【レポート】社会事業家100人インタビュー (特)やまがた育児サークルランド 代表  野口比呂美氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」
第35回社会事業家100人インタビュー

子育て期を「お母さんのキャリアのブランク」にしない

2014年11月25日(火)18時~20時
於:山形市男女共同参画センター 5 階

ゲスト:野口比呂美様 (特)やまがた育児サークルランド 代表

野口様③


<プロフィール>

特定非営利活動法人やまがた育児サークルランド 代表
特定非営利活動法人子育てひろば全国連絡協議会 副理事長
1998 年、それぞれ独立して活動していた育児サークルのネットワークを作るための団体を山形県内で設立。
山形市内の子育て支援施設「子育てランドあ~べ」の運営等を経て、1999 年法人化。
育児サークル支援や保育サービス、育児情報の提供、子育て中の人の人材育成、子育て分野の調査・研究、行政への提言等の活動を行っている。
 
<今回のインタビューのポイント>(川北)
子育て支援という考え方が一般的でなかった16年前(1998年)から、保育所の整備だけではなく、お母さん同士が助け合い、つながりあうための場所が必要、と「やまがた育児サークルランド」を発足させた。
今では多くの地域にみられるようになった子育て支援施設や子育てひろば。
しかしそれは、「こんなサービスが欲しい」と自ら提案し、自分たちでつくり、その声を政策づくりにも反映させてきた母や父たちがいたからこそできたこと。
当事者としての活動をどのように立ち上げ、公益活動に進化させてきたのか。子育てひろば全国連絡協議会副理事長として「子育てひろば」の普及、人材育成にも取り組む野口さんに学んで欲しい。
 
子育て中の母親が求めることを先輩お母さんがサポート
 
少子化や労働力減少を背景に、「女性の活躍を推進するには子育て支援が必要だ」という風潮が高まっています。経済成長に女性の力が必要なのは当然のことで、中央政府も子育て支援施策に力を入れてきています。
私たちが山形市で育児サークルを始めた1990年代は、少子化が社会問題として顕著になってきた頃でした。「1.57ショック」(90年に発表された89年の合計特殊出生率)があり、政府が初めてエンゼルプラン(子育て支援のための総合計画)を策定した時代です。私たちが活動している山形市は人口25万人ですが、年間出生数は2000人を超える程度で推移していて減少傾向であり、やはり少子化の波が押し寄せてきています。
育児サークルとは、昔であれば、身近な子育て経験者に話を聞いたり親戚や兄弟の世話をして学んでいたようなことを、自分たちで学びあおうと子育て中のお母さんが集まってつくる場です。私は、自分の子育て期に、育児サークル同士は意外とヨコのつながりがないということに気づきました。子育て真っ最中の育児サークルのメンバーにはネットワークを作るまでの余力はありません。そこで、子育てがひと段落した先輩お母さんが中心になり、98 年に「やまがた育児サークルランド」を発足しました。サークル運営のノウハウや、情報交換を兼ねた研修会を開くなど、子育てサークルを経験した先輩が、現役のお母さんを支援するネットワークになりました。子どもの一時預かりなどこれまで欲しくてもなかった活動を始めることで、サークル運営リーダー研修を託児付きでできるようにもなりました。
「子育てランドあ~べ」は、山形市の中心市街地に2002年オープンした子育て支援施設です。あ~べというのは、山形弁で「一緒に行こう」という呼びかけです。山形市からの支援には中心市街地の活性化という目的もあるので、「子どもを連れて街に出よう」という意味も込めました。
気軽に立ち寄れる「親子ひろば」では、工作をしたり、おはなし会や絵本の読み聞かせをしたり、安心して遊べるイベントを開催しています。その隣では、「夕暮れ泣きに困っている」、「離乳食はどうしよう」といった子育て中のある時期に特有の悩み事を相談できたり、本やリーフレットなどから情報が得られます。研修室では子育てに関する講座の他、お母さんを対象に仕事への復帰に向けたパソコン講座なども託児付で開催しています。託児ルームでは、公的な基準よりもさらに手厚い保育者を配置した保育サービスを提供しています。
 
子育て真っ最中のお母さんのニーズにもとづき、協働だからできる体制を
 
「子育てランドあ~べ」の構想の元になったのが、私たちが1999年におこなった「山形の育児サークルと子育て環境に関する調査」でした。山形市で開催されるまちづくり市民会議に参加しないかと声がかかり、それでは、国や県が行っている子育て支援が山形市のお母さんたちに合っているのかを調べてみようと思い立ちました。
雪国なので、冬は乳幼児を連れて外に出られません。なんとなく憂鬱な気分になる「ウインターブルー」は引っ越したり嫁いできて慣れていない人にとっては深刻です。「冬は外で子どもを遊ばせることができない」、「転勤で山形市に来たため、子育てについて話をきける人がいない」などの声を元に、山形市の子育て支援センターに対して政策提言したのです。しかし、当時、行政の子育て支援は始まったばかりだったため、取り上げてもらうことはできませんでした。
ところが、2000年に大型百貨店が撤退した後の空きビルに、山形市が公共サービスを提供する場として再オープンしたいと検討を始めたときに、私たちの提言が市の担当者の目にとまりました。「子どもランド」を作りたいという当初の市の案に対して、私たちは調査に基づいて、子育て真っ最中のお母さんたちが求めているのは悩み事を相談できたり、託児付きで学ぶことができる子育て支援なのだと訴えて、意見をすり合わせました。私たちがお母さんたちに呼びかけてできることと、市にやってもらいたいことを分けて、行政資金でやってもらいたいことを具体的に提案しました。
その結果、開館当時から現在まで、あ~べでは、私たちが提案した内容をもとに運営を行っています。例えば、02年当時はまだ子どもを預けることへの風当たりは大きかったのですが、短時間でも安心して子どもを預けたいという切実なニーズがありました。行政施設の一時預かりでは、預ける理由を申告しなければなりませんが、あ~べでは、お母さんの買い物やリフレッシュ目的でも気軽に利用できるようにしました。利用料金も、払える金額をアンケートで調べて、1時間500円に決めました。収支は赤字になりますが、市と交渉して実現しました。研修を積んだ有償ボランティアの活動により、質の高い保育を提供しています。また、先輩お母さんが数多く登録しているため、ニーズに柔軟に対応することができています。
あ~べの事業は、行政からの支援のない頃から「やまがた育児サークルランド」で独自に行っていた事業がほとんどですが、アンケートで要望の多かった親子ひろばのような広い親子の居場所は、行政との連携だからこそ設けることができました。また、専門家による講座をゆったりと遊ぶスペースの中で開催しているため、ふらりと立ち寄るお母さん達にも講座を聴いてもらえるようになりました。やまがた育児サークルランド
困りごとは何か、困っている人は誰か
 
あ~べを始めて気がついたのは、子育てサークルのお母さんたちは真面目でしっかりしたお母さんだ、ということです。でも現実には、自分たちでサークル活動をしたり子どもをつれて公民館に講座を聴きに自ら出かけて来るようなお母さんたちばかりではないのです。地域にはあ~べにも来れないお母さんもいるのだということを考えました。そこで、やまがた育児サークルランドでは、お母さんのおうちに出向いていく、先輩ママの家庭訪問ボランティア事業を始めました。
ボランティアで家庭を訪問したい人は所定の養成講座を修了し登録してもらいます。家庭訪問を受けたい人は、無料で1回2時間程度の訪問を原則4回程度まで受けることができます。一緒に家事をしたり、子連れでお出かけをしてみたり、最終回までには、あーべのような場所に親子で行けるようにサポートします。子どものいない人には想像がつかないかもしれませんが、初めての場所に子連れで参加することをすごく不安に思うお母さんも多いのです。ボランティアさんが一緒に行ってくれることで、親子が引きこもりにならずに済みます。最近では専門家や研究者の方から、児童虐待の予防に大きな役割を果たしていると評価されるようになりました。
アンケートから、多くのお母さんが親になる前に子どもと触れ合ったことがないこともわかりましたので、高校生のパパママ体験事業をしたり、山形大学から学生の保育体験研修や実習を受け入れています。そのつながりもあって、山形大学のキャンパスに事業所内保育所の運営を受託することにもなりました。
女性の自立支援は事業開始当初からの重要なテーマです。私たちの願いは、子育て期を女性の職業生活のブランクにして欲しくないということ。子育て中はそれまでしてきた仕事は犠牲になりがちなので、子育て中も学び、得られた経験を自分のキャリアにして欲しいのです。子どもを保育園に預けて仕事をフルタイムで継続しているお母さんもいますが、その場合は子育てで味わえる貴重な経験を犠牲にしながら働いているように見受けられます。お母さんたちがそんな思いをしなくても済むように、ワークライフバランスやお父さんの育児参画の推進にも取り組んでいます。
やまがた育児サークルランドの活動は、ボランティアでも子育て支援を続けたいという人に支えられてきました。そのため、活動を続ける人がステップアップできるよう多様な研修を整備し、より専門的に保育を仕事にしたい人には保育士資格受験のための集まりなども開いています。保育士として再就職したり、自分で団体を立ち上げたり、管理職として活躍する人たちも出てきました。このように子育て支援に関わる人材育成に取り組んできた経験を生かして、現在、国が推進している子育て支援員を養成しようという制度を活用していきたいと思っています。
また、従来からある子育ての専門家といえば、保育士などごく限られたものでした。「子育て支援」という新たな専門性を確立するためにも、(特)子育てひろば全国連絡協議会を、全国の実践者とともに設立しました。全国的な横のつながりの中で、情報交換したり、子育て支援スタッフの認定制度を開発したりしています。
振り返ると、自分たちが必要だと思ってやってきたことが、少子化対策と相乗効果を生み出して仲間を増やし、つながりを増やしながら社会に必要なインフラとして機能してきたのだなあと、感じています。

(取材日 2014年11月25日)

【レポート】社会事業家100人インタビュー 有限会社エコカレッジ 代表取締役  尾野寛明氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」
第36回社会事業家100人インタビュー

2015年1月8日(木) 19時~21時
於:(特)ETIC. ソーシャルベンチャー・ハビタット

ゲスト:尾野寛明様 有限会社エコカレッジ 代表取締役

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<プロフィール>
1982年生まれ。学生時代に起業を志し、2001年に東京都文京区でネット古書店を創業し、2006年には本社をまるごと島根県邑智郡川本町に移転。過疎地のネット古書店として障がい者雇用にも取り組む。また、毎週末全国8カ所で、地域づくりの「実践塾」を運営し、どんな人でも空き時間で気軽に無理なく地域に参加できるしくみづくりを進めている。
【有限会社エコカレッジ】
住所:島根県邑智郡川本町大字川本529番地1/資本金:300万円/社員:4名/事業内容:インターネットを通じた中古専門書買取販売/事業免許:古物商許可 島根県公安委員会 第711119000335号/蔵書量:15万冊
【合同会社エコカレッジ】
住所:島根県雲南市木次町湯村876番地/設立:2014年5月/代表:尾野寛明(代表社員)/資本金:100万円/社員:13名(職員4名+利用者9名)/事業免許:島根県障害福祉サービス事業者指定第3211400225号 ※福祉専門に設立された法人で、有限会社エコカレッジの100%子会社
【その他の主な役職】(特)てごねっと石見 副理事長、(特)おっちラボ 副理事長、(特)農家のこせがれネットワーク/監事、総務省 地域力創造アドバイザー
 
<今回のインタビューのポイント>(川北)
カリスマが率いる地域づくりには、持続可能性がなく、他地域への応用もきかない。地域も、そのリーダーも、絶対的な存在ではなく、むしろ相対化して、特性が共通する地域の先進事例から学び、応用すべきだ。川本町での実践を、それぞれの地域特性に合わせて進化・適応させながら他の地域にも展開し続ける、尾野さんの取り組みからヒントを得てほしい。
 
古本好きではないのに、古本屋経営?
私の起業への思いは、高校生の時、父親が亡くなったことから生まれました。大企業でシステム統括部長をつとめていて2000年問題で激務に追われたため、がんの発見が遅れたのが原因でした。「こんなことになるなら、人に使われる立場ではなく、最初から社長になる!」と決意したのです。
古本屋で起業、というと、「本好きが高じて、蔵書の販売を始めた」とか「古本屋めぐりが好きで、自分でお店をやってみたくなった」というような動機がほとんどだと思いますが、私の場合はまったく違って、ビジネスの種としての古本への純粋な興味から始まりました。
大学生の時、授業で必要な教科書があまりに高価なので、キャンパス内で不要な教科書を学生から買い取り、販売する教科書リサイクルの団体を立ち上げたところ、なかなか反応がよく、本格的にビジネスとして進めてみようという意欲がわきました。そこで、当時大学の先輩が学生店長をしていたブックオフ目白駅前店で「押しかけインターン」として、古本について集中的に勉強しました。また、他大学のキャンパスでもゲリラ的に教科書買い取り・販売してみた結果、全国に、教科書だけでなく、大学の先生が必要とするような中古専門書のニーズがあることがわかってきました。古本屋は仕入れが命です。先輩から譲りうけたボックスカーで全国のブックオフ700店舗を回り、100円コーナーにある専門書を約1万冊仕入れました。当時はamazon.comがなかったので、楽天オークションの前身「Easyseek」でネット出品するなど、古本仕入れと販売に関する勉強と実践を並行して進め、資金がある程度たまったので有限会社にしました。文京区の白山通りに店舗兼倉庫を構えたのですが、家賃が高く、事業の継続に限界を感じたため、辞めるつもりで大学院へ進学しました。
 
過疎地で古本屋、という発想の転換
大学院では、地域振興をテーマとするゼミに所属し、研究の一環として、島根県邑智郡川本町を訪れる機会がありました。典型的な中山間地域の過疎の町で、商店街にあった書店も閉店していました。「私はインターネット通販で古本屋をやっているんです」と言ったら、「ぜひこの店舗を使ってやってくれないか」と。本屋だけはなんとか再生したいという地元の人の強い思いに押されるように、会社を移転したのです。
街なかの新刊書店も続々と潰れていく世の中で、過疎地で古本屋が成り立つわけがない、と普通は思いますが、過疎地の特徴を逆手にとると、メリットもたくさんあります。家賃は東京の100分の1。おかげで15万冊以上収容可能な700坪のスペース(元ミシン工場)を借りられました。年間を通して風が吹く地形のせいか、この倉庫の温度と湿度は本の保管に最適です。中古の専門書は、安く仕入れてもその価値が高まるまで長期間保管し、1冊平均1,000円で販売しています。これは通常のネット通販古書店の平均単価に比べ倍とされています。
以前は、専門書を買い取ってくれる古書店は珍しかったため、ブックオフなどで買い取りを断られた人から続々と連絡が入りました。その後、専門書の買い取りが普及してくると、次に考えたしくみは「ネットで見積もり」です。わざわざ問い合わせなくても、書籍のバーコードの数字を入力すると、すぐに買い取り価格がわかるようにしました。
直接の通販だけでなくamazon.comでも販売しており、実はこちらが売上の8割を占めます。通販にとってありがたいのは、ゆうパックや宅配便が、過疎地であっても集荷・配達に来てくれることです。
 
古本を活用した地域貢献のかたち
地元の人たちから、気軽に本を読めるスペースが近くにないことを聞いていたので、何か貢献できないかと考え、雲南市木次町の公共施設の喫茶スペースに、文庫本などの閲覧コーナーを寄付しました。設置以後、喫茶の売り上げが1~2%上がったそうです。また、益田市美都町の酒屋内のコミュニティ・スペースで月2回開催されている健康づくり講座では、古本を無償貸出しています。一般的に、男性はこのような講座にはなかなか参加しないものですが、本を目当てに参加する人が増えてきたそうです。このように、古本はコミュニティを活性化するツールとしても、役立つのです。
また、古本の仕入れ、振込・入金管理、登録、棚の整理・掃除、受注、梱包、発送という一連の流れで発生する業務には、いろいろな負荷の程度や種類があり、障がいを持つ方々にも取り組みやすい業務です。09年から雇用を開始していましたが、14年5月に島根県から就労継続支援A型事業所(注)として認可されました。古本関連業務だけでなく、地域の豊かな資源を活用して、干し柿づくり、とうがらし栽培、築100年の古民家メンテナンスなども手掛け、一人ひとりの障がい特性に合った業務のアレンジができるよう、心がけています。
(注)参考:http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/c078-p02-02-Shogai-21.html
 
仕事を自ら創出できる人を過疎地に呼ぶためのしくみづくり
過疎対策として、定住促進の取り組みは全国各地で行われていますが、空き家の紹介はできても、その地に仕事がなければ、特に若い世代にとっては住み続けることはできません。そこで、働き場や仕事を自ら創出できる人材を地方に誘致するための取り組みも進めています。
江津市では、(特)てごねっと石見が事務局となり、賞金100万円のビジネスプランを公募したところ、それまでの地道な人材交流の取り組みによって培われたネットワークのおかげで、30人から応募があり(「江津市ビジネスプランコンテストGo-Con」)、駅前の空き店舗が埋まるなど、大きな成果がありました。その後、全国各地で同じようなコンテストが開催されましたが、応募が少なく、ことごとく失敗に終わりました。
このことで、地域で人材育成のしくみづくりからやらないとだめだ、と気づき、「地域づくり実践塾」を、島根県雲南市・江津市を皮切りに、川本町、岡山県津山市・笠岡市、宮城仙南地域、石川県七尾市、香川県高松市でも始めました。会社を辞めずに地域で半年間学んで、ビジネスプランをプレゼンテーションできるようにまでするプログラムです。塾を続けていくと、OB・OGのネットワークから、外部への情報発信が活発になり、「あそこに行くとおもしろそうだ」と感じさせる求心力や競争意識が生まれるのです。私も、「この人とあの人はつながるべきだ」と思ったら、丁寧に責任もってマッチングするよう心がけています。
ただし、外から優秀な人材が入ってきても、地元の人たちとの関係づくりがうまくいかなければ意味がないので、特に地元の若い人たちには、外部から入ってきた人と住民との間に立って、通訳として活躍してほしいと思います。雲南市の(特)おっちラボは、若者と地域の活動を支援するため、市が主催する次世代育成事業「幸雲南塾~地域プロデューサー育成講座~」の塾生が中心となり、2014年4月にスタートしました。こういった拠点があると、外部からアクセスしやすいし、地域との融合もスムーズに進んでいきます。
無題
 
地方と都会 の「二地域居住」のバランス
私は、東京と島根を1週間おきに行き来する「二地域居住」 中です。また前述の通り、塾などで出張も多い毎日ですが、アドバイスするだけのコンサルタント的立ち位置ではなく、川本町に本社を置き、事業を継続している実践者であることが強みだと思っています。古本屋の日常業務については、地元で雇用した女性5名が中心となって、話し合って決めてくれています。私はもともと人に任せるのが苦手で、何でも自分でやってしまうタイプなので、不在がちのほうが、かえっていいのかもしれません。
地域づくりのコーディネートは、行政のことも地域のことも外部のことも知らないと、うまく進みません。行政に近い立ち位置で積極的に仕事をしてみると、行政のことがよくわかってきます。時になだめ役にまわり、共感し、それぞれの得意なところを引き出し、成果を生み出していくのです。私は、全国各地に地域づくりの手法を横展開しつつ、誰でもどんな地域でも応用可能なモデルを編み出したいと考えています。
都会から地方へ飛び込むのはとても勇気がいることです。この地域でやっていけるという確信が持てるまでは、逆に言えば、地方からお呼びがかかるまでは、仕事は辞めないほうがいいとアドバイスしています。都会の生活とかけもちで土日は地方へ行くような、「ダラダラ起業」スタイルもありです。
「プロフェッショナルになるまではおおよそ1万時間必要だ」とよく言われます。その内訳を 1日7時間×200日×7年とするのか、1日17時間×300日×2年とするのか、1日3時間×365日×10年とするのかは、人それぞれです。また、ある地域でうまくいかなくても、他の地域だったら大丈夫かもしれません。3~4か所同時並行でやってみるのもひとつの手でしょう。

(文責:棟朝)

『社会事業家100人インタビュー』第37回(2/2)参加者募集:ゲストは「森と風のがっこう」吉成信夫さん!

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社会事業家の先輩にビジネスモデルを学ぶ!
社会事業家100人インタビュー 第37回
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循環型の生活スタイルで、
地域に根ざした自然エネルギーと
農の地産地消を進める「まなび場」づくり

吉成信夫様
(特)岩手子ども環境研究所 理事長
森と風のがっこう
──────────────────────────────────
2月2日(月)19:00~21:00
@ ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット(渋谷)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆
一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 、
特定非営利活動法人ETIC.の協働事業として開催する、
先輩社会事業家からビジネスモデルを学ぶための本企画。
SBN理事・IIHOE代表川北秀人がインタープリターとなり、
直接先輩事業家に学び、質問することができる対話型講座です。
今回は体験施設としては珍しい、地域の子どもを中心としつつ、しかも、
自然・再生可能エネルギーの導入に先駆的に取り組んでいらっしゃる
森と風のがっこう」を運営する、(特)岩手子ども環境研究所 理事長
吉成信夫さんにこれまでのユニークなお取組みと、そのビジネスモデルを学びます。
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● 内容
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森と風のがっこうは、標高 700m、11 世帯の集落にある廃校を再利用したエコスクール。
かつて地域の結節点であった廃校に、都会を含めた新たな人々と地域の子どもたち
がともに、積極的に関わることができる仕組みを生み出して行くことを目的として、
宮澤賢治と環境共生の精神を糧に、2001 年に葛巻町の協力を得て開設されました。
ESD教育・自然エネルギー教育、エコロジカルな生活教育の場として、楽しみなが
ら循環型の暮らしが実感できるハンドメイドの施設づくりを市民協同のスタイルで
進めています。

現在は、隣接する森を製紙会社から借受け、子育てと循環の森の整備を行いながら、
森林環境教育にも注力。
ひきこもりがちな青年たちの長期自然体験キャンプや、子どものための長期自然
エネルギースクール、森と風の学校及び周辺をフィールドとした市町村子ども会
キャンプの企画など、地域の子どもを中心としつつ、県内外の小中学校の省エネ学習
の受け入れや、学校へのエネルギー教育出前授業などにも精力的に取り組んでいます。

「自然エネルギーと地域資源の再利用」、「子どもの居場所づくり」、
「新たな農的暮らし」、「アートと身体」をテーマに、地域の子どもやおとなが元気を
取り戻すための新たなアイデアに満ちた持続可能な地域モデルづくりについて伺います。

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● ゲスト:吉成信夫さん
(特)岩手子ども環境研究所理事長/森と風のがっこう
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プロフィール:
1956年東京都生まれ。成蹊大学法学部卒。
CIコンサルティング会社役員(東京)等を経て、1996年岩手県東山町に 家族と移住。
「石と賢治のミュージアム」(一関市)研究専門員として、企画 構想段階より開館後まで
一貫して事業を推進。
2001年より廃校を再利用して「森と風のがっこう」を葛巻町に開校。
2003年より7年間、岩手県立児童館「いわて子どもの森」(一戸町)初代館長として
精力的な活動を展開した。
現在は、森と風のがっこうコーチョーとして、北欧のライフスタイルと地場のくらし
にまなびながら、過去と未来をつなぐあらたな道を模索している。
「東北は日本の北欧である」がモットー。

国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師。日本エコツーリズムセンター世話人。
環境教育、地域づくり、児童健全育成、子育て支援に関わるワークショップ、講演など多数。
著書に「ハコモノは変えられる!子どものための公共施設改革」(学文社)、
「地域再生のまちづくり・むらづくり」(ぎょうせい)、他がある。

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● 開催概要
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日時:2015年2月2日(月)19:00~21:00

場所:ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット(渋谷)
渋谷区神南1-5-7 APPLE OHMIビル5階

定員:約30名

参加費:
SBN会員: 1,500円
SBN非会員: 2,500円
https://socialbusiness-net.com/guide

※うち500円は、ゲストの指定する寄付先に寄付させていただきます。
(参加費は当日、受付にて徴収させていただきます)

※同日にSBN会員申込していただくと、会員価格でご参加できます。

対象:
社会事業家として事業を始めている方、これから始めようとされている方
ビジネスモデルの作り方を先輩社会事業家から学びたい方

主催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]
協力:特定非営利活動法人ETIC.

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● プログラム
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◇ ゲストのご紹介、趣旨説明
◇ ゲストご自身からビジネスモデルの紹介
◇ インタビュー
インタビュアー:ソーシャルビジネスネットワーク理事、
IIHOE代表者 川北秀人
◇ 参加者からの質疑応答

・参加者からの質疑応答の時間を設けますので、
ご参加いただく方は1人1回はご質問ください。

・ゲストの事業についてご理解いただくために、事前資料をお送りします。
(参加申込いただいた方にご連絡します。)

・希望者の方は終了後に1時間程度懇親会にご参加いただけます。
(同会場にて。2000円程度予定)

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● 申込みについて
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下記URLのフォーマットに記入の上、2月1日(日)までにお送りください。
定員になり次第、締切らせていただきますので、お早目にお申込みください。

http://goo.gl/skWyL

※開けない場合は、メールにて、お名前、ご所属、ご連絡先(eメール、電話番号)、
SBN会員有無、懇親会参加可否 を書いてお送りください。
送付先 hoshino.iihoe@gmail.com

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【お問い合わせ先】
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IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 担当:星野
hoshino.iihoe(a)gmail.com  *(a)を@に直してご送付ください。

※本事業はSBN理事を務めるIIHOE川北と、SBNとの協働事業のため、
申込対応業務をIIHOEにて担当しています。

◇本プロジェクトのfacebookページ
http://www.facebook.com/100JapaneseSocialEntrepreneurs

【開催レポート】第3回みんなの働きたい!応援ゼミナール 「新しい就労と『弱者支援』からの脱却」

「みんなの働きたい!応援ゼミナール」

第3回「新しい就労と『弱者支援』からの脱却」

無題

  • 開催日:2014年10月28日(火)19:00~21:00
  • 会場:SBN事務所
  • ゲストスピーカー:納富順一さん(NPO法人キャリア解放区代表理事)

大学卒業後1年間のニートの後、テレビ局のADを経て人材業界に。新卒、中途、障害者など幅広い分野で人材ビジネスを経験。企業、求職者の目線に立ちづらい人材業界のあり方に違和感を持ち、もっと時代にあった本質的なアプローチを追求するためにキャリア解放区の理事長に就任。

HP: http://career-kaihohku.org

  • 参加人数:14名(スタッフ含)
  • 開催レポート

就労困難者の働き方に関する最新事例をさまざまな角度から考える連続セミナー(全3回)の第3回を開催しました。

今回のゲストスピーカーは、NPO法人キャリア解放区代表理事の納富順一さん。キャリア解放区は2013年9月に設立された若いNPOですが、前例のない「就活アウトロー採用」(http://outlaw.so)というプログラムを展開して注目を集めています。

ここでいうアウトローとは、なにもヤクザな無法者ではありません。新卒一括採用を前提とした「シューカツ」に馴染めず、卒業しても就職の機会を逃している20代の若者のことです。彼らと企業を従来とは違う形でつなぎ、若者には就職までのサポートを、企業には人材紹介を行っているのです。

このプログラムに集まってきた若者の多くは、いまの就活のあり方に違和感を覚えつつも、もやもやした気持ちを抱えたまま行動を起こせないでいるとのこと。趣味や勉強に(!?)熱中するあまり就活しそびれた人や、内定がとれずにやって来る若者もいるそうです。

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そんな若者たちに納富さんは特別な「支援」はしません。新卒採用という仕組みに乗れなかったからといって、かわいそうな「弱者」扱いはしないのです。その代わりにキャリア解放区では、彼らが集まって語り合う「場」を提供し、コミュニティづくりに力を注いでいます。

終身雇用など既存の仕組みが壊れていく中で、何のために働くのか?という素朴な疑問にさえ正解はありません。「一人ひとりが自分で考えるしかない」と納富さんは考えています。だからこそ、スタッフが一方的に支援するのではなく、何度も集まりに参加し、「空気を読まない」関係性を築くことで、参加者同士がエンパワーし合う相互支援を促しているのです。

場が熟してくると、そこに企業の経営者や人事担当者にも入ってもらい、一緒にワイワイとさまざまなテーマで対話を重ねます。企業担当者は最初のうちは社名を名乗りません。「採用する人」「される人」という関係ではなく、あくまで個人と個人の立場で語らうことで、信頼関係を築いてもらうことが肝です。こうしたプロセスを経て、やがて双方の「欲しい人材」と「働きたい会社」が一致すれば晴れて内定!となる仕組みです。

現在プログラムに参加しているのは90名の若者と企業約30社。参加企業の中には、従業員30人のうち10人をアウトロー採用したところもあります。納富さんは、「従来とは毛色の違う人材を採り、異質なものから学ぼうとすれば組織は変わる。そこにこそダイバーシティの意味がある」と言います。いわゆる就労困難者の「困難」は、本人の資質よりもむしろ画一的な就活の仕組みや労働環境にあるのでは?と思えてきます。

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 「就活アウトロー採用」のユニークさとともに、納富さんの「従来とはちがう新しい枠組みを提示したい!」という思いに触発され、質疑応答やディスカッションも盛り上がりました。連続セミナーは今回で一区切りですが、全3回でいただいた刺激を次のステップに生かしていきます!

  • 参加者の声(アンケートより一部抜粋)

弱者支援という文脈への違和感は普段自分も抱いており、その点で納得感がありました。

今まで考えたことのない観点でのお話だったので大変興味深く勉強になりました。

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