、どうしても話し合いが付かず、やむえず、私ども県内全メーカーディーラーの総意として解体業をやる事になりました。

コンセプトは「新車の販売から使用済みの適正処理まで一貫して責任を持つ体制」です。
新しい解体業の立ち上げについては、検討委員会、準備委員会を作り、当時、私は自販連の山形県支部の専務理事を務めていたため、事務方責任者として(株)自動車販売店会館の分社という初めての手法で新会社を立ち上げ、持ち株会社が誕生しました。そして山形日産自動車(株)が経営していた前北部産業を従業員数10名と一緒に譲り受けましたが、予測される規模に備えるためには、設備投資だけで3億円が必要でした。銀行との交渉の結果、借り入れが叶い、当初借入資金は返済を終え、その後の庄内事業所等追加投資分の一部を現在返済中です。

11年からは、海外への自動車部品等輸出事業を開始、リサイクル部品の流通に向けた連携先は、マレーシア、ドバイを通じて中近東、タンザニア、UAE、などに広がりました。近年、海外と仕事をするなかで、日本人が物を大事にしなくなったことを痛感しています。タンザニアでは、少ないものを分け合って素朴に生活しています。でも、東南アジアでは物があふれてきていて、高度成長時代の日本と同じだと感じます。世界に影響を与えうるからこそ、今、私たち日本人は3R(リサイクル・リユース・リデュース)+リスペクト(物を大切にする心)を伝えたいとの考えで、シートベルトやエアバッグをリサイクルした商品を各販売店店舗棟で展示しています。設立10周年記念で若いデザイナーの力を借り、新たな商品のリサイクルバッグをつくってみたら、大変大きな反響がありました。山形に新しい雇用をつくりながら、リサイクル商品をつくりたいというのが、長年の想いです。日本の20年、30年前の状況を繰り返さないよう、日本はリサイクル技術も海外に示していかなければなりません。

今取り組んでいるのは、古タイヤの農業用の暖房資源への転用です。ヘッドライトを水耕栽培用のライトに、バッテリーをソーラーパネルで発電した電気の蓄電に使うなどの活用を実験的におこなっています。省エネとエコ安全運転には経済的なインセンティブがありますが、課題はリサイクルです。自動車販売業界としては、廃車までのライフサイクルを通じて環境負荷の少ない車を、製造過程より考慮してもらいたいと願っています。

(取材日:2015年10月22日)

 

(文責:前川)

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