2019年6月27日に「ソーシャルビジネス白書」を刊行いたしました。
「ソーシャルビジネス白書」第0号 刊行のねらいと感謝
東日本大震災が起きた2011年は、被災された方々はもとより、日本にとって、大きな転機となりました。 それは、より良い社会へと課題の解決や理想の実現に事業を通じて挑む日本の社会的企業家にとっても 同様です。環境や福祉など様々な分野で実績と積み重ねてきた事業家は、被災された方々や地域に 役立てることができないかと考え、自らの経験や技能を総動員して支援に取り組みました。また「いつか は社会に挑む事業をしたい」と考えていた若者たちも、突き動かされるように被災地に赴き、被災された 方々のお手伝いをする中から、事業や組織を生み育てていきました。 日本初の社会的企業家・ソーシャルビジネス事業者による経済団体として、一般社団法人ソーシャルビジ ネス・ネットワーク(以下SBN)が設立されたのは同年2月。そのわずか数週間後に東日本大震災が起きた ことから、会員とともに、被災地・被災者の支援にも精力的に取り組みました。 このように、日本の大きな転機となった東日本大震災の前後で、日本のソーシャルビジネスはどのように 変化・進化・成長したのか。担い手も、取り組まれる課題も増えつつある一方で、実態の把握や発信が十分 に進んでいないことから、「日本初のソーシャルビジネスに関する自発的な調査・推計をまとめよう」との 思いから生まれたのが、本書「ソーシャルビジネス白書」です。 この趣旨にご賛同くださった特定非営利活動法人エティックとSBNが共同で事務局を務め、その会員や 支援・調査先団体など約350社に調査へのご協力を昨年末から本年初にかけてお願いしたところ、131社 からご回答いただきました。お忙しい中ご協力くださったことに、深く感謝申し上げます。 調査の集計・分析にあたっては、SBNの常任顧問である中村陽一先生(立教大学大学院21世紀社会デザイン 研究科教授)を委員長とする編集委員会を設け、理事である宮城治男さん(エティック代表理事)と町野弘明 さん( SBN専務理事・事務局長)、そして私が委員として加わりました。 また本書の制作にあたっては、デザインの力を加えることで社会的課題解決への寄与をめざすデザイン会社で ある特定非営利活動法人Co.to.hanaにご協力いただいたことから、わかりやすさを高めることができました。 多くの方々のご協力により実現した初の「白書」ですが、編集長を仰せつかった私の微力ゆえに、回答数 が実態を把握すると言える規模でなく、また、設問や回答の精度にも粗さがあることから、敢えて「第 0号」 というテスト発行といたしました。力不足を深くお詫び申し上げるとともに、しかし、これまで何度か構想 されても実現に至らなかった白書の刊行が形になりましたことに、心からお礼を申し上げます。 本書が、日本におけるソーシャルビジネスのこれまでとこれからを伝え、課題先進国である日本における ソーシャルビジネスのあり方を示すものとなり、多くの方々にご活用、ご意見いただけることを願います。
2019年6月
川北 秀人