3月15日、「被災地復興ソーシャルビジネスメッセ」出展者二次募集開始(@仙台、無料)

3月15日に開催される「被災地復興ソーシャルビジネスメッセ」の出展者、二次募集を開始します。

復興支援に携わる100の事業者が出展する展示会。物販、商談、協力者の募集が可能です。
展示会に合わせ、復興ビジネスノウハウ講座などのステージプログラムも開催します!

出展料、ステージプログラム聴講料は全て無料となっています。 

今年の会場は仙台市の繁華街に位置し、物産市として一般の方に対する呼びかけも
行っているため、多くの来場者が見込まれる予定です。

申込みは、下記のURLからエクセルファイルをダウンロードいただき、
ご記入の上、下記宛先までメールまたは郵送にてお送りください。
申込書はこちら

■申込み
*出展案内は申込み締切1月31日となっておりますが、2月7日(金)まで延長しています
E-mail::sbforum@socialbusiness-net.com
郵送:〒107-0062 東京都港区南青山1-20-15 Rock1st 3F
一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク 担当伊藤 宛

自分が住みたいまちを考えるワークショップ(第3回課題先進国会議)参加者募集開始

「課題先進国会議」第3回目は、「自分が住みたいまちを考えるワークショップ」として展開します。
これからまちづくりが行われる被災地がフィールド。だから絵空事じゃない。
誰にも“居場所と出番”があるまちのモデルを、社会的企業家や、就労困難者支援の専門家と共に考えてみませんか。
被災地からは、陸前高田市の老舗の味噌醤油メーカー、八木澤商店の河野社長がお越しになります。

•日時:2014年3月7日(金)19時~22時 *開場18時45分
•場所:アミタホールディングス株式会社 東京本店
    (東京都千代田区九段北三丁目2番4号) *市ヶ谷駅より徒歩5分   
•主催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク
•協賛:NEC
•協力:アミタホールディングス株式会社
•募集:30名程度 
•参加費:会員)無料、非会員)500円 *軽食をご用意しています!
お申し込みはこちら
 

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』特定非営利活動法人マドレボニータ 代表理事 吉岡マコ氏

『社会事業家100人インタビュー』特別編(静岡開催)

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

 
 

ゲスト: (特)マドレボニータ 代表理事 吉岡マコ様

<ゲストプロフィール>

自身の産後の経験から、産後の女性の健康をサポートするしくみが日本にはまったくないことに気づき、1998年に「産後のボディケア&フィットネス教室」を立ち上げ。「私以外にも苦しんでいる人はきっといるはず!」「産後はダイエットではなくリハビリ」「母の健康は家族の健康」という信念の下、産前・産後に特化したヘルスケア・プログラムの開発、研究・実践を重ね、2007年に(特)マドレボニータを設立。2006年より産後ヘルスケアのプロとして「産後セルフケアインストラクター」の養成・認定の制度を整備。産後女性に日々接する現場をもつNPOとして、09年からは産前・産後のリアルを伝え、当事者の心構えと備え、そして周囲からの適切なサポートにつなげてもらおう、と『産後白書』を発行して産後ケアの社会的必要性を広く伝える活動を行っている。2011年マドレ基金をたちあげ、ひとり親、多胎児の母、障碍児の母など、社会的に孤立しがちな母親たちへの支援に着手。NEC社会貢献室との協働事業「NECワーキングマザーサロン」では、すべての女性を対象に「母となって働く」ことについて考え、語る機会を提供。2009年よりのべ4000人を超える女性が参加した。

<今回のインタビューのポイント>(インタビュアー IIHOE川北)

活動を始める・続けるだけでなく、質を保ちつつ一気に拡げるためには、しくみ化と発信が不可欠。それを着実に実践しつつ、事務局の運営体制も、これまでにないものを創出しながら、成長と進化を続けてきた同会から、基礎の実践と進化の姿勢を学び取ってほしい。

 

出産をめぐるパラドックス

マドレボニータ」はスペイン語で「美しい母」の意味です。母となったからこそ見えてくる醜い部分も受け止められるような器量を持つこと。それが私達の考える「美しい母」であり、そのために必要なのが産後ケアです。出産は確かにおめでたいこと。でも、「おめでとう」だけではすまされない現実があることも知ってほしい。産後の女性の10人に1人が産後うつ*を発症しているといわれています。普段、マドレボニータの産後のボディケア&フィットネス教室等でたくさんの産後の女性に接する現場の感覚としては、精神的にしんどい人はもっといるはず、と感じます。

私たちが2010年に行ったアンケート調査**によると、「産後うつと診断はされていないが近い状態になった」、と回答した人が100人中80人ちかくいました。実に10人中9人がなんらかの精神的なツラさを抱えながら子育てをしていることになります。また、幼児虐待について報告されている件数の内44%は子どもが0歳児の時に起こっているという調査結果もあります。「かわいい赤ちゃんを虐待するなんてなんてひどい母親か」というのが世間一般の反応でしょう。でも出産後の問題は母親だけを責めても解決しないのです。

日本の母子保健のシステムは、妊娠中、出産、乳児向けなど、出産前と生まれた赤ちゃんに対しては手厚く整備されています。でも産後の母親に対するケアは実はほとんどないのです。産後、女性の身体には特有の変化が起こり、精神面も不安定になりがち。そうした産後特有の変化や不調についてアドバイスできる専門家はほとんどいません。医師や助産師は出産についての知識はあっても、退院後の患者にはあまり接点がなく、専門知識として「産後」を教わることもほぼありません。医療機関では産後の生活をケアできないのです。産後に不調を訴える人がいても、産後に特化したアドバイスをできる人がいない。じゃあ、自分たちがその専門家になろう!と思って、産後の身体をケアするための研究開発をはじめたのが、「マドレボニータ」のはじまりです。

 

*産後うつ:産後に発症するうつ病で、10-20%に生じるとされています。一日中気分が沈む、日常生活の中で興味や喜びが感じられない、赤ちゃんに何の感情もわいてこない、食欲もなく体重が減る、不眠/睡眠過多などがサインとなります。マタニティ・ブルー(ズ)とは異なり、治療を必要とする病気です。

出典:母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」 http://www.mcfh.or.jp/jouhou/yougo/sangoutu.html

**2010年8月~同9月にかけ、インターネット上のアンケートフォーム等を用いて計106件の回答を得た。

 

現場を知ってる専門家は私達!

私は大学院時代に運動生理学を学びつつ、大学院の外ではヨガ、ピラティス、東洋医学、ダンスセラピー、骨格調整、オーラソーマ、レイキなど、数々のヒーリングアーツを勉強していたこともあり、自分の産後の身体のあまりの不調に納得できなくて、何か方法がないかといろいろ考えました。でも、医師に聞いても助産師さんに聞いても、産後の女性の体を本当に理解してアドバイスできる人はいなかった。産後1カ月を過ぎた頃、以前習っていたヨガの先生が連絡をくれて、家に来てくれることに。産後の身体に必要なケアを、自分を実験台にしながら考えていきました。

その結果わかったのは、産後の身体に必要なのは治療ではなく、リハビリだということ。リハビリによって自分自身の力を少しずつ取り戻すことができます。医療従事者による治療ではなく、当事者の苦しみをちゃんと理解して、それを解決するような、市民発のボディケアを開発しよう。そのプログラムをつくろう。まずはそれで自分が元気になりたい、と考えたのです。そして取り組むうちに、自分だけでなく、苦しんでいる人はきっとほかにもいるはず、と思い、産後のボディケア&フィットネス教室を1998年の9月にスタートさせました。自分の子どもが生後6か月のときでした。

最初の年の教室にきてくれた人はのべ約100人。最初は試行錯誤の連続でした。自分の身体を実験台にした、サンプル数1のプログラムでしたから、来てくれる女性たちをよく観察して、どんな不調が出ているか、どんなケアが効果的か、よく見たり聞いたりしていきました。でも本当のニーズは目に見えません。聞くだけでなく、その裏の本当のニーズを探ろう、彼女らの言動を注意深く観察し、考察し、本音を読みとろうと努めました。見えない本当のニーズ、そこにサービスを提供していくこと。その結果できあがったのが現在のプログラムで、1回2時間の4回連続講座。運動、コミュニケーション、セルフケアの3 部構成になっています。1回目は、ほとんどの人にとって産後初めての外出で、なんとか教室に来るだけで精一杯。それから徐々に身体をほぐし、精神的に余裕も出てきたあたりで、参加者に「自分自身の身体をちゃんとケアしよう、自分のための時間をつくろう」という意識が芽生えてきます。自分の体への意識が高まり、体力と身体スキルが身に付いてきた3回目からは、骨盤呼吸法などちょっと難しいことも取り入れて、自分で自分の身体をコントロールできる技を学んでいきます。そして最後の4回目ではウォーキングをして、美しく歩いて締めくくります。このように、たったの4回のコースでも、人の心身に大きな変容を起こすような構成にデザインされています。

こうした教室は、産後に外に出るきっかけをつくることができる、という意義もあります。産後のプログラムは決して、元気なお母さんだけが来るところではないんです。赤ちゃんと二人きりの時間を長く過ごす母親にとって、どんな人にでも産後うつは起こりうるし、幼児虐待は他人ごとじゃありません。母親たちの笑顔は当たり前のものじゃないんです。だからこそ、産後の早い時期から、外に出て人と出会い、自分の心身と向き合う機会をもち、自分の力を取り戻していくことが必要なのです。

現在では、12都道府県に拠点があり、全国50か所で教室を開催、年間約5000人にプログラムを提供しています。22人のインストラクターが各地で教室を開き、10人の事務局スタッフがそれぞれ在宅で、クラウド事務局という形でワークシェアをしながら団体の運営にあたっています。

最初は私1人で始めたプログラムでしたが、2002年からインストラクターの養成をはじめ、06年にインストラクターの認定制度をつくりました。産後プログラムを実施するにあたり必要なことをすべて洗い出した、300点満点の筆記試験と実技試験です。この試験があることで、インストラクターに産後プログラムの専門家としての緊張感とプライドがうまれます。この制度を導入したことで去っていく人もいましたが、ここまでコミットしてくれた人がその後の仲間として残ってくれました。

また、2段階の会員制度を設けていて、賛助会員は2年間で5000円の会費で現在200人。定期的に「マドレ通信」を届けて、私たちの活動を応援していただいています。一方、正会員は年間会費が25000円。正会員にのみ配布する「マドレジャーナル」を発行し、かなり中身の濃い情報を伝え、強い共感をしてくださる方々をつないでいます。現在、正会員は200人弱ですが、この中には、「活動に参画したい」という方が多く、私たちの事業の重要な担い手になっています。

 


手づくりの「公」をつくる

私達の事業は産後ケアのプログラムを提供していくことが中心ですが、プログラムを重ねるにしたがって、年間5000人の産後の女性に接している知見、現場で起きている実態を世の中に伝えていかなければ、と考えるようになりました。「産後の身体の変化について、出産前に知っていたら備えができたのに」、「夫や家族に、産後の心身の実際を知って欲しい」という参加者の声にも後押しされて、産後のカラダとココロのリアルを伝えるための『産後白書』を2009年から発行しています。マドレボニータの教室に通っている産後女性620人にアンケートを実施し、インタビューで生の声を拾った第一弾は、「出産直後からの身体の状態と夫婦関係」をテーマにアンケート調査結果をまとめ、産後女性の身体と心の変化を周りの人にも理解してもらうためのツールとなりました。さらに『産後白書2』では、「産後から考えるはたらきかた」をテーマに、「子育てしながらはたらく・はたらきたい女性1400人のリアル」と題して、マドレボニータとNEC が協働する事業「NECワーキングマザーサロン」の参加者アンケートや一般のWEBアンケートで1400人分の声を集め、子育てしながら働くことについての不安や悩みについてまとめました。そして2012年に発行した『産後白書3』では、「産前・産後のパートナーシップ」について、さまざまなパートナーシップのかたちを、当事者たちの声を中心にまとめています。

こうした、産後の実態を社会に広く発信していくことで、日本の母子保健システムでは見過ごされている「産後」を「出産」や「妊娠」と同じようにケアすべき事象として、産後ケアの社会的必要性、そして周囲の理解を広げていきたいと思っています。

本来、産後ケアは公的なサービスであるべきです。私たちの教室に来られない人にも、産後ケアを届けたい。最近は、地区センターで教室を開催したり、産婦人科病院のプログラムとして教室を開催することも多くなってきました。人口4500人の北海道清里町では、町と提携して清里町の産後女性の3割に無料(公費負担)でマドレボニータの産後プログラムを届けました。また、杉並区では「子育て応援券」というバウチャー制度があり、出生時に配布される4万円分の無償応援券を使用して、託児、家事代行、産後ケアなど様々なサービスを利用することができます。その無償応援券を使って、私達の教室に参加することもでき、それによって杉並区の受益者は4倍になりました。

こうして行政に積極的に働きかけることで、産後ケアを公的なサービスにしていきたいと考えていますが、私たちがプログラムを届けられているのは、日本全体で見ればまだほんのひとにぎりです。プログラムに参加するためには、通常は4回講座で12000円程度の参加費がかかりますから、それを払えない人もいるでしょう。ならば自分たちで手づくりの「公」を広げていこうと、「産後ケアバトン制度」を始めました。個人や企業から寄付を募って「マドレ基金」という基金をつくり、特に孤立しがちなひとり親や障碍をもつ児の母、双子や三つ子など多胎児の母などに受講料の一部または全額を補助するという制度です。マンスリーサポーター制度など個人からの寄付や企業からの寄付によって、産後ケアプログラムを受けた人が、次の人へとバトンをわたしていくしくみにもなっています。これまで、2011年3月から2013年9月現在、のべ167組の母子にこの制度を使ってマドレボニータのプログラムを受けていただきました。

私たちの出発点は、医療でも企業でも見落とされてきた「産後」という分野を市民初で開拓するというパイオニアスピリット。参加者からボランティアスタッフとなってくださる方は年間250人を超え、マドレボニータという団体が、単なるサービス提供者ではなく、市民の力を活かすプラットフォームとして存在していることを実感しています。教室の卒業生は、サービスの受益者で終わらず、卒業生の何割かは、応援の意味で会員となってくださり、そこからボランティアスタッフとしてプロジェクトへ参画してくれたり、新たなプロジェクトを提案してくれたり、積極的なコミットをしてくれています。それによって、団体本体だけではなしえなかった相乗効果もうまれています。会員のボランティアから有給スタッフになる人、マドレボニータに関わることで再就職先を見つけた人など、マドレボニータを通して、新たな人生を切り開いていっている人も多くみかけ、とても光栄な気持ちでいます。しかし、私たちが活動を続けていく一方で、幼児虐待は後を絶たず、産後うつやそれに近い症状を訴える女性の数はなかなか減りません。産後は、社会との接点が途絶え、最も孤立しやすい時期。その産後をサポートするしくみが日本には絶対必要です。すべての母となった女性が産後ケアを受けられる社会をめざし、「美しい母」を増やしていくこと。そうすれば日本は、世界はもっとよくなる。そう信じて、手づくりの公をもっともっと広げていきたいと思います。妊娠、出産で途切れず、産後まで責任をもってケアする「世界に誇れる母子保健」のシステムが日本にちゃんと整備され、産前から産後ケアまで、格差無く行き渡ること、これが私たちの究極の目標です。ひとつひとつの事業は、すべてここを目指すためにおこなっているのだということを忘れずに、関わる人たちとそのことを常に共有しながら進んでいきたいと思います。

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』 株式会社アットマーク・ラーニング 代表取締役社長 日野公三氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

第23回社会事業家100人インタビュー

 

 

(株)アットマーク・ラーニング 代表取締役社長 日野公三さん

2013年12月19日(木)19時~21時

於:(特)ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット

<プロフィール>

1982年岡山大学法文学部経済学科卒業後、株式会社リクルートに入社。88年に企画会社を設立し独立。94年に神奈川県の第3セクター「ケイネット」(パソコン通信会社) 取締役就任。99年にアットマーク・ラーニング設立、代表取締役社長就任。2000年に国内初のインターネットを使った通信制高校「アットマーク・インターハイスクール」(現:東京インターハイスクール)を開校するとともに、(特)日本ホームスクール支援協会設立。04年石川県白山市に「白山市美川特区アットマーク国際高等学校」、09年福岡県田川郡川崎町に「明蓬館高等学校」を開校。13年には東京都品川区に「明蓬館SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)」を開設した。

【主な役職】

株式会社アットマーク・ラーニング 代表取締役社長、美川特区アットマーク国際高等学校 理事長、東京インターハイスクール 理事長、明蓬館高等学校 理事長兼校長、(特)日本ホームスクール支援協会 理事長、一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク 理事

 

<今回のインタビューのポイント>(川北)

制度を利用するだけではなく、今ないものをつくりだすのがNPOや社会事業家。ニーズに応えるために、オペレートではなくプロデュースして初めて、存在意義があると言える。新しいものをつくるチャレンジャーであり続ける姿勢としくみづくりを、日野さんから学んでほしい。

 

「あなたの代わりに私がやります」

 神奈川県の第三セクターであるパソコン通信会社のケイネットの経営にかかわった際、「不登校生サロン」BBSで展開されている高度な議論に、驚くとともに大きな可能性を感じ、1997年、不登校児のためのインターネット・ハイスクール「風」を開校しました。ケイネットの事業縮小のため、2年で営業権を譲渡せざるを得ませんでしたが、約180人の生徒が学び、ニーズの高さを実感、インターネット・ハイスクールでの公益性と収益性は両立できると確信しました。

 学校法人をつくり、私学を立ち上げることも考えましたが、それだと5年~10年平気でかかってしまいます。すでに気にかかる中学生、高校生やそのご家族がいましたので、悠長に時間をかけることはできませんでした。そこで、株式会社立の新しい学校の立ち上げを決意し、ホームスクールやインターネットスクールの先進地であるアメリカへ何度も視察に行って提携校を探すとともに、設立資金を集め始めました。リクルート時代にお付き合いがあった日本IBMや日本マイクロソフトのOBから出資を募ったのですが、その際のくどき文句が「あなたの代わりに私がやります」です。

日本では、(戦後は状況が変わり、実践が減ってきましたが)キリスト教布教団体や功なり名を遂げた経営者が私学をつくってきた歴史があります。(不登校や発達障害など)スペシャル・ニーズを持つ子どもは増加の一方で、それぞれの事情や特徴に応じたきめ細やかな対応が必要ですが、メディア・テクノロジーをフルに使えば、経営的に成り立つことを訴えたわけです。

 

ICTと地域資源の融合で学校をつくる

 まず2000年に、インターネットを活用した通信制の高校「アットマーク・インターハイスクール(現・東京インターハイスクール)」を立ち上げました。ワシントン州のホームスクール支援校、アルジャー・インディペンデンス・ハイスクールと提携しており、アメリカの高校卒業資格を得ることができます。教科書やカリキュラムは生徒が主体的に決め、スクーリングの義務はありませんが、学習コーチングのサポートを受けられます。近年は、主に帰国子女等の受け皿となっており、2013年12月現在、約80名の生徒が在籍しています。

 2004年には、全国初の市町村認可による特区第一号高校「美川特区アットマーク国際高等学校」を石川県白山市に設立。2013年12月現在、約180名の生徒が在籍し、卒業時の進学率は通信制高校第1位(75%)、難関大学合格力は907位(通信制高校第1位)となっています。

 2009年には、構造改革特区制度のもと、福岡県川崎町に明蓬館高等学校を設立しました。不登校や発達障害の生徒を積極的に受け入れており、普段は自宅でインターネットを利用して授業を受け、品川・御殿山キャンパスでは随時補習が行われ、相談もできます。また、川崎町本校で年に10回程度実施される、3泊4日のスクーリングでは、全国から来たさまざまな生徒や地元の人たちと一緒に、普段の生活とはかけ離れた体験ができるため、心身とも大きく変化する子がいます。2013年12月現在、390名の生徒が在籍しています。

 

特区制度と廃校利用で、生徒も地域も活性化する

 川崎町の校舎は、06年4月に廃校となった小学校を町がリノベーションしたもので、地域との交流拠点になっています。実は、本校設立が決まった当初、「暴走族が来るのではないか」等の懸念や誤解が拡がり、地元で強い反対運動がおこりました。粘り強く対話の機会を重ねていくうち、青年団団長から「ここは、いろんな人を受け入れる抱擁力がある地域だと思う。このままでは限界集落になってしまうから、外の人に来てもらえるのはありがたいのではないか」という踏み込んだ発言がでるなど、徐々に理解を得てきた経緯があります。

 地域の人と向き合う中で、若手や高齢者は受け入れてくれやすいと感じました。ただ、初対面で反対する人は、それだけエネルギーがあるということなので、賛成派に取り込めば、強力な推進力を発揮してくれるものです。反対する人には、学校の運営や行事等にいろいろキャスティングし、(ボランティアではなく多少報酬を払って)学校運営に関与していただきました。また、4か月に1回開催される地域支援協議会では、情報公開と対話を続けています。

 その結果、明蓬館高等学校は、地域活性化の機会づくりの場として、役場や住民から厚い信頼と期待を受けるようになりました。たとえば、地域のお母さんたちと生徒が一緒に、校舎の調理スペースを使ってつくった地元の料理がとても美味しいと評判になったので、自信を得た町の人たちが、レシピ開発・農産加工品の製造を手掛けるようにもなりました。

 日本には現在4000もの廃校があって、これからも増えていきます。このようなかたちでの活用は、今後も大いにあり得ると考えています。

 

生徒と保護者のニーズを直視する

 スペシャル・ニーズを持つ子どもは増加の一方をたどっています。発達障害が原因で不登校となり、ひきこもりからうつへと進んでしまうケースも多く、早い段階での的確な対応が必要なことは言うまでもありません。

 そこで13年4月、品川区にSNEC(スペシャル・ニーズ・エデュケーション・センター)を開設しました。発達障害(LD:学習障害、ADHD:注意欠如多動性障害、ASD:自閉症スペクトラム)の専門家が、生徒・保護者面談の結果を基に個別支援・指導計画を作成し、学習面だけでなく、日常生活スキル、人とのかかわり方、進路・就労について個別指導・サポートしていきます。生徒自身の希望や得意な面を伸ばすことを第一に考えますが、保護者の多くは、SNECにたどり着くまでに相当疲弊しており、彼らに寄り添うこともまた大切です。

 

学校経営者の仕事はチームデザイン

 本校の教職員には、以下の3つを求めています。

①問題意識を持って、ライフワークとして取り組む意思のある人

②通信制の学校が自分にふさわしい(これがわが道)と思える人

③経営・継続を考えられる人(教職員には、二宮尊徳の言「道徳なき経営は犯罪である。
  経営なき道徳は寝言である。」を繰り返し伝えています。)

 

 専門性の高さはもちろん大事ですが、結局は「生徒と保護者の評価」なのです。また、何日もかけてこだわって教材をつくりこんだりする先生もいるので、仕事に納期を設け、2時間かかったのを20分でできないかなど、時間の使い方には常に工夫を求めています。

 中退率を下げるには、担任制が有効です。10代は承認されたい欲求が強いので、ソリューションを提供しなくても、決まった相談相手がいるだけでいいことも多いものです(逆に、教えられ過ぎると選択肢がなくなり、人のせいにしがちになります)。さらに、退学しそうな生徒の状況(家庭環境が複雑、勤労社会人であるなど)は早めにつかみ、一人の先生だけに任せず、教職員の会議で共有・協議するようにしています。

 また、教職員には外部の情報や専門家に触れてもらう機会をつくるなど、刺激を与え続けることが必要です。教員と職員、常勤と非常勤、内部と外部の専門家など、リソースを組み合わせ、各々の専門性や特徴を生かしながら高めあうことで、新しいものが生まれていきます。

 

必要とされる教育を生みだす

 アメリカでは、ホームスクールやチャータースクール、オンラインスクールなど、教育にいろいろな形態があるため、「不登校」という概念もないのですが、これらは、市民が自分たちに必要だと感じて、学校をつくる権利を行使した結果、各地で生み出されたものなのです。

 日本では、画一的な教育を受けなければという強迫観念がまだ強いですが、当社としては外部組織との連携も積極的に進め、今後もオルタナティブな教育機会を拡げていきます。

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