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2016.02.15 UPDATE

社会事業家100人インタビュー第46回

2015年12月1日(火)19:00~21:00

於 株式会社クレアン会議室

ゲスト 株式会社クレアン 代表取締役 薗田綾子さん

薗田さん②

<プロフィール>

薗田 綾子(そのだ あやこ)さん

株式会社クレアン 代表取締役
特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム 事務局長

兵庫県西宮市生まれ。甲南大学文学部社会学科卒業。
1988年、女性を中心にしたマーケティング会社クレアンを設立。
1995年、日本初のインターネットウィークリーマガジン「ベンチャーマガジン」
を立ち上げ、編集長となる。

そのころから、本格的に環境・CSRビジネスをスタート。
現在は、大阪ガス(株)、(株)セブン&アイ・ホールディングス、任天堂(株)、明治ホールディングス(株)、ユニ・チャーム(株)、横浜ゴム(株)
など延べ約600社のCSRコンサルティングやCSR報告書の企画制作を支援。
特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム事務局長、
特定非営利活動法人社会的責任投資フォーラム理事、
環境省チャレンジ25キャンペーン関連事業推進委員会委員、
内閣府「暮らしの質」向上検討会委員、日経ソーシャルイニシアティブ大賞審査員、
また次世代への教育活動として東北大学大学院および大阪府立大学大学院の非常勤講師などを務める。

 

<今回のインタビューのポイント>(川北)

社会を変えるには、自分たち自身が事業者として直接働きかける方法と、変える力のある組織を動かす方法があるが、クレアンは、後者の形で社会に影響を与えているといえる。企業を変えるには、主に①購買、②コンサルテーション、③事業サポートの3つの方法があるが、クレアンの事業は②や③に該当し、企業のCSRへの取り組みに入り込みながら、その対価として企業からお金をもらいつつ、次世代の社会にとってよい結果をもたらしていかなければならない。そのせめぎあいをどう実現させているのか、注目して話をうかがっていきたい。

 

人の縁をつないで事業を育ててきた

クレアンという社名は、「クリエイティブな起業家」というフランス語の造語です。私が25歳のときに大阪で創業しました。

当時は女性が起業するなんて珍しい時代で、周囲の人からは反対されましたが、母だけは応援してくれました。この母の生き方が、私の人生にとても影響を与えていると思います。

母は戦後の混乱期に、早世した祖父に代わって一家を支えるため、22歳で商店を興し、経営してきました。面倒見のよい母の影響を受け、自分の根っこにも、「人の役に立つ仕事を一生したい」という想いは強くありました。また、今の仕事でも私は場づくりを行うことが多いですが、母もそういう性格で、実家には様々な人たちが出入りしていました。

クレアンは、当初は女性向けのマーケティング会社として、多様な企業の案件をこなしていました。1995年ごろにインターネットが出てきた時には、とても可能性を感じ、30社ほどの会社でコンソーシアムをつくり、インターネットの研究会を行っていました。集めた会費で初のインターネットウィークリーマガジン「ベンチャーマガジン」を発刊していました。インターネットでどんなことができるか想像し、当時アイデアを出し合っていたことは、現在はほぼ実現しています。

環境に関わる仕事をしたいと思ったのは、1992年のリオ・デ・ジャネイロでの地球環境サミットがきっかけです。大量消費社会がこのまま続くことは考えられないと感じました。

1996年には環境問題を扱った書籍「地球は今」シリーズ10巻を発刊しましたが、ずっと環境問題の情報をインターネットで発信したいと思っていました。そんな中、ニュービジネス協議会を通じて、NEC(日本電気株式会社)の方と会う機会があり、想いを伝えてみました。すると偶然、その担当者の方がその書籍を読んでくださっていたこともあって話が進み、1997年に環境情報マガジン「エコロジーシンフォニー」をNECシステムテクノロジー(当時)と共同でスタートすることができました。この制作のため、様々な企業の取組みや世界の最新情報も取材するようになりました。

そのころには環境への取り組みなどの講演会にもお招きいただくようになり、そこで知り合ったことがきっかけで、2000年には、松下電器産業株式会社(当時)の環境報告書の企画・制作を支援しました。

環境報告書は、当時から専門用語も多く難しいものでしたが、専門家ではない、普通の人も読みたくなるようなものにと工夫を重ね、第4回環境レポート大賞「環境庁長官賞」を受賞することができました。以後、環境報告書、CSRレポートの制作支援事業を行うことが増えており、現在では毎年40数社のレポート制作を実施しています。

レポート制作の仕事をするうちに、CSRレポートはマネジメントツールになるということに気づきました。最初は、企業は利益ばかりを考え、負荷を与える存在のように思っていましたが、仕事をしていて、企業の方が改善していこうと努力していることに気づきました。CSRへの取り組みを通じて、長期にマネジメントすれば企業を変えていくことができるのです。当時は、日本のすべての家庭の電力消費の1%がパナソニックの製品によるものでした。でも、もしライフサイクル全体で半減できるなど、大きな企業を変えれば、社会に与える影響も大きいですよね。

 

CSRを通じて企業を変える

クレアンは、報告書の制作やウェブでの発信をはじめとするCSRレポーティングと、CSR経営・活動を推進するためのコンサルティングとを、一体で進めるビジネスモデルです。CSRへの取り組みの現状分析から、ビジョン、中長期・短期の計画への落とし込み、レポーティングやステークホルダー・エンゲージメントまでを一貫してサポートしています。ISO26000やGRI【★:用語解説!】など、グローバルなガイドラインやフレームワークなども先行して学び、企業の方と共有する機会を積極的に設けて、仕事に活用するようにしています。

私たちは、企業の中に入って仕事をし、中の人たちと一緒に組織を変えていきます。当初は、レポート制作と同時にコンサルティングを行い、その対価をいただくことは難しかったです。どうしても、コンサルティングもレポート制作の付属サービスとみなされてしまうことが多かったのです。

現在では「統合経営」という概念に象徴されるように、経営を収益だけではなく、非財務的な価値も評価しようという機運が高まっています。今後もさまざまな考え方や手法が示されると思いますが、枠組みにはこだわらず、結果として、社会にとってもその会社にとっても、サステイナブル(持続可能)な経営ができれいればよいというのが私たちのスタンスであり、企業の中に持続可能な事業経営の型を埋め込みたいと考えています。

その意味でも、私たちが関わっている企業の人々が、CSRに取り組む過程で、どう変わっていくかのプロセスが重要だと考えています。CSRとして自社の強みや自社らしさを打ち出していくものがまだ見出せていない企業では、素材をつくるところからはじめ、そのプロセスをレポートしていくこともあります。CSRへの取り組みは、突き詰めれば企業全体の価値を見出すことにもつながり、その支援の領域も組織全体の存在意義にまで広がっていきます。

3年間も携わると、その企業の社内の体制や風土がわかるようになります。おかげさまで、昨年から今年にかけてお手伝いさせていただいた顧客からのリピート率は90%になりました。CSRへの取り組みが進まないボトルネックが経営者にあるのか、マネジメントにあるのかもわかるので(笑)、どこをどう動かせばよいのか、企業に合わせてアドバイスしています。すでに10年以上担当させていただいている企業もありますが、CSRへの取り組みをどう社内に浸透させていくかを伝えられることが、ご評価いただいている点だと考えています。

また、できるだけ幅広い業界をカバーすることで業界全体を変えていきたいと考えて、意識的に案件をいただくようにしています。

また、私たちが提供するサービスは、型どおりのものではなく、半分以上は顧客からの相談に応じて、個別にサービスをつくる形で行っています。

大手化粧品メーカーでは、動物愛護NGOから動物実験廃止を訴えるデモを受けた際、動物実験廃止に向けた取り組みを協議する円卓会議をコーディネートしたこともあります。2年間で5回の対話を積み重ね、同社は動物実験の廃止を決断しました。協調をコーディネートすることも私たちの役割の一つです。

 

価値を発揮し続ける組織をつくる

社内では、クレアンで働く事の共通価値観として、「クレアンバリュー」という7つの行動規範を掲げています。こちらは、日々業務において意識することであると同時に、セルフチェックにも、各人の査定にも使います。ただ、できなかったことを減点するのではなく、考え方や姿勢など、自分の強みを確認していく道標でもあります。

 

通常のレポート制作では、各顧客企業の案件に対し、10人前後が携わり、年に40数社程度担当させていただいているので、1年間で延べ500人が稼動していることになります。当社の社員はプロデューサーの役割を担い、他は外部のビジネスパートナーと業務を進めます。

最近ではコンサルティング会社や投資銀行の出身者など、様々な専門スキルを持った方が入社してくれるようになりました。

図1 クレアン

バックキャスティングで考える

2015年9月に、国連では、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。その前のミレニアム開発目標(MDGs)は、貧困解消をはじめとする途上国への対策が中心でしたが、SDGsでは、企業セクターの積極的な関与が重視されるなど、先進国を含む世界全体の今後の指針です。

私たちは、社内でも、顧客に対しても、未来から現在を振り返って考える「バックキャスティング」の考え方を促しています。過去の延長線上ではなく、未来のあるべき姿から考えてビジョンを作るのです。

最近では、2030年~2050年からのバックキャスティングで大きく発想を転換して社会を考えるようにしています。今の延長線上の場合と、対策が進んだ場合、2つのシナリオでどう違うのか、そのギャップを埋めるためにどうすればよいかを考えています。

今後の共通の最重要課題は、気候変動だと考えています。その解決のキーワードは、ダイバーシティ(人的な多様性)と教育です。2000年以降に生まれた子どもたちに、新しい未来社会を創造する教育を実践できるよう、働きかけていきたいです。

 

(文責 伊藤)

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