【セミナーご案内】『社会事業家100人インタビュー』第11回(1/10)に開催!!

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◆先輩事業家のビジネスモデルをちゃんと理解し、ちゃんと学ぶ!
 社会事業家100人インタビュー 第11回
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施設の外にあるニーズを掴み、地域密着で当事者に寄り添う
障碍者福祉分野でのビジネスモデルのつくりかた  

ゲスト:戸枝陽基さん
(特定非営利活動法人ふわり理事長、社会福祉法人むそう理事長)
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2013年1月10日(木)19:00~21:00
@ ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット(渋谷)
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一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)、
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 、
そして今回は特定非営利活動法人ETIC.の協働事業として開催する、
先輩社会事業家からビジネスモデルを学ぶための本企画。
今回は障碍者福祉の分野でのビジネスモデルづくりを学びます。

「どんな生きにくさを抱えていても 住みたい場所で 
愛する人と ずっとふつうの暮らしを続けることができる街づくり」
を目指して愛知県半田市で障碍者支援を続けてこられた戸枝さん。

地域に住む、障碍を持つ当事者とその家族とともに、
グループホーム、就労支援、ケアホーム等、障碍者一人ひとりの人生に
よりそったサービスを提供。福祉施設の外にある、暮らしそのものを支える
サービスを作りだしてきました。

既存の制度の外にあるニーズをどうつかみ、
どうやって経済的にも自立したサービスを開発してきたのか。
福祉の分野でビジネスモデルをどう作るのか。

特定非営利活動法人ふわり理事長、社会福祉法人むそう理事長の
戸枝陽基さんに学びます。


** こんな人たちが対象です **
・「新規事業の発案から実現までのプロセス」を学びたい!
・福祉の分野でのビジネス展開を考えている
・地域福祉について学びたい
・経営者としての心構えを知りたい
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● 講師:戸枝陽基さん
特定非営利活動法人ふわり理事長、
 社会福祉法人むそう理事長)
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1968年10月15日 群馬県太田市生まれ。日本福祉大学卒業。
卒業後、障害者施設で7年間勤務。重症心身障害や自閉症、精神障害の方などと関わる。
退職後、1年間の準備期間を経て、1999年「生活支援サービスふわり」運営開始。
翌2000年に特定非営利活動法人ふわりを設立。
2003年社会福祉法人むそう認可・設立。
現在は、(特)ふわり並びに(社福)むそう 理事長。
(社福)全日本手をつなぐ育成会理事なども務める。

特定非営利活動法人ふわり http://fuwari.tv/
社会福祉法人むそう http://www.musou03.org/index.php
戸枝さんブログ http://hiromoto.seesaa.net/

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● 開催概要
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日時:2013年1月10日(木)19:00~21:00

場所:ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット(渋谷)
   
定員:約30名

参加費:
 SBN会員: 1,500円
 SBN非会員: 2,500円

※うち500円は、ゲストの指定する寄付先に寄付させていただきます。
 (参加費は当日、受付にて徴収させていただきます)
※同日にSBN会員申込していただくと、会員価格でご参加できます。

対象:
社会事業家として事業を始めている方、これから始めようとされている方
ビジネスモデルの作り方を先輩社会事業家から学びたい方

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● プログラム
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◇ ゲストのご紹介、趣旨説明
◇ ゲストご自身からビジネスモデルの紹介
◇ インタビュー
  インタビュアー:ソーシャルビジネスネットワーク理事、  
  IIHOE代表者 川北秀人氏
◇ 参加者からの質疑応答

・参加者からの質疑応答の時間を設けますので、
 ご参加いただく方は1人1回はご質問ください。

・ゲストの事業についてご理解いただくために、事前資料をお送りします。
(参加申込いただいた方にご連絡します。)

・希望者の方は終了後に1時間程度懇親会にご参加いただけます。
(同会場にて。1500円程度予定)
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● 申込みについて
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下記URLのフォーマットに記入の上、1月9日(水)までにお送りください。
定員になり次第、締切らせていただきますので、お早目にお申込みください。

http://goo.gl/skWyL

※開けない場合は、メールにて、お名前、ご所属、ご連絡先(eメール、電話番号)、
ご住所(市町村まで)、SBN会員有無、懇親会参加可否 を書いてお送りください。
送付先 hoshino.iihoe@gmail.com

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【お問い合わせ先】
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 IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 担当:星野
 hoshino.iihoe@gmail.com 070-6971-3523

※本事業はSBN理事を務めるIIHOE川北と、SBNとの協働事業のため、申込対応業務をIIHOEにて担当しています。
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【レポート】『社会事業家100人インタビュー』株式会社PEER 代表取締役社長 佐藤真琴氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

第9回『社会事業家100人インタビュー』

 

ゲスト:佐藤真琴さん
株式会社
PEER 代表取締役社長
一般社団法人ピア
理事長

 プロフィール

浜松市生まれ。米国留学、広告代理店勤務を経て、25歳で看護学校入学。
在学中の白血病患者さんとの出会いから、2003年、低価格で良質なウイッグを生産するため起業。
06年には、カットだけでなくどう治療期間を過ごすのかを一緒に考える
専門美容室「ヘアサプライ ピア」開業。
現実解決策を通じて、がん患者など治療を続ける当事者・まわり・支える医療スタッフに貢献し、
がんになっても安心して暮らせる地域支援をソーシャルビジネスとして行う。さらに地域課題に踏み込むために、09年に(般社)ピア設立。平成20年度静岡県男女共同参画社会づくり活動に関する知事褒賞(チャレンジの部)、
日経ウーマンオブザイヤー09キャリアクリエイト部門第5位受賞。経産省ソーシャルビジネス55選に選出。東海若手起業塾1期生。

 

<今回のインタビューのポイント>(川北)

最近、社会起業家をめざす人の多くが「売れる商品・サービスを開発するにはどうすればよいか」と考えるようだ。しかし、それを利用する人が、どんな人たちかを熟知していなければ、どんなに営業しても届かず、その結果、「市場がなかった」と言い訳することになる。

佐藤氏は、起業から現在まで、「患者さんの困りごとを減らす」というゴールにブレがない。当事者の声を丁寧に聞き、患者さんやその家族に喜んでもらえるものをいかに早く届けられるか考え続け、地域資源を活用しつつ拡げていく解決のしくみづくりを、ぜひ参考にしてほしい。

 

患者さんの困りごとを減らし、生活の質(QOL)を上げるために

(株)PEER(以下ピア)起業のきっかけは、看護学校2年生の時、白血病の患者さんに出会ったことです。

それまで授業で習ってきたような「患者総体」ではなく、患者さんはさまざまな事情や背景を持ち、困りごとや悩みを抱えている「一人の人」であると気付きました。たとえば、抗がん剤投与などで脱毛が始まった患者さんから看護師が相談を受けたとき、「患者さん用のかつらや帽子が販売されているようですよ」という情報提供だけでは、ベッドの上の患者さんは買えません。いくらくらい必要なのか、どこで入手できるのか、どの程度時間がかかるのかなどの実際的な疑問を解消し、個別のニーズにきめ細かく応えるサービスが必要だと気付いたのです。

そこで、人毛ウイッグ(かつら)を中国から低価格で輸入し、ヤフー・オークションで販売するところから始めました。抗がん剤治療のためのかつらは、平均して1年から1年半ほどの間必要です。主婦がためらいなく購入できる価格はいくらだろうかと考え、友だち10人にヒアリングし、その友だちの友だち各10人にさらにヒアリングを依頼した結果、「月3,000円~4,000円」であることがわかりました。1年なら冬物コートを買うのと同じくらいです。そこで、ウイッグの価格は4~5万円に収まるよう設定しました。ネット販売を続けるうちに、「やはり話を聞いて、見てから買いたい」という声が多くなったためオフィスを借り、その後、個室美容室で提供する事業をスタートしました。

患者さんが外見を変えずに生活できるようお手伝いすることは、つらい治療に前向きに臨むための後方支援です。そのため、かつら購入後のパーマなどのメンテナンスも比較的低価格で行っています。人毛ウイッグは退色してしまうのでカラリングは必須です。たとえば、学生の場合は校則で黒髪と規定されている学校がほとんどですし、お子さんの結婚式のために和装のセットをしてほしいというご希望もあります。また、いったん脱毛して生え変わるとくせ毛になるため、白髪やくせ毛とウイッグのバランスを取りながら、生えそろうまでの手入れが必要なのです。

 

ニーズに寄り添い、しくみにして拡げる

ガンの場合、治療に伴う身体や生活の変化は突然降りかかるので、患者さんの不安や悩みも大きく、精神状態も揺れた状態で来店されます。まずお話をよく聞き、病気がなければ続いていたはずの「いつものくらし」に近づけるように、情報提供も含め、総合的なお手伝いをします。

たとえば、入院日数が制限される昨今、患者さんが交流できる機会は減っています。そこで、「茶話会」を定期的に開催しています。ピアの茶話会に参加した患者さんがとても明るくなると気付いた病院の看護師が見学に来るようにもなりました。

また、個別に相談したいという方には「よろず窓口」を設けています。患者さんには、医療者に直接聞きにくいことや誰に相談したらいいのかわからないことがいろいろあります。そのようなお悩み・お困りごとをお聞きし、適切な窓口やサービスを紹介したり、患者さんの代わりに担当医に連絡したりします。

ピアにとって、「茶話会」や「よろず窓口」は、患者さんの生の声を拾い、事業の改善に生かすための貴重な機会となっています。ネット上のコミュニケーションでは決して生まれない、地道な対話を重ねてきた結果、「接遇セミナー」を年に10本ほど、総合病院から請け負うまでになりました。一人ひとりの患者さんに寄り添い、半歩先を伴走するにはどのように接したらよいかについてお話ししています。

 

地域資源を活用して支援する

患者さんを取り巻く多様な問題を解決するには、病院はもちろん、ご家族やお友だち、会社、地域のお店や施設などの理解と連携が必要です。このような「もともとある地域資源」を活用できれば、コストも下がるわけです。ピアは、患者さんが資源を最大限活用するためにも、家にひきこもらないよう、見た目を変えないお手伝いをし、気持ちをフォローし続けることが大事だと考えています。

浜松の店舗以外で、美容室を現在17か所展開しています。直営ではなく地元の美容室への委託です。年商7億に届く大手企業から家族経営の店舗まで規模はさまざまですが、ピアの信念や目的を理解してくれるところとだけ連携するようにしています。個々の患者さんのニーズは多様であるだけでなく、地域による違いもさまざまで、たとえば「名古屋巻きにしてほしい」、「通勤中、ビル風で飛ばないようにしてほしい」、「夏が暑いから涼しいものを」、「なるべく安いほうがいい」など、地域をよく知っている地元の美容室だからこそお応えできることも多いのです。ピアは、社長・店長や美容師と1カ月ほど話し合いを重ねたうえで、委託が決まれば、地域の病院との関係づくりまでフォローしますが、半年もするとお店側だけで回るようになります。

 

今後も、ピアが患者さんのニーズを代弁して、具体的な解決策を提案して実際にやってみて、他社が参入できるようにする(ことによって拡げる)にはどうすればよいか、日々考え、挑戦し続けます。

 (文責:棟朝)

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』(株)イータウン 代表取締役 斉藤保氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

8『社会事業家100人インタビュー』


 

ゲスト:斉藤 保さん
(株)イータウン 代表取締役

【プロフィール】

1968年富山県生まれ。
趣味はアウトドア(スキー・トレッキング・サイクリング)、写真撮影、ひなたぼっこ、司会

【主な活動・所属団体】
まちづくりフォーラム港南、港南区工業会理事(広報情報部)、
横浜商工会議所 南部支部委員、NPO法人市民セクターよこはま 理事、
くらしまちづくりネットワーク横浜(東日本大震災復興プロジェクト)代表 
横浜市社会福祉審議会:専門分科会委員(2010)
横浜における持続可能な福祉社会の構築に関する検討専門分科会
横浜市地域福祉保健計画策定・推進委員会分科会委員(2010)
財団法人横浜市体育協会総合型地域スポーツクラブ補助金審査委員(2009)
その他 認定NPO法人神奈川子ども未来ファンド運営委員、
よこはまCBsmiles(横浜市コミュニティビジネス支援事業)プロデューサー(2007-2010)、
広域関東圏コミュニティビジネス推進協議会幹事(2008-2009)等
略歴等はこちら:http://www.e-etown.com/profile/profile02.html

 

「まちの事務局」機能を持つコミュニティカフェ

まちづくりは、特別な人たちだけのものじゃない。まちの中でふつうにくらす人にも、まちに関わるきっかけさえあれば、まちはもっと楽しくなる。港南台タウンカフェは、そんな視点から生まれました。

私は1998年に富山県から横浜に引っ越してきて、知らない人ばかりのこのまちの情報をもっと知りたいと思い、地域情報サイトを開設しました。アクセス数も増えて自宅の一室で起業し、まちをもっと知ろうと港南区民会議などに参加したものの、自治会や商店街などとの関係はなかなか持てませんでした。

そんな時、地元の人のネットワーク組織である「まちづくりフォーラム港南」に出逢い、同フォーラムが模索していた、市民活動・ボランティア活動の拠点、交流・交差点づくりに参画することになりました。商店会や自治会、行政も巻き込んだフォーラムやイベントの開催などを積み重ね、横浜市の商店会空き店舗活用の補助なども受けて、2005年に、事務所兼交流拠点である「港南台タウンカフェ」を開設しました。事業計画も予算もない中で、タウンカフェで出会う人たちの中から様々なアイデアが生まれ、ボランティアの力を柱にして、泡のように次々と事業が生まれていきました。カフェの壁を一面の棚にしてブロックに区切り、各ブロックを有料で貸し出す「小箱ショップ」を設置、地元の手作り作家さんたちが思い思いの品を出店し、販売収入の一部はタウンカフェの手数料収入にもなります。このおかげで、タウンカフェは補助金に頼らない運営も実現しています。さらに、商店会の事務や屋外で毎月2回実施するフリーマーケット、「港南台テント村」の受付など、商店会の業務委託も受け、“まちの事務局機能を持つコミュニティカフェ”である「タウンカフェ」が誕生しました。

地域の一員になって、まちの中で汗をかく

タウンカフェを運営する(株)イータウンとしては、カフェ単体では黒字にはなりません。タウンカフェは、NPOや商店会、行政などの“いわば一部の特殊な人たち“と地域に住む“普通の人“を結ぶための重要なツールであり、ミッションを具現化するための基地です。しかし、カフェとしての運営だけが全てではありません。大切なのは、まちのコーディネーターとして、自分たちがまちで一緒に汗をかくことです。

例えば、自分自身がレポーターとなって、まちやコト、人を知って伝える役割を担うこと。地域情報サイトe-townの運営は、残念ながら安定的な収益源にまでは至りませんでしたが、ここで集めた情報が他の事業で非常に役立つことになりました。また、区民会議をはじめ、まちづくりフォーラム港南や港南区工業会などの地元組織の一員になって、一緒に考え汗をかくこと。お金にはなりませんが、そこで得る情報や信頼関係はその後のタウンカフェの原点になっています。

さらに、食いつなぐための事業として、デザインの仕事もしてきました。自分自身の想いの9割は地域情報の発信にありましたが、でもそこで収益をあげるモデルがなかなか確立しなかったため、企業のホームページ作成など、開業当時の財源の9割はデザインの仕事でした。今もデザインの仕事は続けていますが、開業当時にはどこからでも受注していたものの、やがて地域やNPO、コミュニティビジネスなどになんらかのつながりのある業種や対象へとシフトしてきました。

今では、これらのノウハウを全て活用して、様々な地域のまちづくりのお手伝いをしています。例えば東京の広尾商店街のマップ製作。単にマップをつくるだけではなく、地元の大学や写真家、住民を巻き込んでの企画チームづくりから取材レポートの実施まで、マップづくりそのものをまちぐるみで実施するお手伝いをしています。さらに東日本大震災の被災地での復興食堂での物販の支援も、小箱ショップ等のしくみを使いながら、地元の特産品や住民のグループの方々とのつなぎ機能をつくるお手伝いを始めています。

自分たちのノウハウを売って、経済的な自立性を高める

こうして地域で汗をかきながら、地道に(株)イータウンとしての基本的なノウハウを築き、地域で顔の見える顧客との関係を少しずつ増やしていきました。今ではイータウン代表の私の人件費を除けば、タウンカフェ単体でも収支が成り立つようになってきました。

港南台エリアの手作り作家さんたちからいただく、小箱ショップの毎月の利用料(スペースの大きさに応じて2500円~6000円/月)と販売手数料が貴重な固定費収入となっているだけでなく、オーナーさんたちの交流の場から出たアイデアがタウンカフェの事業に発展するなど、地域の一員として一緒に事業を実施する関係ができてきました。

また、商店会からは年間契約で事務局委託を受けて日常的な窓口業務、事務、また港南台テント村の企画運営を引き受け、情報誌「ふ~のん」の企画・配布も担っています。行政からも、港南区民活動支援センターのブランチとして認定され、区民活動支援の役割を担っています。対象ごとに契約を結んでビジネスとしての関係を保ち、イータウンの持つノウハウを提供する。もちろん対価として委託費や手数料をいただくわけですから、サービス業としてのクオリティも問われます。また、自分たちが中心になるのではなく、まちの中の人同士をちゃんとつなげていくこと。そうやってノウハウを活かしてまちのファンを増やし、自分たちの経済的な自立性も高める。少しずつ、そういうモデルが見えてきました。

今では横浜市や経済産業省などの事業を通じて、コミュニティカフェとしてのノウハウそのものを他地域に伝え、支援する事業も実施していますが、根本はやはりここ港南台での事業。顔の見える地元の事業者や企業が仲間であり顧客となってくださった結果です。地元の人と契約関係を結ぶということには、厳しい面も色々とありますが、みんなで一緒になってまちづくりをするということはやっぱり楽しい!商店会や自治会、地域住民との協力関係でまちづくりを一緒に考える、そしてまちの人同士をちゃんとつなげていくこと。そういう「地域の一員」としての立ち位置を忘れないでいようと思います。

 

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』うらほろスタイル推進地域協議会 会長 近江正隆氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

7『社会事業家100人インタビュー』

 


ゲスト:近江正隆さん 

うらほろスタイル推進地域協議会 会長
(特)食の絆を育む会
 理事長

(株)ノースプロダクション
 代表取締役

 

【プロフィール】

1970年東京目黒生まれ。
都立戸山高校卒、海員学校を経て、1989年北海道十勝に単身移住。
酪農業を経験後、21歳で漁業に従事。
1999年より、自作の加工場で水産加工を開業、インターネットで販路を開拓する。
2006年地域活性を目的としたNPO法人日本のうらほろを設立し、理事長に就任。
2008年5月に漁師及び水産加工業、ネット販売業を辞め、企画会社(株)ノースプロダクションを設立。
現在、うらほろスタイル推進地域協議会会長、浦幌町総合振興計画審議会委員、北海道地域づくりアドバイザーなどを務める。


自分を拾ってくれた町への恩返しがしたい

19歳の時、漁師になりたくて北海道を訪ね、「雇ってもらえませんか」とお願いしながら太平洋側の漁港を、釧路から小樽まで歩きました。その時に唯一、許してくれたのが浦幌町厚内漁港の老漁師でした。正確に言えば、所持金も底をついていたので、もうその方にお願いするしかないと、すがりついたようなものです。

その後、漁師をしながら、自ら「食べ手」へ商品を届けようと加工業に乗り出し、ネット販売を開始。「漁師の本ししゃも」と名付けた商品が、楽天の年間ランキングの魚部門で1位を獲得するほどになりました。それなりに手応えを感じていた時、船の転覆事故に遭いましたが、仲間に助けられて九死に一生を得ます。当時は自分だけが儲かっていて、周りの漁師たちは面白く思っていないはずなのに、その人たちに自分は助けられた。その時、自分を拾ってくれたこの町に対して、自分はまだ何もできていない、と思ったのです。なんとか恩返しがしたくて、それまでやっていた加工業も漁師も全て辞め、自分に何ができるかを考えるようになりました。

浦幌町には自然に育まれた資源がたくさんあり、生産物の本当の価値や心豊かな生活を感じられるすばらしい環境がある。でも町の人の多くは、その価値に気付いていない。そこで、自分が浦幌町から学んだことを表現し、地域が元気になるためのきっかけを作ることはできないかと考えました。


子どもを軸にすれば地域はまとまる

他の多くの農山漁村と同じように、浦幌町にも、生産者の高齢化や、若い世代の町外への流出など、地域の人材がその土地に根付かないという問題があります。同じ浦幌町内でも、市街地に住む子どもたちは、農林漁業に触れないで育つことが多い。加えて、浦幌町内には高校がないため、中学校を卒業すると他の地域に通うことになります。

そこで、学校の先生へのアンケートを実施して出された意見をもとに、地域への愛着を育む事業を学校中心で展開することにしました。

農林漁業者訪問や販売体験、浦幌の名所を巡るバスツアーなど、地域や関係団体が協力して学校が主体的にカリキュラムをつくり、学校の授業の中で町の魅力を発見していきます。そのプロジェクトを進めるために、浦幌町と浦幌町教育委員会、民間ボランティア団体「日本のうらほろ」で「うらほろスタイル推進地域協議会」を発足させました。

このプロジェクトを通じて町の魅力に気づいた子どもたちには、「まちを元気にしたい」という地域貢献への意識が芽生えます。「まちが元気になるには、どんなことが考えられる?」と子どもたちに問いかけ、子どもたちから町に、様々なアイデアを出してもらいます。その発表の場には町長も出席し、子どもたちの想いのつまった考えを、大人たちの手で実現していくのです。

こうしてこれまでに実現したものの中には、浦幌町の新キャラクター、「うらは」と「ほろま」や、浦幌町最大の祭り「みのり祭り」での子どもの遊び場づくりなどがあります。

子どもたちの地域への愛着を育み、子どもたちが考えた企画等を実現することを通じて、大人たちも地域の魅力に気づき、協力し合って新たな取り組みが生まれていくのです。

さらにこれからは、地域に貢献したい、地域で働きたいと思ってくれる卒業生たちに対して、町の中での魅力ある就職の場づくりが必要です。どんな産業が浦幌に適しているのか、そこで雇用を生むためには何をすべきか、子どもたちの地域貢献への意識を育んできた大人たちの責任として、町全体で雇用の場づくりにこれから取り組んでいかなければなりません。

 

農家が主体になって「食の絆」を伝える

日本の食糧自給率は約40%。東京は1%、大阪は2%ですが、浦幌町は2900%です。都会の人には、食糧を農山漁村に委ねているという理解をもっとしてほしい。農山漁村が活性化しなければ、都市もたちゆかなくなる。そのことを、実体験を通じて理解してもらいたくて、都会の子どもたちに対して、主に修学旅行の受け入れを通じて農林漁家での生活体験をする、農村ホームステイを実施しています。岐阜県とほぼ同じ面積の広さを持つ十勝管内16市町村で構成する「食の絆を育む会」には、地域ごとの農林漁家で地域組織が構成され、現在では計400戸の農林漁家がホームステイに協力し、毎年約2000人を受け入れています。

 収穫を手伝い、共に夕食を準備し、朝の農作業を手伝う。特別なことは何もしません。でもそれぞれの農家さん自身が、都会の子どもたちに伝えたいことを持っている。実体験を通じてその想いが伝わり、つながりを感じられることで、農村と都市がつながり、都市の子どもたちにも、食を守り続けることの意味を理解してもらいたいのです。

さらに、来てもらって体験するだけでなく、学校に戻ってからも、産地から材料を送り、家庭科の授業で調理実習をするなど、送り出した学校の先生方と共に事後学習を促しています。食べ物の大切さを伝える、その入り口として体験がある。そういう食育のしくみを十勝でつくっていこうと、農家さんたちの組織である「食の絆を育む会」と、十勝の町村役場職員とともに動いています。

 軸にあるべきは自分ではなく、地域

 こうした取り組みができたのは、地域の先生たちや農林漁家さん自身に、「子どもたちに伝えたいこと」があるから。私はそれを引き出し、背中を押すだけ。外から移り住んだ自分だからこそ気付ける、できる役割がそこにはあります。外からは見えない役割で、正直、これまでは持ち出しも多かった。でもようやく実績があがり、農家さんたちからも理解され、「手数料を取れ」と言ってもらえるようになりました。

軸にあるべきは自分じゃない、地域なんです。自分を軸にした瞬間、その人の事業になってしまう。関わってくれるみんながその取組みを自分事として感じてもらえるように演出する。それが、自分を拾ってくれた浦幌町、そして十勝への恩返しであり、社会の中で生きる自分に与えられた役割なんだと思っています。

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