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【レポート】『社会事業家100人インタビュー』(株)イータウン 代表取締役 斉藤保氏

2012.12.20

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

8『社会事業家100人インタビュー』


 

ゲスト:斉藤 保さん
(株)イータウン 代表取締役

【プロフィール】

1968年富山県生まれ。
趣味はアウトドア(スキー・トレッキング・サイクリング)、写真撮影、ひなたぼっこ、司会

【主な活動・所属団体】
まちづくりフォーラム港南、港南区工業会理事(広報情報部)、
横浜商工会議所 南部支部委員、NPO法人市民セクターよこはま 理事、
くらしまちづくりネットワーク横浜(東日本大震災復興プロジェクト)代表 
横浜市社会福祉審議会:専門分科会委員(2010)
横浜における持続可能な福祉社会の構築に関する検討専門分科会
横浜市地域福祉保健計画策定・推進委員会分科会委員(2010)
財団法人横浜市体育協会総合型地域スポーツクラブ補助金審査委員(2009)
その他 認定NPO法人神奈川子ども未来ファンド運営委員、
よこはまCBsmiles(横浜市コミュニティビジネス支援事業)プロデューサー(2007-2010)、
広域関東圏コミュニティビジネス推進協議会幹事(2008-2009)等
略歴等はこちら:http://www.e-etown.com/profile/profile02.html

 

「まちの事務局」機能を持つコミュニティカフェ

まちづくりは、特別な人たちだけのものじゃない。まちの中でふつうにくらす人にも、まちに関わるきっかけさえあれば、まちはもっと楽しくなる。港南台タウンカフェは、そんな視点から生まれました。

私は1998年に富山県から横浜に引っ越してきて、知らない人ばかりのこのまちの情報をもっと知りたいと思い、地域情報サイトを開設しました。アクセス数も増えて自宅の一室で起業し、まちをもっと知ろうと港南区民会議などに参加したものの、自治会や商店街などとの関係はなかなか持てませんでした。

そんな時、地元の人のネットワーク組織である「まちづくりフォーラム港南」に出逢い、同フォーラムが模索していた、市民活動・ボランティア活動の拠点、交流・交差点づくりに参画することになりました。商店会や自治会、行政も巻き込んだフォーラムやイベントの開催などを積み重ね、横浜市の商店会空き店舗活用の補助なども受けて、2005年に、事務所兼交流拠点である「港南台タウンカフェ」を開設しました。事業計画も予算もない中で、タウンカフェで出会う人たちの中から様々なアイデアが生まれ、ボランティアの力を柱にして、泡のように次々と事業が生まれていきました。カフェの壁を一面の棚にしてブロックに区切り、各ブロックを有料で貸し出す「小箱ショップ」を設置、地元の手作り作家さんたちが思い思いの品を出店し、販売収入の一部はタウンカフェの手数料収入にもなります。このおかげで、タウンカフェは補助金に頼らない運営も実現しています。さらに、商店会の事務や屋外で毎月2回実施するフリーマーケット、「港南台テント村」の受付など、商店会の業務委託も受け、“まちの事務局機能を持つコミュニティカフェ”である「タウンカフェ」が誕生しました。

地域の一員になって、まちの中で汗をかく

タウンカフェを運営する(株)イータウンとしては、カフェ単体では黒字にはなりません。タウンカフェは、NPOや商店会、行政などの“いわば一部の特殊な人たち“と地域に住む“普通の人“を結ぶための重要なツールであり、ミッションを具現化するための基地です。しかし、カフェとしての運営だけが全てではありません。大切なのは、まちのコーディネーターとして、自分たちがまちで一緒に汗をかくことです。

例えば、自分自身がレポーターとなって、まちやコト、人を知って伝える役割を担うこと。地域情報サイトe-townの運営は、残念ながら安定的な収益源にまでは至りませんでしたが、ここで集めた情報が他の事業で非常に役立つことになりました。また、区民会議をはじめ、まちづくりフォーラム港南や港南区工業会などの地元組織の一員になって、一緒に考え汗をかくこと。お金にはなりませんが、そこで得る情報や信頼関係はその後のタウンカフェの原点になっています。

さらに、食いつなぐための事業として、デザインの仕事もしてきました。自分自身の想いの9割は地域情報の発信にありましたが、でもそこで収益をあげるモデルがなかなか確立しなかったため、企業のホームページ作成など、開業当時の財源の9割はデザインの仕事でした。今もデザインの仕事は続けていますが、開業当時にはどこからでも受注していたものの、やがて地域やNPO、コミュニティビジネスなどになんらかのつながりのある業種や対象へとシフトしてきました。

今では、これらのノウハウを全て活用して、様々な地域のまちづくりのお手伝いをしています。例えば東京の広尾商店街のマップ製作。単にマップをつくるだけではなく、地元の大学や写真家、住民を巻き込んでの企画チームづくりから取材レポートの実施まで、マップづくりそのものをまちぐるみで実施するお手伝いをしています。さらに東日本大震災の被災地での復興食堂での物販の支援も、小箱ショップ等のしくみを使いながら、地元の特産品や住民のグループの方々とのつなぎ機能をつくるお手伝いを始めています。

自分たちのノウハウを売って、経済的な自立性を高める

こうして地域で汗をかきながら、地道に(株)イータウンとしての基本的なノウハウを築き、地域で顔の見える顧客との関係を少しずつ増やしていきました。今ではイータウン代表の私の人件費を除けば、タウンカフェ単体でも収支が成り立つようになってきました。

港南台エリアの手作り作家さんたちからいただく、小箱ショップの毎月の利用料(スペースの大きさに応じて2500円~6000円/月)と販売手数料が貴重な固定費収入となっているだけでなく、オーナーさんたちの交流の場から出たアイデアがタウンカフェの事業に発展するなど、地域の一員として一緒に事業を実施する関係ができてきました。

また、商店会からは年間契約で事務局委託を受けて日常的な窓口業務、事務、また港南台テント村の企画運営を引き受け、情報誌「ふ~のん」の企画・配布も担っています。行政からも、港南区民活動支援センターのブランチとして認定され、区民活動支援の役割を担っています。対象ごとに契約を結んでビジネスとしての関係を保ち、イータウンの持つノウハウを提供する。もちろん対価として委託費や手数料をいただくわけですから、サービス業としてのクオリティも問われます。また、自分たちが中心になるのではなく、まちの中の人同士をちゃんとつなげていくこと。そうやってノウハウを活かしてまちのファンを増やし、自分たちの経済的な自立性も高める。少しずつ、そういうモデルが見えてきました。

今では横浜市や経済産業省などの事業を通じて、コミュニティカフェとしてのノウハウそのものを他地域に伝え、支援する事業も実施していますが、根本はやはりここ港南台での事業。顔の見える地元の事業者や企業が仲間であり顧客となってくださった結果です。地元の人と契約関係を結ぶということには、厳しい面も色々とありますが、みんなで一緒になってまちづくりをするということはやっぱり楽しい!商店会や自治会、地域住民との協力関係でまちづくりを一緒に考える、そしてまちの人同士をちゃんとつなげていくこと。そういう「地域の一員」としての立ち位置を忘れないでいようと思います。

 

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