第35回社会事業家100人インタビュー11月25日(火) @山形 開催決定!!

社会事業家100人インタビュー 

第35回の開催日時とゲストが決定いたしました!!

開催地や内容など詳細につきましては決定次第、随時ホームページ上にてご連絡いたします。

 

<開催日時>
2014年11月25日(火)
18:00~20:00

<開催地>
山形県

<ゲスト>
特定非営利活動法人やまがた育児サークルランド 野口比呂美様

第1回「“ユニバーサル就労”という新たな働き方を考える」 7月29日(火)参加者募集

「みんなの働きたい!応援ゼミナール」
第1回「“ユニバーサル就労”という新たな働き方を考える」

 

就労困難者の働き方の最新事例をさまざまな角度から考える連続セミナー(全3回)を開催します。
ゲストスピーカーの講義と参加者同士の対話を通して、具体的な課題解決のヒントを探りましょう。

 

あなたの職場は誰にとっても働きやすいところでしょうか?「誰」には、障がい者、引きこもり、難民など、就労が困難な事情を抱える人が含まれていますか?

障がい者の法定雇用率が引き上げられ、中小企業にもその義務が課せられるなど、障がい者の雇用を後押しする法整備が進んでいますが、その分、初めて障がい者雇用に直面し、戸惑う事業者の声も聞こえてきます。

一方で、働きたくても働けないのは「障がい者」だけではありません。さまざまな「働きにくさ」を抱えて仕事に就けず、経済的に苦しい立場を強いられている人も大勢います。にもかかわらず、問題が可視化されていないため、解決方法が共有されていないのが現状です。

そこで、就労困難者の雇用に関する最新事例を学ぶため、さまざまな現場で活躍するゲストスピーカーを囲んだ勉強会を開催することにしました。「就労困難者を雇いたいが、人材活用に不安がある」「同じような課題を抱える他社・他団体の人と情報交換したい」といった声に応えられる場にできればと思います。ご参加お待ちしています!

■日時:2014年7月29日(火)19:00~21:00
■内容:
・講演、質疑応答
・意見交換
*終了後、1時間程度の懇親会を予定しています。(懇親会は任意参加です)


ゲストスピーカー
:池田徹さん(社会福祉法人生活クラブ風の村 理事長)

 

1951年富山市生まれ。生活クラブ生協千葉理事長を経て現職。高齢者介護、障がい児者支援、保育・児童養護など幅広く事業展開、「誰一人として孤立させない地域づくりとしての地域包括ケア」の仕組みづくりに取り組んでいる。自身は1級の身体障害者で、週4回自宅で人工透析を行っている。日本二分脊椎症協会千葉支部、千葉腎友会、千葉市オストミー協会会員。

 

 

 

  

■対象:
・障がい者雇用に関心のある方
・就労困難者の支援に関心のある方
・働き方の多様性に関心のある方
・働く場づくりに関心のある方
学生、社会人、・就労困難者及びそのご家族など、立場は問わず広くご参加をお待ちしております。

■定員:20名(先着順)

■参加費:SBN会員:1,000円 SBN非会員:1,500円(当日お支払いください)
(SBN入会のご案内はこちら

■会場:ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)事務所
東京都港区南青山1-20-15 ROCK 1st 3階(地下鉄千代田線 乃木坂駅 3番出口より徒歩3分)
*地図、アクセスはこちら 

 ■申し込み:
お名前とご所属をご記入の上、メールで以下のフォームよりお申し込みください。(先着順となります。ご了承ください)
フォームはこちら 
(電話、FAXでの申込みを希望される場合は、以下問合せ先にご連絡ください)

■問合せ先:
ソーシャルビジネス・ネットワーク事務局
TEL 03-6820-6300    FAX 03-5775-7671
E-mail hatarakikata@sb-network.sakura.ne.jp
主催:ソーシャルビジネス・ネットワーク 働き方委員会

<働き方委員会とは?> 「就労困難者の働き方」に問題意識を持つ社会人や学生で構成される学びと実践の場。ソーシャルビジネス・ネットワークの活動の一環として2013年9月に発足。「働くことに困難を抱える人の課題解決を通じて、当事者だけでなく、雇用者・支援者を含め、誰にとっても生きたい・働きたい環境を実現する」ことをビジョンに掲げ、さまざまな関係者を巻き込みながら、課題解決に向けた活動を展開していきます。メンバーを随時募集中です。ご参加希望の方は上記の問合せ先までご連絡ください。ぜひご一緒に!

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』沖縄リサイクル運動市民の会 古我知浩 氏

第29回『社会事業家100人インタビュー』
「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

2014年5月28日(水) 19時~21時
於:(般社)ソーシャルビジネス・ネットワーク 会議室

ゲスト:古我知浩さん 沖縄リサイクル運動市民の会 代表、(特)エコ・ビジョン沖縄 理事長

 

 

<プロフィール>

沖縄生まれの沖縄育ち。学生時代にシルクロードやヨーロッパを放浪し、世界の貧富の差を実感。1983年に沖縄リサイクル運動市民の会設立に参画、翌年代表に就任。県内各地でのフリーマーケットの開催や不用品データバンクの開設等、市民が不用品を活かす場をつくり続けてきた。那覇市での月1回の「フリーマーケットinパレットくもじ」の定期開催は11年間(通算130回)に及んだ。そのほか有機農産物販売や資源回収事業者によるリサイクル事業組合設立の支援、那覇市NPO活動支援センターの運営等、多岐にわたる事業を展開。また、子どもたちが自分で考えることを目的に、環境教育プログラムの「買い物ゲーム」を考案。環境学習支援サービス実施体制を構築し、学校で出前授業を続けている。95年には、食品循環養豚プロジェクト「くいまーる」を立ち上げ、食品残渣の飼料化・堆肥化のサービスを事業化し、「くいまーる事業協同組合」を設立した。(独法)国際協力機構(JICA)の委託事業では、途上国への廃棄物管理の技術支援にも取り組んでいる。

 

<今回のインタビューのポイント>(川北)

 古我知さんは、30年以上にわたって、沖縄で環境問題解決へのさまざまな取り組みを進めてきた。地域密着のエキスパートだけが持つノウハウや具体的手法は、現在発展途上の国々に移転され、着実に根付き始めている。自分の団体だけで進めるのではなく、時間がかかっても、外部のリソースを活用し、ステークホルダーを巻き込み、人材育成しながら、事業として成り立つようデザインしていくヒントを得てほしい。

 

那覇市の「ゴミ非常事態」に、市民として向き合う

80年代初め、市民がゴミ出しのルールを守らず、分別しないまま毎日出したり、ゴミ集積場でないところに捨てたりするので、野良犬や野良猫がゴミを荒らす、歩道が通れなくなるなどの状況が市内各地で発生していました。ゴミが多すぎて焼却が間に合わないため、そのまま最終処分場に埋め立てた結果、害虫の大量発生や汚水の流出、ひどい悪臭などによって、近隣住民による抗議運動がおこっていましたが、行政はなかなか重い腰を上げません。そこで、市民の立場でこの問題に取り組みたいと思い幾つかのプロジェクトを立ち上げました。

沖縄リサイクル運動市民の会(以下、沖リ)を設立した当時(83年)は、環境問題に取り組むことが事業として成り立つとは考えられておらず、周りの人からは「政治家になりたいのか?」「公務員になったら?」などと言われました。自分としてはそんな気持ちはまったくなく、おかしいなと思ったことを、できる範囲でやりながら食べていければ、もしかして幸せになれるかもと思っただけです。ただし(余暇の活動としてではなく)最初から本業として取り組んだので、事業としてまわしていけるようにしなければという意識はいつもありました。

沖リのミッションは、「エコロジカルな市民社会の創造」。環境問題をはじめ、課題に気付いた市民自らが提案し、解決のために動ける社会をつくりたかったのです。そこで、学生や主婦のボランティアによる、各家庭から出されるゴミの量と内容調査、フリーマーケットの開催、資源回収、レジ袋削減プロジェクトなどにどんどん取り組んでいきました。90年代初め、自治体による資源回収はまだ実施されておらず、行政に相談しても「燃える・燃えないの分別もできないのに、資源回収をやるなんて、10年はやい!」と言われたものです。

 

食品循環養豚プロジェクト「くいまーる」に立ちはだかった4つの壁

ゴミ調査の結果、家庭や店舗から出る生ゴミが、ゴミ全体の3割以上を占めていることがわかりました。また、賞味期限が過ぎたという理由で、さっきまで売り場の棚に並んでいた食品が大量廃棄されている状況を目にし、食料自給率が低い日本でこのようなことはあってはならないと強く感じました。そこで考えたのが、食品循環養豚プロジェクト「くいまーる」です。商店街やスーパーの店舗から出た生ゴミを分別・回収し、飼料化して豚を育て、豚肉として販売するというアイディアは素晴らしいと思ったのですが、事業化には4つの壁が立ちはだかりました。

(1)利害関係者から協力を断られた…

関係者に協力をお願いしにいったところ、お店の人からは「商売でやってるんだから、ゴミ分別にさける人手なんかないよ」、収集業者からは「分別して収集するなんて、コストがかかりすぎてダメ」、畜産業者からは「肥育がたいへんだし、生ゴミで育てた豚は売れない」と、ことごとく協力を断られてしまいました。この事業は沖リ単体ではできないので、リサイクルの環を完結させるには利害関係者の協力が不可欠です。そこで、あきらめず何度も通って説明し、協力をお願いしました。結局、この「説得」には1年半ほどかかりましたが、徐々に「実験的になら協力してもいい」という了承を得ることに成功したのです。

(2)お店での生ゴミ分別のシステムづくりに苦労…

 スーパーのパートさんたちに生ゴミ分別をお願いするのですが、言っただけでうまくまわるはずがありません。どうやったら集めやすいか、分けやすいかなど、具体的な作業の流れを、現場でパートさんたちと一緒に考えながらつくっていく必要があります。そこで、何度もスーパーに通って作業を手伝いながら、少しずつ分別システムを確立していきました。

(3)飼料化の機器製造・開発に試行錯誤…

 生ゴミを飼料化するための機械も、一から開発しなければなりませんでした。県の助成金を活用し、この事業に興味を持ってくださった大学の先生や環境コンサルタントの方に、専門的な部分について協力いただき、機器の製造は、地元の鉄工所の方にお願いしました。多くの方の協力を得て、はじめは失敗続きでしたが、安全性・栄養面でも問題がない飼料を、安定的に製造できるようになりました。

(4)社会実験を事業にするハードルが高い…

 実験から事業にするには、超えなければならないハードルがいくつもありました。まず事業協同組合をつくり、関係者のネットワークを構築しましたが、省庁からは、廃棄物処理法・畜産法・食品リサイクル法等、法律への適合も要請されましたし、この事業によって悪影響を被る企業から妨害を受けることもありました。

 もともと、食べ物のリサイクルは非常にむずかしいといわれており、「くいまーる」のように、リサイクルの環を完結させる取り組みは、その当時はまだありませんでした。沖リに本プロジェクトに必要な専門的な知識がなかったこともありますが、あらゆる面で、外部のプロフェッショナルの方々から協力を得て進めていきました。事務局として、資金調達や利害調整など、たいへんなこともありましたが、事業化への道筋を早い段階でつけるという意味では、最初から外部を巻き込めたことはよかったと思います。

 「買い物ゲーム」で、環境マインドの醸成と人材育成を

 ゴミの出し方のマナーもそうですが、大人になってから啓発するのではなく、子どもの時から環境への意識を高める必要性を痛感し、体験型環境学習プログラム出前授業「買い物ゲーム」(注)を開発しました。99年の開始以来、国内外の約3万人が体験しています。

(注)詳しくはウェブサイトを参照。http://www.ryucom.ne.jp/users/kuru2/kaimono/001.htm

このゲームは、5~6人のグループに分かれて、カレーをつくることを想定し、教室の後ろに設置した模擬店舗でカレーに必要な材料を人数分買い揃えるところから始まります。この段階では、お釣りの多いグループが勝者です。続いて、材料についてくる容器や包装に着目し、ゴミと食べものを分けてみます。おつりからゴミ処理の費用を引いた残額が多いグループが、最終的な勝者になります。さらに、ゴミの量や質、処理方法やそれにかかる費用、環境への影響を知り、ゴミを減らすための工夫を考えて発表するという90分のプログラムです。

出前授業のスタッフは毎年公募していて、環境教育に関心のある人や子ども関係の活動に興味を持つ人が集まります。小学生の時に「買い物ゲーム」を体験した人が教える側になるという「人材の循環」も生まれてきました。大体いつも、ちょっと様子を見ようという人が9割、とてもやる気のある人が1割という感じです。この1割が誰なのかを素早く見抜き、育てることが大事です。人材育成という面では、モチベーションの維持が重要ですが、常に次のステップを見せて、段階を踏んで違うことに挑戦してもらえるように心がけています。私は、ヒントは出しますし、相談にも応じますが、答えを示すことはほとんどありません。結果的に、指示待ちではなく、「自分で考える人」が残ります。

この「買い物ゲーム」スタッフ体験がきっかけで、沖リの常勤職員になったり、他の環境団体を立ち上げたりする人もいます。ただし、沖リの職員になったとしても、「ここで一生」とは考えないよう、卒業を前提に各自のキャリアを考えるよう促しています。

 

海外へのノウハウ移転と国内の若者支援

現在、JICAの専門員として、国内で積み重ねてきた活動を海外展開しています。現地の行政やNGOと協力して、マレーシアでは買い物ゲームの普及、ベトナムでは行政のゴミ処理計画づくりへの協力、トンガではリサイクルビジネスの支援などを進めており、日本で試行錯誤しつつ進めてきたすべての経験が生きていると感じます。国ごとに状況は異なるので、画一的なメソッドの押しつけではなく、まずは足りないものを見つけ、補うための手法を考えながら、柔軟に対応していきます。

国内では今後、若者の、特にメンタル面の支援を進めていきたいです。特定非営利活動促進法制定以来、団体運営をきちんとしなければというプレッシャーによって、「モノ・コトを拡げていこう!」というような、当初持っていたパワーを失って、自信をなくしている人が多いように思います。志を持っている若者には、「もうちょっとゆっくりでもいいんだよ」と声掛けし、背中を押してあげたいです。個別相談を受けることは今も多いですが、もう少しオープンなかたちで展開しなければと思っています。

(文責:棟朝)

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』(特)北見NPOサポートセンター 谷井貞夫 氏

第27回『社会事業家100人インタビュー』
「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

2014年5月23日(月)19時~21時 
於:(特)ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)事務所

ゲスト: 谷井貞夫様  (特)北見NPOサポートセンター 理事長 
~北見に学ぶ地域社会のフレームづくり~

 

 

 

<プロフィール>

大学卒業後、建設会社の技術員として23年間、全国各地の建設現場を経験した後、中途退職して北見市に帰郷。人口12万5千人の北海道オホーツク海沿岸部の市で、民設民営の中間支援組織として北見NPOサポートセンターを設立。

NPOや市民活動の支援にとどまらず、地域の高齢者支援と子育て支援を同時に行う駄菓子屋併設のグループホーム兼デイサービス施設の開設や、障碍児を持つシングルマザーのためのカフェなど、地域の課題・住民の課題に即して地域づくりを進めた結果、複数の「地域共生型福祉施設」の開設を手掛け、幅広い事業を展開している。

 

<今回のインタビューのポイント>(IIHOE 川北)

地域社会の課題に向き合う中間支援組織が、住民のくらしにどう関わり、地域社会のフレームづくりをどう進めていくか。その構想をどうやって実現させたのか。地域の「コーディネーター」の役割とは何か。地域づくりや市民活動の支援に関わる人はもとより、地域密着型、共生型福祉のあり方を模索する人にぜひ学んでいただきたい。

 

信用は「目に見える」もので得る

北海道北見市は、オホーツク沿岸では最も人口が多く、都会からの転勤者やUターン者もいる中堅都市です。とはいっても、高齢化を背景に地域にニーズがありながら、それを支えるNPOの数が今以上に増えることは余り期待できず、また、NPOの中間支援組織が指定管理者となるような施設もありません。そんな中で、我々、北見NPOサポートセンターが担うべき仕事は、今、活動しているNPOが、より地域からの信頼を高めて、より地域に大きな影響を与えられる団体になるよう成長を促すことだと考えています。

NPOが良い活動をしていても、地域の人はなかなか評価してくれませんし、理念や言葉だけで信用してもらうことも難しいです。地域の人の信頼を得るには「目に見える」ものも大切です。2008年頃までは、北見市のNPOは小さな一軒家を借りて活動しているような小規模なところが多く、大きい団体でも年間予算3千万円程度。やりたいことがあっても、地域での認知度も低く、どうしたらいいだろうというのが共通の悩みでした。地域にニーズはあるのだから、それに対して何をやりたいのかというイメージは、常に膨らませていました。

そんなときに、道庁からある法人に電話があり、厚生労働省が実施する地域介護・福祉空間整備等交付金について知りました。高齢者と障碍者、子育て中の人、片親家庭等を複合的に支援する福祉サービス事業のための施設の新築・改築費用を3千万円まで交付するというものです。北見NPOサポートセンターは、北見市と近隣の網走市で、NPOがその交付金を上手く活用して地域で必要な事業を新しく始めたり、運営していくことを手伝ってきました。現在、北見市周辺では、4法人7施設が交付を受けて、それぞれの地域のニーズに応える共生型事業を運営しています。

 

2011年に新設した夕陽ケ丘オレンジスタジオは、(特)耳をすませばが運営しています。有償ボランティアによる子どもの一時預かり等子育て支援を基盤に、スタジオでの運動教室や野菜ソムリエによる料理教室、健康づくりの講師派遣等で、健康コミュニティづくりを目指しています。きれいな調理室を使って、農協や地域の経済団体を巻き込んで実施した「アラフォー婚活クッキング」は大変好評でした。

(特)とむての森は居宅介護事業等の高齢者、障碍者支援を行っており、北見市では老舗のNPOです。2008年に交付金を活用して下宿アパートだった建物を改装し、共生型多機能施設「ふれあい@とむてホーム」を始めました。グループホームではなくて、独りでは生活困難な高齢者や障碍者がサポーターとともに生活する住居です。

2012年には就労継続支援B型事業として、障碍者の就労・研修の場となるベーカリーカフェローフをオープン。北見市の特産の玉ねぎを使ったオニオングラタンや香味野菜とビーフシチュー等の料理は地元のグルメ雑誌に取り上げられ、北見市内では話題のカフェになりました。この場所が障碍者支援を目的としている場所だとは知らないお客様もたくさんいます。そういう印象を与えない外観や内装にこだわりました。

 

施設の見た目が立派であることやセンスが良いことは、地域の人からの信用を高め、その団体に関わりたい、利用したいという気持ちをおこします。活動を地域の人に見られることで、団体もまた、成長できます。各団体が実現したい「安心な社会のイメージ」を「見える化」することで、団体が本当に信頼されるNPOへと成長していく、その過程の最初のドライブに、交付金を使っています。いずれの団体も、事業を継続する工夫は自分達でおこない、イニシャルコストにのみ公的支援を戦略的に活用しました。

 

理想の地域の姿に向けて準備する

地域介護・福祉空間整備等交付金は、市町村から国への提案事業に対して認められるもので、市町村と施設を運営するNPOが協力して申請する必要があります。市町村とNPOの間に、高齢者支援と共生の分野で地域にニーズがあることに共通の理解があれば、どこの地域でも申請できるのですが、過去の交付実績をみると、自治体によって相当な偏りがみられます。これは、この交付金活用に対する市町村の積極性に左右されているためといえますが、交付を受けると最低10年間は施設を継続できなければ、交付金を国に返還する義務もあるため、慎重にならざるを得ない市町村の姿勢も理解できます。そんな市町村に対して、地域のNPOの信用保証を行うのが、我々のような中間支援組織の役割であり、また、10年間運営を継続していけるよう必要なマネジメント支援を行うことが仕事だと考えます。

新築・改築費用に一施設あたり3千万円。もともと、介護事業者向けの交付金なので、高齢者支援は必ず事業に入れる必要がありますが、障碍者、子育て、シングルマザー、どのような組み合わせでもよいので共生型支援に使うことが条件です。地域に共生型のニーズが無いわけがないのです。自分達だけではできませんが、支援を担えるNPOと市町村の理解があれば自由度高く使える予算です。この交付金を受ける前は、年間予算3千万円だったNPOが、現在では2億円を超え、道内でも有数の団体に成長したところもあります。

実は、最初に共生型事業の提案をしてみないかと声がかかった時点で、締め切りまで1週間程の時間しかありませんでした。見積書や図面の作成に奔走しましたが、私の建設業界での経験も活き、中間支援組織として本来の仕事をしたと思います。地域のNPOとともに、こんなところで、こんなことができたらいいね、というイメージを膨らませていたからこそ、急な話にも対応でき、応募することができました。

準備がなければ、手を挙げることもできません。チャンスの神様の前髪は絶対に捕まえる。理想とする社会のイメージは、実現できる、出来ないにかかわらず、準備しておくことが大事だと改めて思いました。現場のNPOは日々の活動で精一杯になりがちですが、第2、第3のチャンスのために、どうしようというイメージは常に考えておけと、地域で言いきかせています。準備を怠らなかった団体は機会をつかんでいます。

 

地域の資源を組み合わせる

前述の(特)とむての森では、カフェが入居している2件目の共生型施設「ふれあい@あったかホーム」には、高齢者や自立を目指す障碍者のための居住と、障碍のある子どもを持つシングルマザーのための住居があります。母親はカフェで働きながら子どもと暮らすことができます。また、3件目の「ふれあい@しゅんこうホーム」では高齢者、障碍者とともに暮らす大学生を募集し、近隣の大学と提携して、学生が安く住める部屋を提供しています。同時に、北見工業大学、日赤北海道看護大学の学生ボランティアをコーディネートする事務局もおこない、学生たちによる除雪や草刈活動は地域の独居高齢者や町内会に喜ばれています。

カフェに相談に訪れる親御さんたちの障碍のある子ども達が成長したら、カフェだけで雇用し続けることは難しいので「みんなの畑こんね」を作って、北見市と農林水産省から5千万円の予算を受け、農業での福祉的雇用に取り組んでいます。

(特)みんとけあは訪問介護・居宅介護事業を展開する事業所です。高齢者施設「地域共生ホームかえで」に駄菓子屋を併設し、高齢者と子ども達のふれあいの場づくりをしていることが特徴です。また、「ライフシェアきらり」では、アートな演出で個性的な店舗を、障碍者の就労継続支援B型事業として運営し、隠れ家的な雰囲気のある場所でサンドイッチやスープを提供しています。この施設では、シングルマザーは就労ができても試用期間が終わるまでは安定した住居を確保することが難しいという悩みを受け入れ、試用期間の間も住むことができる居住スペースを提供しています。

(特)ふれあいインさろまでは「街の駅わかさ・のどかⅡ」を設立。高齢者や障碍者、地域のだれもが助け合う共生を目指すコミュニティカフェを開いていて、地元の食材をつかったかぼちゃ蒸しパンの作成など、生産的な活動を地域のおばちゃんを集めて行っています。

7施設に共通点は無いようにも見えますが、どの施設もその地域の事情にあわせて必要なことを行っているので、初期費用があれば、自分達で継続できるのです。

最後に、北見NPOサポートセンターの事業を紹介します。地域のNPOを支援する仕事の他、金融機関や中小企業診断士、大学、野菜ソムリエ等の専門家の協力を得て、地域資源に付加価値をつけて都市部で販売し、新たな特産物を創ろうという事業に参画しています。唐辛子、スープ、ジャム等をつくり、東京都江東区の区民祭りに出展したところ、3日分として用意したものが1時間で売り切れました。市場の面白さを発見した地域の人たちに、商売に対する色気がでてきて、雰囲気が変わってきています。

また、農林水産省の補助事業で「農を活用した共生地域社会づくりプロジェクト」にも取り組んでいます。地域の空地を利用し、農業をしたい元気な高齢者に生きがいとしての農作業をつうじて地域コミュニティに参画してもらい、地域の健康を高める狙いがあります。生産物は加工して販売、その収益は地域に還元する助け合いのしくみづくりの全体のコーディネーションを北見NPOサポートセンターが担っています。

様々な資源をコーディネートするのが中間支援組織の仕事ですし、経済団体や大学、住民組織等、多様な人達と一緒に事業に取り組むことで、NPOに対する信用も徐々に得ているという手ごたえもでてきました。

 

(文責:前川)

 

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