活動内容
第3回:海津歩 常務理事
(株式会社スワン 代表取締役社長)
人々はいつの時代もその時代にないものを求めている。今は物は潤沢にある。だから絆であるとか、心の充足など無形性の価値を渇望していた。3.11でこの事に人々が気が付いた。
私は障がい者の会社を経営している。日々現場では障がい者手帳を持たない一見して普通の人でも、生きづらい人が増えている実感がある。今、人間が悲鳴をあげている。
3つの背景があると思う。ひとつはGDP一元評価で制御不能となったグローバル経済。二つ目が無限の効率追求による分業化。そして三つ目が個人主義。
人も自然も科学万能で支配して、二項対立、征服する者とされる者。勝てば、自分さえ良ければそれでよくて、確かに便利になったのかもしれないけれど誰もが一人でパソコンの前で金儲けの個人主義。核家族から単身家族へ、市民社会はおろか、家族という最小単位が崩壊して同じ屋根の下で孤立している。
3.11以降、この生きづらさが何なのか、皆が気が付き始めて対処しようとしてきている。
近代は社会の因習や組織から自由を勝ち取る歴史であった。そして人々の行動は自由になったけれど、いざ今度は自由選択ができなくて、案外心が不自由で均質化している。衣食住足りて不幸。世界中で民主主義と資本主義が苦戦している。
傍を楽にする「働く」。利己ではなく利他。和をもって尊しとなす。全員が強い当事者意識を持って相互扶助してきた。自然は征服せず、八百万の神を尊び自然と共生してきた。こんな自然観や相互扶助の労働観は日本ならではのものだ。
これからは人と人、人と自然、自然と自然との良質な関係性の修復が命題となる。利益のみを追求し、自然と人を分断した世界の修復は先進国日本の世界に対する使命だ。
そして社会問題は縦割り行政の狭間に横断的に散らばっており、その対策としては、必然的に横断的な取り組みが必要となる。だからこれからは法人格を超えて、個人や企業、行政、NPO、地域社会などとの縦横無尽の連携の時代となる。解決するのが社会企業で、社会起業家は横断的に専門家を連携できるコーディネーターだと思う。
そしてこれらの活動は過去を否定したり懐古したりするのではなく、これまでの資本主義の恩恵を活かし、日本の良さを掘り下げて進化する事であり、それが3.11以降のソーシャルビジネスだと思う。