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【レポート】第44回 社会事業家100人インタビュー 特定非営利活動法人ねおす 理事長 高木晴光氏

2015.12.11

 

社会事業家100人インタビュー第44回
先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ

2015年11月13日(金)19:00~21:00
於 ソーシャルビジネス・ネットワーク事務所

ゲスト 特定非営利活動法人ねおす 理事長 高木晴光さん

 ねおす 高木氏

 
<プロフィール>
千葉県船橋市生まれ。北海道大学農学部農業工学科卒業。
貿易商社に勤務。外為・デリバリー(発注・輸送・通関部門)を担当後、輸入部門にて、主に北欧より建具、家具、生活関連資材の商品開拓を担当。
輸入業の関係からレジャー産業に関わりを持ち始め、80年代後半は、大型健康施設やリゾート施設の企画開発やスポーツクラブの運営も行った。
この頃より、健康・社会教育事業に大きな興味を抱くようになり、徐々にハード(施設開発)からソフト(プログラム開発)を手がけるようになり、独立してアウトドア事業を始めた。現在は、道南・黒松内町を移住拠点として、地域支援、各種自然体験型プログラムの提供を中心に、「自然と人、人と人、社会と自然」をテーマに地域づくりやコミュニケーショントレーニングなどのワークショップを行っている。
 
<今回のインタビューのポイント>(川北)
北海道でも自然学校が活発になったのはこの10年間の話で、最初は山岳ガイドの延長のような状態からスタートした。
田舎暮らしや自然体験活動に興味関心をもって来た人に対して、自然学校という手段をもって、生活を継続させるための生業作りを教えてきたところに、ねおすの特徴があると思われる。
自然体験を指導し、また指導できる人を多数輩出してきたねおすのモデルをどのように実現させてきたか、その秘訣を語っていただきたい。
 
自然学校を地域の社会教育拠点に
ねおすは、自然の中でのツアーやプログラムを行うところからスタートしました。観光業者と似ていますが、何が違うといったら、社会教育を実践してきたところだと思います。自然学校は、全国に行政がやっているもの、営業的なガイド業者も合わせて4,000校くらいありますが、ねおすのように民間で社会教育活動まで手がけているところは1000校に満たないかもしれません。
自然学校の目標は、「どうにかできる人を育てる」ことにおいています。自分のくらしとシゴトを作れる人を育てることが重要で、自然体験型環境教育に限らず、生活体験や地域活動のなんたるかも学んでもらうようにしています。自然体験の良いところは、自己肯定感が育まれること。スポーツのような競争の世界では、ワザが勝負ですから、自己肯定感を育みにくいかもしれませんが、、自然の中で遊ぶことを通して、小さくても成功体験をたくさん積み重ねることができます。これが自己肯定感=生きてゆく自信につながると思います。自分を遊ばせられる人は、仕事もできると、信じています。。
ねおすが始まってから6~7年間は、山岳ツアーの企画とガイドが中心のシゴトでした。その後は、都市から人々を連れ出すシゴトから、スタッフが自然豊かな地域に住み暮らし、各地域の拠点づくりにシフトし、現地化を進めました。
地域にはいろいろなニーズがあり、スタッフたちもいろいろな仕事に携わります。水道管理、農繁期には農作業の手伝い、運動会の運営から、高齢者の年賀状の宛先書き(笑)まで。地域に溶け込むといろんな仕事を頼まれますが、そうやって手を貸すことで信用を得て、徐々に現地に定着できるのです。
 
自然体験をより多くの人に届け、地域の可能性を価値に
自然学校で体験プログラムを提供する以外に、新しいしくみづくりも進めています。地域で事業の種を見つけ、ねおすの事業と結び付けるという、コンサルティング会社やコーディネーターのようなことも始まっています。さらに、「ねおす共育ファンド」と名付けた年間200万円ほどのファンドを設けて、公立学校の児童たちが体験学習に参加する際のバス代の補助に使ったり、インターンシップに参加する若者の交通費補助などに充てたりしています。
登別では、15年ほど前、廃校を活用した市の施設の指定管理から始まって、NPO育成に携わり、現地に地域NPOを独立派生させるようになりました。今では、建設や子育てなど6カテゴリーで、33のボランティアチームが、自主的に活動するまでになっています。ボランティア・コーディネートはねおす出身の現地NPO職員が担っていますが、すると管理する側としての役割が増えて、与えられるだけの仕事になり、仕事が面白くなくなってしまうのが課題です(笑)。ボランティアの方たちが自主的に事務局を担えるようになるのが、次の目標ですね。
道南では、JRと一緒にNPOをつくったことがきっかけで、体験型のエコミュージアムを創出する牧場経営も独立した元ねおす職員が現在実行しています。さらに新しいプロジェクトとしては、厳しい環境で生きられる道産子馬をカカオ栽培地の東南アジアに輸出して、カカオをフェアトレードで輸入して生チョコをつくるプロジェクトや、オーガニック羊を育てようとしています。
また、認知症高齢者や精神疾患者、介護を要する人や障碍者など、これまで自然学校のプログラムに参加できなかった人への働きかけ(アウトリーチ)も進めています。
 
「銀河ネットワーク」と「自己評価リスト」で人を活かす組織をつくる
現在、組織の再編を進めています。各地の事業が自発的に動いていて、今年度は支部が2か所独立しました。よい意味で、全部の活動を把握しきれないほど、独自に発展しています。個性ある独立した集団をたくさん育て、重ね合わせ、くらしとシゴトをつくっていこう。これを「ねおす銀河ネットワーク構想」と呼んでいますが、実現化しつつあります。
自分は学生時代に農業機械を学んでいましたが、組織を農業機械に例えると、作物が実るまでには、場面ごとにふさわしい工程が必要になります。今は、荒地を切り開く人が必要なのか、土地を柔軟にする人が必要なのか。次のフェーズにはどんな役割の人物に参画してもらうべきなのかを農業機械の機能に例えて考えます。
現在は正職員15名、事業規模1億円程度で、増えたときはその都度に人を雇います。毎年11~12月には自己評価リスト100項目で自己評価させた上で、スタッフ一人ひとりと話して、自身の仕事のあり様を振り返らせます。査定に使うわけではなく、自分を過小評価してしまう人もいるため、多面的に検証できるようにしています。
なぜ人材を輩出できるかが本日のテーマの一つだったかと思いますが、入ってくる人たちが最初から、「卒業すること」を前提に考えてもらっていることが大きいかもしれません。卒業生の進路は、独立する人もいれば、元の職場に戻ったり、教員になったりする人もいます。
第44回 100人インタビュー
学び方を学び、事業を通じて人を育てる
ねおすには、「経営の参画の梯子」と呼ぶ職位みたいなものがあり、上から、プロデューサー(0から事業をつくれるレベル)、コーディネーター(ある程度素地がある地域で事業を展開できるレベル)、チーフディレクター、ディレクター、研修生としています。
事業をすることと、スタッフ・トレーニングは、車の両輪です。どちらか一方だけを行うことはできません。スタッフには、「学び方を学ぶんだ」と常に言っています。それぞれが自分の組織を運営し、意見を言い合える仲間がいることが、よい状態だと思います。そんな組織をめざして、常に工夫を続けています。
 
(文責 伊藤)

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