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【レポート】『社会事業家100人インタビュー』かのさと体験観光協会 事務局長 仲田芳人氏

2014.10.02

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

第33回『社会事業家100人インタビュー』

~オーダーメイド型の体験プログラムでグリーンツーリズムを地域産業へ~
ゲスト: かのさと体験観光協会 事務局長 仲田芳人様

 

<ゲストプロフィール> 

備北新聞社 代表。かのさと体験観光協会 事務局長。

1976年駒澤大学卒業後、家業の旬刊ローカル紙「備北新聞社」を継ぐ。

2002年に中四国で初となる民間のグリーンツーリズムの企画受入団体「かのさと体験観光協会」を設立し、事務局長に就任。地域の自然、農林業、生活文化などの地域資源を生かし、地域住民との交流を取り入れた体験プログラムを企画し、60%を超えるリピート率を誇る。

かのさと体験観光協会事務局長のほか、新見ふるさと塾21事務局長、(特)みんなの集落研究所評議員、(特)まちづくり推進機構岡山理事、岡山県地域づくりマイスターなども務める。

 

<今回のインタビューのポイント>(インタビュアー IIHOE川北)

「参加者を増やす」ことを目的に据えるのではなく、伝える価値を大切にしながら、補助金をあてにせず、プログラム収益のみで採算をとっていることが、かのさと体験観光協会の最大の特徴。手段と目的を混同してないからこそできることであり、価値を伝えられる体験の場をつくり、プログラムの魅力を発信している。

良い企画があっても集客に苦心するケースの多いグリーンツーリズムにおいて、都市部の住民にどのように情報を届けて、60%強ものリピーター率をあげているのか。何度も訪れたくなるプログラムづくりの背景にある、地域住民との交流、そして60人ものインストラクターによってオーダーメイド型の体験プログラムづくりを可能にしている、同会の凄さを理解してほしい。

 

地域の協力者に支えられたプログラムづくり

かのさと体験観光協会は、2002年2月に、岡山県北にある新見市(当時は新見市、哲多町、哲西町、大佐町、神郷町)の住民で立ちあげ、中四国で初めて民間のグリーンツーリズム企画受入団体として設立された協会です。瀬戸内海に流れる高梁川の源流域である新見市の豊かな自然環境や地域の人々のくらしを、都心部の人たちにもおすそ分けしよう、という体験ツアーを数多く企画・運営しています。

設立11年目を迎えた昨年、ずっとやりたかったある企画を実現することができました。その企画は「釣りガールを目指す女性のためのアユ釣り講座」。そもそもアユ釣りはとても難しく、特別な用具が必要で、お金もかかります。本来アユ釣りをする人はお金を払って漁業権を獲得していますから、我々のように「遊びで少しだけ体験する」なんてもってのほか。たくさんの条件があって、この企画は長年実現しませんでした。しかし昨年、なんと新見漁協の全面的な協力を得て、この企画を実現することができました。アユ釣りを教えてくれる人の派遣、用具の提供、遊漁料の免除にいたるまで、組合員のご厚意で漁協が全面的にバックアップしてくれたのです。

かのさと体験観光協会としては、この企画を通して川に親しんでもらう人を増やし、川への関心を喚起、それが川をきれいに保つことや、魚の生態を知り守ることにつながって欲しいというねらいを込めていましたが、その想いが漁協の方針と一致して、このような協力体制を得ることにつながったのです。釣り体験だけでなく、終了後には天然アユの塩焼きや、同漁協が養殖、生産するキャビアを振る舞うなど、大盤振る舞いのたいへん人気のプログラムになりました。翌年は特別にアユ釣りの解禁前に実施、来年は釣り具メーカーとコラボレーションしよう、など、どんどんすごい企画に進化しています。

こうしたプログラムを実現できるようになった背景には、たくさんの失敗がありました。発足当時に企画した田植えから収穫までの体験プログラムでは参加者が集まらず、趣旨に賛同して体験用の田んぼを用意してくれた地元の協力者から、「この田んぼを誰が田植えするんじゃ!」と怒られ、必死に人集めをしたこともありました。結果なんとか人は集まりましたが、みな田植えは初めてですから、終わった後の稲の並びにむらがあってガタガタ。その田を1週間かけて直されているのを見て、「あぁ、私たちが大切にしなければいけないのは、その地域の協力者・インストラクターに満足してもらうこと、地域で信用をつくることだ」と痛感しました。

そうやってたくさんの失敗を重ね、様々な批判も受けながら、どこに焦点を当ててプログラムを実施するか、何をねらいにすべきかが、少しずつ明確になっていきました。

 

ネーミングとプログラムのユニークさで参加者を惹きつける

かのさと体験観光協会の強みの1つは、ネーミングの面白さ、プログラムのユニークさにあります。例えば「白菜の株主制度」。白菜漬け、特にキムチづくりにはとてもコストがかかります。作るノウハウがあっても、一つの家だけでキムチづくりのためのたくさんの香辛料など原材料を揃えるのは難しく、次第にどの家も作らなくなってしまう。そこで白菜漬け・キムチづくりのプログラム参加者などに、新見でとれる白菜の株主になってもらい、資金を持ち寄って生産農家を支えていただきます。年に1度の収穫の日は、「株主総会」です。そういうしくみをつくることで、生産農家は原材料を揃えることができますし、株主となった人たちは、自分の株(白菜)がどうなっているかを気にするようになる。それはつまり、新見がどうなっているか、この地域の生産物や気候を気にかけること。そうやって都市部の人と新見の農家、消費者と生産者をつなげ、新見の応援団をつくっていきたいのです。そういう想いを大切にしながら体験をしてもらうこと、それが、私たちが考えるグリーンツーリズムなのです。

こうしたプログラムを続けていると、リピーターが多くなってきます。体験を通じて地域の人や参加者同士がつながり、ひさしぶりに参加した時には家族に会えたような気持ちになる。最近も、初めて参加した方に、「地域全体が家族みたい」と言われました。体験プログラムの中では、地域の人のおうちの台所に入れてもらうこともあります。人のうちの台所に入るなんて、町なかでは考えられないことです。そうした体験のひとつひとつが、まるで親戚になったかのような気持ちにさせるのだと思います。時に応じて寄り添い合い、包み隠さず語り合えること、そして関わり合うこと。そうやって共感的に関わり合うことのできる「家族」をつくってくれる仲間が、私たちの何よりの財産です。

 

60人のインストラクターによるミッション達成型組織

かのさと体験観光協会には約60人ものインストラクターがいて、年に20~30のプログラムを実施しています。一つのプログラムを実施するためには、まずそのテーマに詳しい人が必要で、それをフォローする人も必要になります。

例えばそば打ち体験。まずそば打ちを教えてくれる人が必要で、その人をフォローする人も必要。さらに、そば打ち以外のプログラムも入れる場合にはその別のプログラムを担当する人、全体の連絡調整や食事の用意をする人、といった具合に、1つのプログラムに少なくとも4人のインストラクターが必要です。年に20~30のプログラムを実施しているとトップダウンで会議を開催している暇などありませんから、問題があれば現場で解決する必要があります。インストラクターそれぞれがプログラムのオーナーとなり、自分で決め、自分で実行しているのです。そうやって、プログラムベースで次々と小さな組織が生まれて、プログラムが終わると解散する。私は「ミッション達成型組織」と呼んでいますが、川北さんに言わせると「アメーバ型組織」。プログラムを終える時にはいつも全員で振り返りの場を設けて感想を共有して、「次回はここをこうしよう」「こんなことをやってみよう」「あの人に声をかけよう」など、次々にアイデアが出てきます。そうやってどんどん新しいプログラムが生まれること、たくさんの人が関わることがかのさと体験観光協会の組織の特徴です。

さらに近年では、地域内外の団体・組織とコラボレーションしてプログラムをつくることが増えてきました。前述した新見漁協の協力によるアユ釣り講座のほか、備中県民局環境課とは「高梁川源流域探検ツアー」を協働企画し、県南地域の小学生と保護者が参加しました。こうした他団体とのコラボレーションは、これまでのネットワーク型活動の1つの成果でもあります。それぞれが得意技を持つインストラクターを中心としたネットワーク型組織に、新見市内外の団体と団体をつなげる機能を付加して、わたしたちのプログラムづくりはさらに進化しています。

 

プログラム収益のみで採算をとる!

もう一つ、私たちがこだわっているのは、行政からの補助金を受けず、プログラムによる収益のみで採算をとっていること。これまで、いい事業が衰退する現場をたくさん見てきました。補助金で採算をとっていると、補助金が切れたとたんに事業を続けられなくなる。事業に連続性がありません。

いい事業をやっても、連続性がなければ地域はよくなりません。一過性の事業が終わると、地域に残るのは、ゴミと疲労感だけ。補助事業が地域の発展を阻害すると言ってもいい。だから私たちは、参加者に適切な対価を負担していただいて持続的な事業をつくることにこだわります。日帰りのプログラムで平均4000円、参加者10人程度で採算が合うようにつくっています。費用の90%は原価です。インストラクターにはインストラクター料を払い、会場費などを捻出して、残り10%程度を協会の手数料としていただき、それで最低限の運営費を賄っています。もちろん人が集まらない事業も赤字の事業もありますから、複数のプログラムを実施することで、全体として採算が合うようにしています。さらに、最近では様々なところで取り組みをご紹介いただいていることもあって、視察に来られる方が増えています。わたしたちは視察も有料で受け入れていますから、視察+地域の産品を飲み食いしていただくこと、さらに視察+プログラムの体験をしていただくことによって、視察受け入れも採算性の高いコンテンツとして事業化しています。

 

最大の差別化は「私だけのオーダーメイド・プログラム」

最近ご依頼が多いのは、オーダーメイドのプログラムづくり。参加されるグループ・家族ごと、視察に来る方それぞれの希望や思い出に沿って、プログラムを作っています。それができるのも、60人ものインストラクターがいるから。「○○だったらこの人に聞けばわかる」「こういうプログラムができないかあの人に相談してみよう」、という具合にそれぞれの得意技を組み合わせれば、そのグループだけの特別なプログラムがつくれます。

協会を発足した当時はグリーンツーリズムの受け入れをしている団体は中四国には他にありませんでしたが、自治体からの補助金なども活用して、似たようなグリーンツーリズムを実施する所が増えてきました。そうなると他との差別化が必要です。私たちの側からの差別化としては、「お客さんに寄り添う」ということ。そしてお客さんの側からは、「私のためだけのプログラムをしてくれる」ということが何よりもの差別化になります。私たちの事業には最少催行人数はありません。参加者が1人であっても実施します。1人の参加者に3人ものインストラクターがついたこともあります。それでも決して中止にはしない。それが「かのさとは裏切らない」という信頼につながり、参加者が他の人に薦め、次の回からは人を連れてきてくれるようになります。

かのさと体験観光協会が目指してきたのは、持続可能なしくみを作ること。「商い」は「飽きない営みの中でお金を得ること」だと思っています。「飽きない営み」とは持続可能なしくみそのもの。来てくれた人も楽しく、迎えた側も「今日はよかった」と思えること。そういう「喜びの共受」があってはじめて飽きのこない営みができるのです。グリーンツーリズムは単なる「体験」の場ではありません。体験を通じて、農山村でどんな暮らしがあるのか、この地域がこれからどうなっていくのか、語らいをして、その土地の人と想いを共有してほしい。そうしてその土地の暮らしを伝えていくことが私たちの役目だと思っています。

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