社会事業家100人インタビュー第42回(8/17@東京)参加者募集

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社会事業家の先輩にビジネスモデルを学ぶ!
社会事業家100人インタビュー 第42回
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ゲスト:
特定非営利活動法人北海道グリーンファンド
理事長 鈴木亨さん

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8月17日(月)19:00~21:00
@ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)事務所(乃木坂)
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先輩社会事業家からビジネスモデルを学ぶための本企画。
今回のゲストは、2001年に日本初の市民風車を建設した特定非営利活動法人
北海道グリーンファンド理事長の鈴木亨さん。
その後の各地の地域主導型の再生可能エネルギー事業や、市民による金融の
しくみづくりに大きな影響を与えた、市民風車建設のための資金調達のしくみ
がどのようにしてできたのか。
市民の運動が事業となり、制度となり、市民が使うエネルギーのありかたを
変えた、その過程を伺います。
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● 開催概要
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日時:2015年8月17日(月)
19:00~21:00
場所:
ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)事務所
東京都港区南青山1-20-15 ROCK 1st 3階
(地下鉄千代田線 乃木坂駅 3番出口より徒歩3分)
https://socialbusiness-net.com/about/access
定員:約20名
参加費:
SBN会員: 1,500円
SBN非会員: 2,500円
https://socialbusiness-net.com/guide
※うち500円は、ゲストの指定する寄付先に寄付させていただきます。
(参加費は当日、受付にて徴収させていただきます)
※同日にSBN会員申込していただくと、会員価格でご参加できます。
対象:社会事業家として事業を始めている方、これから始めようとされている方
ビジネスモデルの作り方を先輩社会事業家から学びたい方
主催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)、
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]
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●北海道グリーンファンド 紹介
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グリーンファンド基金と市民出資で共同発電所を建設し、日本で初めての市民風車
をつくった北海道グリーンファンド。ほしい電気は自分たちの手でつくろう!と
総事業費の約8割を市民出資によって賄うことで2001年に北海道浜頓別町(はまとん
べつちょう)で市民風車第1号「はまかぜ」ちゃんの運転が開始された。
特筆すべきは、風車を1基つくるだけに留まらない、その資金調達のしくみと市民
の参画の制度づくり。1999年には日本初の「グリーン電気料金制度」を開始。
「グリーン電気料金制度」は、月々の電気料金に5%のグリーンファンド分を加え
た額を支払い、グリーンファンド分を自然エネルギーによる「市民共同発電所」を
建設するための基金として積み立て、運用する制度で、この制度に参加すると北海道
グリーンファンドが、北海道電力に代わって会員の銀行口座から電気料金とグリーン
ファンド分を足した金額を引き落とす。北海道グリーンファンドは預かった電気料金
を北海道電力に支払う、という電気事業会社を巻き込んだ制度になっている。
会員は省エネ、節電して電気代を5%浮かせて、その分を基金に回すことができる。
こうして積立てられた「グリーンファンド基金」を活用して各地の「市民共同発電所」
計画へも拠出され、各地の市民風車建設をサポートしてきた。
金融機関でもなく証券会社でもないNPOが、不特定多数の市民から資金を調達する
ための新しい資金調達のしくみは、その後の市民風車の取り組みや太陽光発電
(備前グリーンエネルギー、おひさま進歩エネルギー)など、各地の地域主導型の
再生可能エネルギー事業に大いに活かされることになった。
2001年に運転を開始した市民風車第1号「はまかぜ」ちゃんから14年が経過し、
現在では全国18基(2014年時点)に広がった市民風車。
環境エネルギー問題の象徴としての風車事業から金融のしくみづくり、各地での
建設の支援、そしてエネルギー政策全般への提言と再生エネルギー事業への投資
スキームづくりなど、モデルとなるしくみを作り続ける北海道グリーンファンド
の鈴木亨さんに、これまでの事業づくりの経緯を学びます。
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● ゲストプロフィール
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鈴木亨さん
特定非営利活動法人北海道グリーンファンド 理事長

1957年、北海道生まれ。
自治体職員、生協職員を経て、1999年、NPO法人北海道グリーンファンドを設立し
理事・事務局長に就任。2011年理事長に就任(現職)。
誰でも無理なく地球環境の保全に貢献できる「グリーン電気料金制度」を開始し
日本初の市民出資型の風力発電事業を行う。市民風車のパイオニアとして、各地の
取り組みを支援する。
株式会社市民風力発電(2001年)、株式会社自然エネルギー市民ファンド(2003年)
を設立し代表取締役を兼務。
2012年9月 株式会社ウェンティ・ジャパンを設立し取締役副社長に就任。
同年12月一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構理事長に就任。
その他役員就任中の事業目的法人多数あり。
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● プログラム
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◇ ゲストのご紹介、趣旨説明
◇ ゲストご自身からビジネスモデルの紹介
◇ インタビュー
インタビュアー:ソーシャルビジネス・ネットワーク理事、
IIHOE代表者 川北秀人
◇ 参加者からの質疑応答
・参加者からの質疑応答の時間を設けますので、
ご参加いただく方は1人1回はご質問ください。
・ゲストの事業についてご理解いただくために、事前資料をお送りします。
(参加申込いただいた方にご連絡します。)
・希望者の方は終了後に1時間程度懇親会にご参加いただけます。
(同会場にて。2000円程度予定)
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● 申込みについて
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下記URLのフォーマットに記入の上、8月16日(日)までにお送りください。
定員になり次第、締切らせていただきますので、お早目にお申込みください。
http://goo.gl/skWyL
※開けない場合は、メールにて、お名前、ご所属、ご連絡先(eメール、電話番号)、
懇親会参加可否 を書いてお送りください。
送付先 hoshino.iihoe(a)gmail.com *(a)を@に直してご送付ください。
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【お問い合わせ先】
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IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]
hoshino.iihoe(a)gmail.com  *(a)を@に直してご送付ください。
※本事業はSBN理事を務めるIIHOE川北と、SBNとの協働事業のため、
申込対応業務をIIHOEにて担当しています。
◇本プロジェクトのfacebookページ
http://www.facebook.com/100JapaneseSocialEntrepreneurs
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【レポート】社会事業家100人インタビュー 認定特定非営利活動法人トゥギャザー 理事長 中條桂さん

社会事業家100人インタビュー特別企画<1>
先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ

共同受注・生産で福祉作業所製品の販路をひろげる

インタビュー実施日:2015年5月31日(日)
於:(認特)トゥギャザー 会議室

認定特定非営利活動法人トゥギャザー 理事長
中條桂さん

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<プロフィール>
1935 年香川県出身。神戸大学卒業後、60年に積水ハウス株式会社入社。同社の創設メンバーとして、営業部門を率いる。84 年専務取締役就任。同社退社後、96 年積水ハウス梅田オペレーション株式会社代表取締役社長就任。管理する梅田スカイビルで開催したプレパラリンピックイベントを通じて、障碍者が福祉作業所で作った製品の販売が難しいことを知る。2001年9 月特定非営利活動法人トゥギャザーを設立し、理事長に就任。作業所の製品の販路開拓、共同受注・生産のネットワーク構築を実現することで、障碍者の自立支援活動を行っている。
 
みんなで作ってみんなで売るために

私は積水ハウス(株)に勤務した後、大阪駅北側にある梅田スカイビルを管理する会社の社長をしていました。1998年同ビルの広場で、大阪府の主催によるプレパラリンピック啓発行事を開催することになり、そこで初めて障碍者福祉の関係者と出会い、施設で作られた商品の販売先がなかなかないという悩みを知りました。障碍者も経済的な自立が求められており、工賃の向上が長年の課題になっていますが、当時、障碍のある方が授産施設や作業所で仕事をしても、収入は月1万円前後という状況でした。特に大阪府は小規模な作業所が多いため、平均値では全国最低水準です。企業人をリタイアしても体力も気力は充分にあったので、ぜひ、障碍のある方と社会をつなぐ架け橋の役割をしたいと思い、2001年トゥギャザーを立ち上げました。
住宅メーカーは、展示場や住宅説明会で来場者にノベルティをお渡しします。そのノベルティに施設の製品を使えないかと取り組みましたが、最初は簡単にはいきませんでした。理由のひとつめは、数量です。それぞれの福祉施設が小規模で、障碍のある方が作業することもあり、作られる製品の数は非常に限られています。一方、企業がノベルティとして使うためには、同じ製品が数百や数千個、時には万を超える数が必要です。ふたつめは、品質。企業が顧客へ渡すものですから、ある程度以上の品質が求められます。
取り扱ったものの中で評判がよかったのは、岡山県の蒜山高原(真庭市)にある施設が、ハーブを入浴剤やハーブティに加工した商品でした。
売れる商品から学びながら、取り扱う商品を模索していたところ、(公社)日本フィランソロピー協会の目にとまり、「障害者自立支援のためのモデル事業」へ参加しないかと、お誘いがかかりました。そこで、トゥギャザーがコーディネーターとなって複数の施設でグループをつくり、窓口を私たちが引き受けることで大量受注を可能にする仕組みづくりに挑戦することになりました。
03年、大阪府の7つの社会就労センター(SELP 注:Self-Help(自助自立)を意味する造語で、障碍のある方が働く施設)とネットワークを組み、作業工程が簡単で、各施設が既に自主製品を持っていた手すきのリサイクル用紙の活用に取り組みました。リサイクル用紙に付加価値をつけるために、卓上カレンダーに加工し、企業名を入れることで、企業の広告宣伝活動に使ってもらうのです。ところが、施設によってできる紙の厚みや質感が異なり、集めても商品になりません。そこで、私たちが施設に対して共通の基準を示して、品質の標準化を試みました。
施設と企業の間だけでなく、施設と施設の間にも「架け橋」が必要でした。施設同士だけではなかなかネットワークは作れませんが、トウギャザーが推進機関となり、企業向けの商品を共同受注・共同生産するスキームで、初年度に卓上カレンダー5000部を製作。10年以上続くロングセラー商品になり、現在は年間1万2000部ほど製作しています。
また、ちょうど環境問題に対応してスーパーなどがレジ袋の有料化など削減に取り組み始めた時代だったことから、エコバッグを障碍のある方に縫製してもらい、ノベルティにするアイデアが、積水ハウスとの話し合いの中から生まれました。これは全国の施設に声をかけて製作し、積水ハウスの住宅展示場で使われた他、大阪商工信用金庫の「エコ定期」の契約者へのノベルティに使われるなど、多くの企業に採用されるヒット商品になりました。10年以上に渡って、毎年1万から2万個を生産しています。
お菓子は、おいしくなければ売れない
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お菓子やパンを作っている施設は多いのですが、私たちが活動を始めた当時、ほとんどの施設では、障碍当事者の保護者やスタッフが見様見真似で指導している状態でした。食品は、衛生管理はもちろん、おいしいことが大切です。そのために、私たちは助成金を得て、技術指導のためにパティシエを派遣する事業を行いました。そうして作った商品を、2009年大阪の食博覧会に出品したところ、NHKでテレビ放映など多くのメディアに取り上げられました。
これは施設にとてもいい影響を与えました。というのも、普段、福祉施設が外から注目されることは少なく、非常にクローズドな世界です。発展性に乏しく、販路を拡大するという意識を持つことも難しい。そこに人の目が集まったことで自信が芽生えたのです。ぜひ、お菓子の品質向上を続けたいと思い、助成元へ応援を求めに行き、継続して助成していただけることになりました。それを資金に、今度は恐る恐る、製菓のプロを養成する辻学園調理・製菓専門学校に施設の障碍者に指導をして欲しいとお願いしたところ、喜んで手伝ってもらえることになりました。10年から毎年、施設の担当者や利用者が研修を受けており、お菓子が益々おいしくなりました。
お菓子の販路を開拓するためには、より多くの人の目に触れなければなりません。09年に堂島の三井住友海上火災保険(株)大阪支社のビルの一角をお借りして初の常設店舗「とっと」をオープン。14年に梅田スカイビルの地下街に「パティスリーとっと」としてリニューアルオープンし、全国の障害者福祉施設の商品を取り扱っています。
さらに、お菓子をギフト商品に仕立て、郵便局の「ふるさと小包」に採用していただき、近畿地方の約3000の郵便局の店頭でチラシが紹介されています。郵便局を窓口に、地域の方に地域の施設の商品を買っていただきつながりを深める「郵便協働」です。
また、大阪ガス(株)など地域の企業にSELP商品をノベルティに採用していただくほか、シャープ(株)、パナソニック(株)などいくつもの企業の社屋や工場で、販売会を開催させてもらっています。東日本大震災で被害を受けた施設を支援するために、東北の施設の製品を仕入れ、買っていただく活動も始めました。震災から4年たった今も継続しています。
自分たちで取り扱う商品をプロデュースするだけでなく、施設で作られる製品全体の品質向上のために研修の提供も、大きな事業の柱です。施設製品が市場に通用するためには、基礎からの底上げが必要です。これも助成金を得て、大阪と京都、兵庫県で、授産事業振興センターといった中間支援機関を巻き込み、専門家を講師に招くことができるようになりました。例えば、食品を作っている施設の職員に食品衛生法を学んでいただく等の研修を実施しています。
さらに、一般への啓発として、毎年、梅田スカイビルで行われている「障害者週間協賛行事」の開催に協力しており、実行委員会の事務局を務めています。
BusinessModel_together暮らしの場を支えるために、住環境のコーディネートも
障碍のある方の自立には、働く場所と同時に、暮らしの場も必要です。ノーマライゼーションをめざして地域に住まいを求めても、障碍のある方に適した快適な住まいは多くありません。
福祉法人が公営住宅や民間のアパートや家屋を借りて、障碍者のグループホームとして運営しているケースが多いのですが、構造上の問題で効率的な介助ができなかったり、スプリンクラー設置などの法規制に対応できる物件でなかったり、親の高齢化や当事者の重症化など状況が深刻化するにも関わらず、グループホームの数が全然足りていません。障害者支援制度が頻繁に変わるので、福祉法人が借金をして自主物件を建設することへの躊躇も大きいのが現状です。
住宅メーカーが福祉法人と協力すれば、障碍者にとって快適なグループホームを建築することができます。そこで、私の出身企業でもある積水ハウスが土地を所有しているオーナーに建物を建てていただき、運営する福祉法人と土地オーナーが賃貸借契約を結ぶ「建て貸し方式」でグループホームを増やすお手伝いをしています。オーダーメイドで使い勝手の良いグループホームが実現し、土地を有効利用したいオーナーにも喜ばれて評判を呼んでおり、今後も、積水ハウスと連携して住環境コーディネートの事業展開を行っていきたいと思います。
トゥギャザーの施設商品の売上は年間3000万円程度ですが、店頭の人件費や、箱詰め・配送、在庫管理などに販売経費が掛かります。それでも、施設にできるだけ還元したいと考えているため、管理職の一部は持ち出しです。トウギャザーのような中間支援組織を経営的に成り立たせることは容易ではありません。
近年は障害者自立支援法が制定されるなど障碍者の就労が強く促される傾向にあり、エコバックの縫製のような技術のある方は企業で就労できる機会が増えました。障碍者の企業での就労が進むことは大変良いことですが、しかし、どうしても企業での就職が叶わない障碍者も一定多数います。施設での作業に向いた商品の開発や高付加価値化が今後はますます必要となるでしょう。
だからこそ、私たち中間支援組織の役割は、より一層、重要になります。寄付や会員のみなさまからのご支援、グループホームの建設サポートで得る収入や助成金の活用など、バランスよい経営を肝に銘じ財政基盤の充実に努めたいと念じています。

【レポート】社会事業家100人インタビュー (公社)セカンドハンド 設立者 新田恭子氏

第39回 社会事業家100人インタビュー
2015年5月15日(金) 19時~21時

於:岡山県ボランティア・NO活動支援センター「ゆうあいセンター」
岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館「きらめきプラザ」2階 研修室

ゲスト:新田恭子(にったやすこ)様
(公社)セカンドハンド 設立者 

 
<ゲストプロフィール>
香川県高松市生まれ。九州大谷短期大学国文学科演劇放送コース卒業。1994年、日本初の国際協力の資金を集めるチャリティーショップ「セカンドハンド」を高松市でオープンさせた。収益金で主にカンボジアで学校・医療施設の建設や人材育成などの支援、女性への職業訓練、日本国内を含む被災地緊急支援などを行っている。2007年に理事長を退任後も現地事業の調整、運営委員などとして設立以来、無償で活動に関わっている。本業はフリーアナウンサー、大学非常勤講師。
 
 
<今回のインタビューのポイント>(川北)
「各家庭では使わなくなったものを、必要とされる場所で活かす」ことで、途上国の支援とごみの削減、その活動資金の創出までを可能にするチャリティーショップ。英国など世界各国で、普通の市民が自らの問題として社会課題に取り組む人材へと育てる場としての可能性についても学んで欲しい。
 
タイトル:日本初のチャリティーショップ~小さな力を大きな支援に変える~
 
片方の手を自分と家族のために
もう片方の手(second hand)を誰かのために

「ひとりひとりの力は小さくても集まれば大きな力になる!」をモットーに、1994年に日本で初めてのチャリティーショップをオープンしました。きっかけは、海外旅行でイギリスを訪ね、偶然、チャリティーショップで買い物をしたことです。この仕組みに感銘を受け日本でも探しましたが、その当時、チャリティーショップはありませんでした。私はフリーアナウンサーとしてラジオ番組制作にも携わっていたので、イギリスのチャリティーショップの取材を企画し、誰かがやってくれたらという想いで、そのノウハウを紹介しましたが、反応はありませんでした。その後、日本ユネスコ協会連盟が主催する青年ワークキャンプに参加し、カンボジアに行った際、内戦と貧困で本すらないという窮状を知ったことが契機で、「自分でやってみよう」と思いたちました。
まずは無料で借りられる店舗を探しました。高松市の商店街なら家賃、敷金、礼金と数十万円が必要ですが、そこに経費をかけずに始めようと考え、チャリティーショップへの想いや、やりたいことを明確にした企画書を書き、会う人、会う人に伝えました。文書にまとめておけば、他の人が代わりに営業してくれることもあります。100人に伝えたら、1人か2人はわかってくれるかも知れません。どこにチャンスがあるかわからないのです。
私の場合も当初「無料(ただ)で借りようなんて厚かましい」などとなかなか理解してもらえませんでしたが、賛同してくれる人が企画書を知人に渡したことから、その知人を紹介してくれ、3か月間、共益費のみでビルの5階を借りられることになりました。
開店にあたり、什器、商品は無料で集め、経費0円でスタートしました。棚は家具店で下取りされた無用の家具が山積みされていたので、許可を得てもらって帰り、カレンダーの裏紙を貼って白く仕上げました。
3か月後、74万円の収益のうち34万円で本を購入してカンボジアに届け、40万を学校建設資金として友人の団体に寄付しました。活動の継続を考えていたとき、知人の不動産会社社長が売れるまでと、商店街の物件の無料貸し出しを申し出てくれました。そこは1か月かけて自分たちで改装しました。司会業でお世話になっているイベント会社からコンパネをもらったり、同級生のペンキ屋からペンキをもらったり、電気工事の免許を持つ人に配線をしてもらったりして、蛍光灯などの購入費約2万円程度で仕上げました。
商品は、というと、90年代前半の日本は、景気の良かった時代の名残もあり、物が過剰にあったので、高品質のものがたくさん無料で提供されました。当時、まだまだ使える物がどんどん捨てられ、「もったいない」と感じていた時にイギリスでチャリティーショップを知り、活動資金を集めて支援を必要とする人のために活用するという意義だけでなく、ゴミを削減し、環境負荷を下げることにも有効だと気づき、目から鱗が落ちました。
無料で店舗を借りるということは、いつ「出て行って欲しい」と言われても仕方のない立場です。なので、いつでも出ていけるように、倉庫を借りる最低限の資金を持っておく必要がありました。活動当初から、準備金として少しずつ積み立てていましたが、どうせなら、倉庫にもショップにもなるアクセスの良い物件をできるだけ安く買っちゃおうと、裁判所に通って競売物件から探しました。2000年に不動産の購入のために特定非営利活動法人格を取得し、1000万円程になっていた準備金、銀行からの借り入れ、個人からの信託金で、翌01年に2,914万円で自社ビルを購入しました。10年には公益社団法人となり、現在は有給の正職員3名、パート1名と、店番や倉庫作業、運搬などをして下さる多数のボランティアの方々という体制で、香川県内に3店舗、福岡市に1店舗を直営しています。また、店舗を持たない支部が、北海道、関東、京都、大阪にあります。
 
子どもたちの力で学校支援―体験と実感する機会を大切に
セカンドハンドでは子どもからご年配まで幅広い層がボランティアとして活躍し、店舗やバザーでの販売、運搬、事務作業や3か月毎に4,000通を超えるセカンドハンド通信の発送作業に関わっています。ボランティアの販売員は精算時に、レジ横に掲示しているセカンドハンドの支援事業について説明し、支払ったお金をどの事業に使いたいかを購入者に選んでいただきます。購入者に、チャリティーショップであることを認識してもらい、買い物が寄付につながっていることを意識してもらうためです。支援のメニューは、教育、医療、自立、人材育成、指定なし(緊急支援などセカンドハンドに使途を任せる)の5つです。
教育支援の場合は、倒壊の危険がある校舎の建て替え、教育省との連携による新しい学校の開設などで、これまでに18校舎を建設しました。
自立支援は、貧しい地域の女性たちが身売りしなくて済むように縫製技術を身につけてもらおうという取り組みです。現地のNGOと連携して職業訓練施設を建設しました。現地で雇用した指導者を育成し、足踏みミシンを香川県内で集めて届け、製作した品物を日本のショップでフェアトレード商品として販売しています。
医療支援としてはお産施設の建設や、救急医療に関わる多角的な支援をしています。徳島のNPO法人TICOや高松市と連携して医師や救急救命士を派遣したり、カンボジアから医師を招いて日本の病院などで研修を実施しています。この支援はJICA草の根技術協力事業として現在スヴァイリエン州で実施しています。
人材育成の支援は、日本やカンボジアの青年の育成のために役立てています。セカンドハンドでは学生部が2003年から活動しています。中高生が創設した「小指会」と、大学生がフェアトレード普及を目的に創設した「LIFT」が一体化し、「セカンドハンド・ユース」として活動しています。学生たちが単に「ボランティア参加して手伝う」のではなく、主体的に考え、責任をもって自分たちで運営することで社会経験を積み、苦労や失敗しながら成功体験を重ねることで、「やればできる」を実感してもらうようにしています。学生がつくったお金は別に管理し、学生たちの成果として、例えば建設した学校の開校式に参加する機会をつくったり、奨学金支援をしている学生の家にホームステイしたり、日本に招いて交流する機会をつくっています。現地に行った高校生は「社会をよくするのは政治家とか偉い人がすることだと思っていたけど、自分たちもできる…というか、自分たちがやらなきゃと思った」と語っていました。今、学生部で活動した人たちが徐々に国際協力の現場や社会で活躍しはじめている様子をみると、時間や手間はかかるけど、次世代を育てる場、つまり社会教育活動になっていると確信できます。
ただ「安いから」という理由で来店していたお客様が、商品を提供してくれるようになったり、友達を連れてきたりと、徐々に変化していった事例も見受けます。店舗は、このように社会課題と私たちの活動を知ってもらう啓発の場、さらに実行にうつす機会にもなっています。
東日本大震災が発生し、私たちはすぐに緊急援助物資を集めて送りました。このときにも、日頃の成果をあらゆる場面で実感しました。まず、寄せられたものの質が阪神淡路大震災の時より格段によくなりました。マスコミ等の報道も関係している可能性がありますが、日頃から使えるものの提供を呼びかけ、質が悪い場合は店頭でお断りしているため、提供する際のマナーとして一定の基準が定着したのではないかと思います。日頃から倉庫で仕分けしているスタッフのスキルも、迅速かつ的確に箱詰めする作業で活かされました。また、拠点があることが信頼につながり、場所も認知されていたため、始動に時間はかかりませんでした。そして企業との関係も構築されていたので、協力依頼がスムーズでした。
仙台市内で被災者らを雇用し、地域の人が集い、買い物ができる場として開いたコミュニティーショップは、セカンドハンドの仕組みを応用したものです。また、国際協力で使われる手法、FOOD FOR WORK(地域の課題を解決するために地域住民が参画し、代償として食料を支給することで栄養改善にもつなげる)を応用したCASH FOR WORKを山形県のNGOと共同で立ち上げ、被災地のがれき撤去に被災者を雇用する形で実施しました。
セカンドハンドの基本的な理念は、助け合いの手をさしのべあう文化を拡げることです。カンボジア支援を行っているのは、たまたま私がカンボジアの貧困や格差問題に出会ったからにすぎません。セカンドハンドはどのような社会課題に対しても解決のために動ける人材育成を目的とし、チャリティーショップをそのための手段として提案しています。
 
(公社)セカンドハンド 
多様なチャリティー活動とさらなる可能性
市民が社会課題の解決に参加する選択肢は、まだまだ工夫次第で広げることが可能だと考えています。楽しみながら参加できるチャリティパーティーも、その手法の一つです。セカンドハンドでは、年間2000万円から3000万円の収入があり、その約50%をチャリティーショップから得ていますが、寄付やチャリティー事業も重要な収入源です。コンサートも定期的に実施していますし、缶ビールを100円で仕入れて、150円で売り、差額を寄付にあてるチャリティービアパーティーは毎年夏の恒例事業です。カルチャー教室では、市民にヨガやフランス語、浴衣の着付けなどを学んでもらい、講師の協力を得て、材料費以外をチャリティーに充てています。(チャリティーバーもいいのでは?)楽しみながら、いろんなことができるはずです。
チャリティーショップ発祥の地であるイギリスでは1万店以上の店舗があり、チャリティー業界は総収入の18.7%をチャリティーショップの収益から得ています。多数の団体がそれぞれの目的のために運営しており、内容は国際協力、ホスピス、がんの研究、高齢者、子ども、動物、環境、地域など多岐にわたっています。ショップ同士の競合もあり、商品やボランティアの獲得に苦労し、ショップを閉店・縮小する動きも見られます。また、近年、ハイストリート(高級店街)での出店、電子製品や古本、家具の専門店化も進んでいます。
日本でも取り入れられないかと考えているのが、アンラップドギフト。親しい誰かに贈り物をする際に、相手に物が送られるのではなく、困っている第三者にプレゼントが贈られるというしくみのチャリティーです。あなたの誕生日に、アフリカで困っている子どもに学用品が届くというプレゼントが送られたら、素敵じゃないですか?
ニュージーランドには市がゴミの削減と雇用の創出を目的としたリサイクルショップを運営しているという事例もありますが、日本でもNPOが自治体と連携してチャリティーショップを運営することで、ゴミを削減しつつ、その資金で自治体として抱える課題の中で行政という性格では着手し辛い事業をNPOが実施するという協働の手法もあるのではないかと考えています。そのショップが災害時の支援拠点ともなる倉庫として活用されることも考えられます。今後のチャリティーショップには物だけでない社会資源を組み合わせて社会課題の解決に貢献できる可能性があると考えています。
 

(文責:前川)

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