丸の内プラチナ大学「Social SHIFTテーブル・コース」2024年 受講者募集を開始しました。

毎回1人の社会的企業家をゲストにお迎えし、未来志向型ビジネスや、新しい生き方・働き方を実践するソーシャル・イノベーターと語り合うことのできる連続講座です。
未来志向型ビジネスや、新しい生き方・働き方を実践するソーシャル・イノベーターと語り合う中で、ライフシフト、ワークシフト、ビジネスシフトのヒントを探ります。
ゲスト講師にゆかりのある地域食材などを使い、3×3Lab Futureのオープンキッチンでつくられた、できたての美味しい食事をとりながら、くつろいだ雰囲気の中での語らいの場です。
少人数で、ゲスト講師を囲んでの展開となります。

9 月 20 日(金)18:30-20:30
100年先もつづく農業のかたちをつくる–ソーシャルベン
チャーとして事業成長を続ける (株)坂ノ途中 執行役員
坂本 洋二さん


11 月 22 日(金)18:30-20:30
「魚が食べられなくなる食糧危機」について、みんなが知
っている状態を創る–NGO代表であり、大学生であり旅
NGOうおゑん 代表 大久保 碧さん


12 月 13 日(金)18:30-20:30
物事を自分ゴトで捉えることができる範囲で、食べる→コ
ンポスト→野菜栽培→食べるの小さな循環をつくる–ロー
カルフードサイクリング(株)
東京事務局 平 希井さん


1月 31 日(金)18:30-20:30
学校が変わる、地域が変わる、子どもが 大人が幸せにな
る–ウェルビーイングに重点を置く教育とは?東京学芸大
学教育インキュベーションセンター
長 教授 金子 嘉宏さん


シラバスはこちらをご覧ください。
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「&SBNセミナー」開催のお知らせ

ソーシャルビジネス黎明期を牽引してきたSBN会員のみなさまとご一緒に、毎回テーマに沿ったゲストをお招きし、これからの日本、世界、次世代のためにできることを考えていく連続セミナーを開催します。詳細はこちらをご覧ください。

「(仮称)Co-Innovation Universityのご紹介」 参加者募集(&SBNセミナー第2回)

SBN会員のみなさまとご一緒に、毎回テーマに沿ったゲストをお招きし、これからの日本、世界、次世代のためにできることを考えていく「&SBNセミナー」。

第2回目は、岐阜県飛騨市で新たな大学「(仮称)Co-Innovation University」の開校に向け準備を進めている井上 博成さん(一般社団法人 CoIU設立基金)をゲストにお招きします。

「(仮称)Co-Innovation University(以下CoIU)」は、理論と実践、対話を通し、持続可能な地域づくりに貢献する「共創」ができる人材の育成を目的としていますが、まさに井上さんは、小水力発電や管理型投資信託などの事業を展開しながら、理論と実践とを日々往復していらっしゃいます。

そんな井上さんが描く人づくりの考え方、大学という事業のあり方についてお話をお聞きします。

みなさまぜひご参加ください。

日時と開催手法

2024年7月11日(木)18:30-20:30 Zoomによるオンライン

講師プロフィール

井上 博成 さん 一般社団法人 CoIU設立基金 代表理事

平成元年(1989年)生まれ。岐阜県高山市出身。東日本大震災をきっかけに地域の新しい価値を感じ、出身地である高山市と京都大学との間で2014年~自然エネルギーに関する研究開始をきっかけに高山市へ戻るようになる。京都大学大学院経済学研究科博士課程研究指導認定退学。主な研究領域としては自然資本と地域金融。自然エネルギーを研究⇔実践する中で、小水力では、飛騨高山小水力発電(株)を設立(2015年)し、そののちも各地に法人を設立しながら全国各地で小水力発電の事業化を行う。木質バイオマスを研究する中でエネルギー利用のみならず、木材そのものの利用に高い関心を持ち、飛騨五木(株)(2015年)の立ち上げや、金融視点から東海地方で当時唯一の管理型信託会社である、すみれ地域信託(株)(2016年)の設立など理論と実践とを日々往復している。

参加費

無料

申し込み方法

下記ボタンよりお申し込みください。


※「&SBNセミナー」についてはこちらをご覧ください。

SBN勉強会 参加者募集(&SBNセミナー 第1回)


能登半島地震から半年 現在の状況と私たちができること

能登半島地震の発生からまもなく5カ月。
現在も水道が使えない地域があるなど、復旧・復興にはまだまだ時間がかかることが予想されますが、報道による現地の情報は少なくなってきており、現在のリアルな状況、本当に必要とされている支援などが見えづらくなってきています。

そこで、ソーシャルビジネス・ネットワークのフェローを務めていただいている、能登復興ネットワーク 事務局長の森山奈美さん(株式会社御祓川 代表取締役)をお迎えし、現在の状況についてお話していただくと共に、私たちができる支援について考えるオンライン勉強会を開催します。

みなさまぜひご参加ください。

日時と開催手法

2024年6月17日(月)18:30-20:30 Zoomによるオンライン

講師プロフィール

森山奈美(もりやま なみ)さん 株式会社御祓川 代表取締役

石川県七尾市生まれ。横浜国立大学工学部建設学科建築学コース卒業。都市計画専攻。平成7年 (株)計画情報研究所入社。都市計画コンサルタントとして、地域振興計画、道路計画等を担当。民間まちづくり会社(株)御祓川(みそぎがわ)の設立に携わり、平成11年より同社チーフマネージャーを兼務。平成19年より現職。その取り組みが日本水大賞国土交通大臣賞、ふるさとづくり大賞総務大臣表彰などを受賞。経済産業省「ソーシャルビジネス55選」に選出された。


能登の特産品を取り扱う「能登スタイルストア」を運営するほか、地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致する実践型インターンシップ「能登留学」、能登半島の地域企業の人材研修・組織開発・採用支援などを担う「能登の人事部」として地域全体の人材育成にも取り組む。能登留学生と生活を共にするインターンハウスの家主でもあり、200名を超える能登留学OBOGが能登に帰る際の拠点になっている。

令和6年能登半島地震をきっかけに能登復興ネットワークを立ち上げ、事務局長として地域内外の活動をつなぎながら、能登の元気を発信し「小さな世界都市・七尾」の実現を目指して日々、挑戦中。

参加費

無料

申し込み方法

下記ボタンよりお申し込みください。


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丸の内プラチナ大学「Social SHIFTテーブル・コース」受講者募集を開始しました。

毎回1人の社会的企業家をゲストにお迎えし、未来志向型ビジネスや、新しい生き方・働き方を実践するソーシャル・アントレプレナーと語り合うことのできる連続講座です。
未来志向型ビジネスや、新しい生き方・働き方を実践するソーシャル・アントレプレナーと語り合う中で、ウィズコロナ時代のライフシフト、ワークシフト、ビジネスシフトのヒントを探ります。
ゲスト講師にゆかりのある地域食材などを使い、3×3Lab Futureのオープンキッチンでつくられた、できたての美味しい食事をとりながら、くつろいだ雰囲気の中での語らいの場です。
コロナ禍、オンラインや講演会形式で開催してきましたが、3年ぶりに少人数で、ゲスト講師を囲んでの展開となります。

9月22日(金)18:30-20:30
高田 新一郎さん(NPO法人ほほえみの郷トイトイ 事務局長)
買い物難民、孤独・孤立…、地域課題をソーシャルビジネスで解決し続けるリアルに学ぶ


11月21日(火)18:30-20:30
佐藤 岳利さん(株式会社WISE WISE 最高執行責任者)
ものがたりのある商品を買う–新しい資本主義の中での商品開発/ブランディング


12月8日(金)18:30-20:30
酒井 里奈さん(株式会社ファーメンステーション代表)
未利用資源を再生し循環社会を実現~研究開発型ソーシャルビジネスの今


1月26日(金)18:30-20:30
神田 優さん(NPO法人 黒潮実感センター長/高知大学客員准教授)
「環境保全×地域活性化」におけるソーシャルビジネスの可能性


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社会事業家100人インタビュー第67回レポート

開催概要

〇開催日:2023年6月15日(木) 18:30~20:00
〇開催手法:オンライン
〇ゲスト:(特) ほほえみの郷トイトイ 事務局長 高田新一郎さん
※今回の「社会事業家100人インタビュー」は、小規模多機能自治推進ネットワーク会議主催の連続オンライン勉強会「初夏の陣」との共催で開催しました。

ゲストプロフィール

高田新一郎(たかた しんいちろう):1970年生まれ、山口市阿東出身。1993年から2010年まで行政職員として勤務。退職後、2011年より地域課題解決に取り組む。2012年「地域の絆でつくる笑顔あふれる安心の故郷づくり」をキャッチフレーズに地域の将来構想「地福ほほえみの郷構想」を提案。地域拠点を核にした住民主体の課題解決のしくみづくりをスタート、地域ニーズをもとにした課題解決のための事業構築に取り組み、ビジネスとして確立することで持続可能な地域運営を目指している。

インタビューのポイント(川北秀人)

移動販売は、独居高齢者などの地域でのくらしを支える重要な社会基盤である一方、収益性は高いとは言い難く、その安定的な継続は困難だと言わざるを得ない。ところが、山口市に合併された山間部の地域運営組織であるほほえみの郷トイトイでは、「売りに行くのではなく、話を聞きに会いに行く」移動販売を中核的な事業と位置付け、収支上も安定を保ち続けている。その経緯と工夫から、地域のくらしを支える基盤をどのように経営するかを、学んでほしい。

インタビューの内容

スーパーの撤退を機に、買い物問題が発生

ほほえみの郷トイトイの活動が始まったのは、山口市阿東地区(当時は阿東町)で唯一のスーパーが、2010年に閉店したことがきっかけでした。新たに出店してくれるスーパーを1年以上かけて探しましたが見つからず、地域の人たちでお店をやることになったのです。しかし、話し合いがなかなか進みません。どうしたら良いかと改めて考えて思い至ったのが、地区の人口は今後さらに減少していくということ。今、対症療法的にお店を作っても、人口減少に伴って成り立たなくなることは間違いありません。他にも、病院がなくなったり、バスが走らなくなったり、これから様々な問題が出てくるでしょう。次々と生まれる課題への対応で、地域が疲弊していくことが予想できました。

地域のみなさんは、課題に直面したときの相談先がわからないことで、不安な気持ちになります。ならば自分たちで課題を解決できるしくみを作り、「スーパーはなくなったけど、人のつながりは増えた」といったように、未来にプラスの変化をもたらしていったら良いのではないか。私はそう考えるようになりました。ただ、地域の方にお話しすると「それは行政がやることでしょう?」と言われてしまいました。一方で、阿東町が山口市に吸収合併されて間もなかった当時、従来よりも行政との距離を感じていた住民からは「これからは行政頼りでは難しいのでは?」という声も上がったのです。少しずつ共感をいただいて、取り組みが前に進み始めました。

最初に行ったのは、「どんな地域にしたいのか」というビジョンを作ることでした。2010年8月から9月にかけて行ったアンケート結果を再分析し、地域内各団体へのヒアリングや高齢者への個別ヒアリングなどを経てまとまったビジョンは、「誰もが笑顔で安心して暮らし続けることのできる故郷を作ろう」。お年寄りの中には、本当は阿東でくらし続けたくても、できないという方がいます。その願いを叶えることが、これから年を重ねていく人たちの希望になるのではないかと考えました。このビジョンの下、我々に必要なものを考えると、スーパーの閉店で失われたのは買い物の場だけではありませんでした。人と出会ったり、地域の情報が行き交ったりする場も、失われていたのです。そこでスーパーの跡地に作るのは、ミニスーパーを兼ねた地域拠点としました。拠点に集まるニーズや不安は、ビジネスの種となります。地域住民が主体となってビジネスを始め、失いかけていた誇りと自信を取り戻そう。そうしてトイトイの事業が始まりました。

移動販売でモノを売るのではなく、話を聞きにいく

2012年にオープンした地域拠点で、お客さんと立ち話をしていて気づいたのが、移動販売を必要とする方の多さでした。また地域のお母さんたちは、自ら地域の声を拾ってきてくれました。「手作りのお総菜が欲しい」という声がたくさんあるというのです。そこで、平均年齢65歳を超えるお母さんたちが、地域拠点に総菜工房を立ち上げてくれました。移動販売を通じてお年寄りの孤立をなくし、お総菜で食生活を整えれば、元気なお年寄りが増えるはずです。消費が増えて地域経済の活性化につながるのではないかと考えながら、2013年に移動販売事業を開始しました。

当初は、旧阿東町の地福地域を1台で回っていた移動販売ですが、口コミが広がり、今は旧阿東町全域を2台で回っています。あるおばあちゃんはスタッフに「私はあなたと話す時間を楽しみにして1週間を過ごしているの」と声をかけてくれたそうです。トイトイの移動販売車が喜ばれるのは、安さや品ぞろえではなく、「トイトイがいるから阿東でくらしていける」と思っていただけるからなのだと思います。また、移動販売車は地域の方同士をつなぐ役割にもなっています。お友達の様子を聞く方や、届け物をスタッフに頼む方も。離れてくらすご家族から「認知症が出ているので気を付けてもらえますか?」とご連絡をいただいたり、私たちからご家族や保健師、ケアマネジャーに連絡して連携したりすることもあります。

私たちが最優先にしているのは社会課題の解決ですので、買い物という場面を使って、人と人がつながることが大切です。トイトイの移動販売車が行っているのは、モノを売りに行くことではなく、地域の高齢者の話を聞くために会いに行くことです。それは、コミュニティを持続させるためのマーケティングにもつながっています。変化する地域の状況を移動販売のスタッフが持ち帰ってくれることで、必要な取り組みを必要なタイミングで行えるのです。

人件費倍増の賭けが、黒字化の転機に

ただ、戸別訪問の移動販売を、住居が点在する中山間地域で行うのは非効率で、利益が出やすいビジネスモデルではありません。それでもあるときから、移動販売車に乗るスタッフを1人体制から2人体制に増やしました。人件費が2倍になる賭けです。あえてこの決断をしたのは、スタッフが1名だと、お客さんと十分に会話できないことがあったからです。阿東のみなさんはトイトイをありがたいと思ってくれているのでクレームが入らず、しばらく表面化しなかったのですが、ちらほらそんな声が聞こえてきました。そこで、「本当にやりたいのは利益を出すことではない。みなさんが求めていることを叶えることだ」と考え、2名体制にしました。1人だと、停車して開店の準備をしながら接客し、会計を終えたらすぐに店じまいをして移動する必要があり、双方のやりとりがどうしても慌ただしくなってしまいます。しかし、2人にすれば、人件費は増えますが、1人は店の準備や片付けに、もう1人はお客さんの対応に、それぞれ専念することができます。研修も重ねた結果、お客様満足度は圧倒的に上がり、売上もスタッフが1人だったころに比べて170~180%と、移動販売事業は一気に黒字化しました。

移動販売車のスタッフたちは出発前に、「あのおばあちゃん、これ好きだから入れておこう」「こんな話していたな」と思い浮かべ、声に出しながら、毎日の準備をしています。お客さんを消費者として見るのではなく、地域の仲間として支えることを徹底しているのです。小さな市場かつ非効率ですが、トイトイの移動販売は、信頼関係で成立する共感と思いやりのビジネスモデルです。

2022年からは、キッチンカーによる巡回型のコミュニティ拠点づくりを始めました。コロナ禍でお年寄りの外出が減ってしまったので、楽しみを作りたいと考えたからです。各集落を巡回し、みなさんでごはんを食べながら、いろんなお話をしています。行政の保健師が参加して、一緒に話をすることも。お年寄りが地域で元気にくらし続けてくれれば、地域の経済にもプラスになります。トイトイに野菜を卸しているお年寄りが、「孫が来るから」と移動販売でお菓子を買ってくれているように、地域の中で経済が循環します。大企業に頼るのではなく、地域で循環するしくみを自分たちで作っていくことが大切だと思います。

誰もが幸せになれるストーリーを描く

トイトイの取り組みは、誰もが幸せになれるストーリーを描くことだと考えています。移動販売がまだ要らない人でも、隣のおばあちゃんが楽しそうにくらしている姿を見れば、未来の自分を重ね合わせて不安が希望に変わります。実は、車でスーパーに買い物に行ける60代くらいの方々が、なぜか移動販売でも買ってくれることがあるのです。自分が80〜90代になったときに事業が続いていてほしいからと、応援の気持ちなのだと言います。みんなが幸せになるストーリーを描くと、共感の輪が広がり、応援団が増えます。この循環を実現するためには、地域の声を丁寧に聞き続け、一つ一つ形にしていくしかありません。

今、トイトイの運営は私なしでも回るようになりました。ですので私は、数歩先を見据えた投資的な仕掛けを意識しています。「阿東でならおもしろいビジネスができる」と若者が思ってくれるような仕掛けや、企業・行政と連携した実証実験などです。今後5年ほどは、点在して移動できないお年寄りが増え、移動販売の需要が伸びるでしょう。以降は、移動販売の充実より、お年寄りに動いていただいてもよいかもしれません。地域の中心部に共同住宅を作り、プライバシーを守りながら楽しく暮らせるしくみの構築を考えています。今がベストだとは思っていません。私たちの強みは変化を恐れないこと。失敗してもあきらめずに、どんどん進化し続けていきたいと思います。そして私自身も、80歳になったときに、阿東で幸せにくらし続けたいと思っています。


(文責:近藤)

これまでのインタビューはこちらをご覧ください。

社会事業家100人インタビュー第66回レポート

開催概要

〇開催日:2023年6月14日(水) 18:30~20:00
〇開催手法:オンライン
〇ゲスト:(特)都岐沙羅パートナーズセンター 理事・事務局長 斎藤主税さん
※今回の「社会事業家100人インタビュー」は、小規模多機能自治推進ネットワーク会議主催の連続オンライン勉強会「初夏の陣」との共催で開催しました。

ゲストプロフィール

斎藤主税(さいとう ちから):1971年生まれ、新潟市江南区(旧亀田町)出身。1996年、新潟大学大学院工学研究科修士課程修了。同年(株)計画技術研究所に入社し、全国各地の都市計画及び参加型まちづくりのコンサルティング業務に従事。1999年より新潟県岩船地域においてコミュニティビジネスの育成と中間支援NPOの運営を実践。2001年に新潟にUターンし、新潟県内を主なフィールドに幅広い分野・領域の地域づくり事業のコーディネート活動を開始。2004年に(株)計画技術研究所を退社し、以後、NPOの立場から多様な地域づくり事業のプランニング・コーディネート・プロデュース活動に従事。

インタビューのポイント(川北秀人)

地域における市民活動支援は、地域のくらしの持続可能性を高め、よりよいものへと導くための支援を行うことが大前提だ。特に、県庁所在地市でない自治体において、行政から施設の指定管理料などを受けずに地域の市民活動支援を行う場合、その自治体だけでなく、広く他地域にも有効な支援技能を確立していることが必須となる。その先駆者である都岐沙羅パートナーズセンターから、地域に根差した支援者が持つべき姿勢や技能について学んでほしい。

※小規模多機能自治:自治会、町内会、区などの基礎的コミュニティの範域より広い範囲の概ね小学校区程度の範域で、その区域内に住み、又は活動する個人、地縁型・属性型・目的型などのあらゆる団体等により構成された地域共同体が、地域の実情及び地域の課題に応じて住民の福祉を増進するための取り組みを行うこと(小規模多機能自治推進ネットワーク会議の定義による。全国270以上の自治体が参加する「小規模多機能自治推進ネットワーク会議」については、リンク先参照。)

インタビューの内容

はじまりはコミュニティビジネス育成

都岐沙羅パートナーズセンターは、新潟県北部の村上地域(村上市、関川村、粟島浦村)で活動する中間支援組織です。事業内容は幅広く、住民活動の相談に応じる窓口の運営、地域ツーリズムの企画、林業体験など地域づくり事業のコーディネート、さらには商品開発や販路開拓の支援も行っています。

私たちが当団体を創設したのは1999年で、当時はコミュニティビジネスの育成事業を行っていました。今でこそ各地に公募型起業プランコンペがありますが、当時はまだ「コミュニティビジネスとはなんぞや?」という時代。全国でも先駆けと言える存在でした。官民一体となって取り組んだこの事業では、コミュニティビジネスへの資金助成と、支援機関による伴走支援を実施。加えて、地元金融機関に融資制度を創設してもらい、地域を上げてコミュニティビジネスを支援しました。

ただ、行政との連携による事業は永遠に続くわけではありません。当団体が特定非営利活動法人化した2002年から、その事業の終了を見越して準備を進めました。官民連携で取り組んだコミュニティビジネス支援は2005年に、行政事業としての支援は2007年に終了。以降は、行政からの運営費補助のない民設民営の中間支援組織として、様々な事業を展開しています。

「雲南ゼミ」の報告会を機に、小規模多機能自治に取り組む

私たちは、地域づくり事業の一環として、小規模多機能自治の推進に力を入れています。小規模多機能自治は、地域コミュニティによる地域経営に取り組み続けてきた私たちの考えと、重なっているからです。

私が小規模多機能自治に関わるようになったのは、ある研修会がきっかけでした。ファシリテーションを担当したその会で、小規模多機能自治を実践する島根県雲南市の方による講義がありました。話を聞いて衝撃を受けました。地域を支援している者として、雲南市の取り組みがどれだけ大変なことか、わかったからです。村上市では2012年に、行政主導で市内17のまちづくり協議会が発足し、私たちはその立ち上げを支援してきました。ただ立ち上がってみると、どの協議会も地域経営は難しく、イベントごとを行うばかり。雲南市の講義を聞いたのはちょうど、「これで良いのか」と思っていたころでした。

このときのご縁で、当団体の理事や県内他団体のまちづくり仲間とともに、雲南ゼミ(雲南市に地域自治を学ぶ会)に参加することに。雲南ゼミには「雲南ゼミ八則」という掟があるのですが、その一つに「雲南市などから学んだことを伝えること」とあります。私はこれを真に受け、新潟で報告会を企画。行政職員を含め20人ほどが集まった報告会を機に、小規模多機能自治に取り組んでいくことになったのです。

まずは自ら、地域を分析。その経験をまちづくり協議会の支援へ

まずは、将来の人口推計から始めました。川北さんのブログ(※)を参考に計算すると、あまりの数値にショックを受けました。また、地元の大学が中学生以上の全住民アンケートを行った地域があると知り、クロス集計をするとこれも衝撃的な結果に。ただ、人口推計と全住民アンケートだけで、地域経営が動き出すとは思えませんでした。あまりにも厳しい現実にやる気をなくしてしまうと考え、希望の種となる先進事例を調べて、蓄積していきました。そして、まちづくり協議会の地域ごとに「カルテ」も作成。まちづくり協議会ごとの人口や高齢者人口、高齢者世帯について過去20年と今後20年の推移をまとめ、Webサイトで公開しました。

これらの取り組みをまちづくり協議会の研修でお話すると、「全住民アンケートをやりたい」と手を挙げる協議会が出てきました。設問や集計方法、レポートの作り方などを試行錯誤し、まちづくり協議会による小規模多機能自治を支援するノウハウを蓄積していきました。

次第に事例が貯まってくると、小規模多機能自治推進ネットワーク会議主催の研修などで、全国の方に向けて事例を発表する機会が増えてきました。すると、県内外から「手伝ってほしい」という声が。お手伝いしながら事例を貯めつつ、小規模多機能自治を支援する人を増やそうと活動しています。

※のちにソシオ・マネジメント第3号・第6号に掲載

動かない地域に不足するのは「ワガコト化」と「問題の解像度」

これまでの取り組みを通じて、見えてきたことがあります。それは、研修を聞いて気づきを得ても、アクションを起こす人が少ないということです。このとき不足しているのは、「ワガコト化」。地域づくりには、ハート(当事者意識の醸成と向上)、ソフト(しくみ)、ハード(施設)の3つの要素がありますが、順番が大切です。ワガコト化を促すハートの取り組みから、順番に始めなければいけません。そして支援者は、小規模多機能「自治」を進めるために、住民が自ら考えて実行できるよう、判断材料や判断基準、参考例を適切なタイミングで提供し、後押しする必要があります。

また、「ワガコト化したあと何をしたら良い?」という地域が増えています。この場合、足りないのは、問題の解像度です。「お年寄りが買い物に困っています」ではなく、「車を運転できなくなったお年寄りが、買い物にはバスで行けるが、かさばるものを買えず困っている」程度まで明確にしていきます。解像度をあげるには、地域での対話の場が有効です。模造紙を広げたワークショップではなく「井戸端会議」がよいでしょう。ある集落では、「倒れたときに親族に連絡してもらえるか心配」との声が上がり、緊急連絡カードを作ることに。こういった事例を通じて私は、課題解決力は地域に確かにあると実感しています。村上市の場合、集落座談会という名の井戸端会議を繰り返してきました。今年度からは、まちづくり協議会からの資金補助が実現し、協議会が集落に対して座談会を広げていく動きが生まれています。

全国各地の支援者とともに支援力を磨きあう

私たちは、自ら実践して形にすることを大切にしてきました。実際にしくみを目にして初めて、人は「こういうのが欲しかった」と言うからです。例えば、移動支援の必要性が高まってきたので、住民ボランティアによる買い物送迎のしくみを過去3年にわたって実験しました。住民ボランティアが福祉施設の送迎用車両を無償でお借りして、送迎するしくみです。3年間、センターの自主財源から捻出して全額負担し、しくみを構築。今年度からは、まちづくり協議会から支出してもらえるようになりました。このように、やりたい事業があるときは、まずは助成金などを調達して実施し、ある程度形になったら、行政などの事業にできないか交渉しています。

こうしてこれまで、村上地域で自ら実験し、経験を踏まえて地域外を支援し、得た収入を村上地域に再投資してきました。地域内・地域外の収入バランスを強く意識し、どちらかがおろそかにならないように心がけています。各地での支援を通じて今、感じているのは、支援者の数を増やしていかないと“間に合わない”ということです。そのため、小規模多機能自治を早く社会に浸透させ、各地の支援者がこれを実践できる状況を作っていく必要があります。これからも積極的にノウハウを公開し、皆さんとお互いに支援力を磨き合っていきたいと思います。

(文責:近藤)

これまでのインタビューはこちらをご覧ください。

社会事業家100人インタビュー 参加者募集

社会事業家100人インタビュー 3年ぶりにオンラインで再開!~第66回 斎藤主税さん&第67回 高田新一郎さん 2日連続でリスタート!

日本には、世界に紹介したい社会事業家がたくさんいます。

新たなビジネスモデルを創りだした先輩社会事業家100人に、そのビジネスモデルを確立した経緯、事業として成り立たせていく段階での経験談を掘り下げてお聞きする「社会事業家100人インタビュー」。

2012年の開始以来、2020年3月まで65回にわたって対面で開催し、その後は感染症拡大防止の観点から開催を見合わせてきました。状況の安定に伴い、対面での開催も検討しましたが、なにより、多くの方にお聞きいただきたい、という観点から、オンラインにてリスタートすることにいたしました。リスタートの幕開けに際して、2夜連続で開催します。

リスタートの初回となる第66回は、(特)都岐沙羅(つきさら)パートナーズセンターの斎藤主税さん、第67回は、(特)ほほえみの郷トイトの高田新一郎さんに、お話を伺います。

今回のインタビューは、小規模多機能自治推進ネットワーク会議主催連続オンライン勉強会 「初夏の陣~小規模多機能自治インタビュー&課題共有/解決研修」との共同開催となります。

開催概要

日時

・2023年6月14日(水)18:30-20:00<ゲスト:斎藤主税さん>
・2023年6月15日(木)18:30-20:00<ゲスト:高田新一郎さん>

ゲストのご紹介

斎藤主税(さいとう ちから)さん (特)都岐沙羅パートナーズセンター 理事・事務局長

都岐沙羅パートナーズセンターは、山形県と隣接する新潟県北東部の村上地域(村上市・関川村・粟島浦村)における中間支援組織として、1999年の設立以来、コミュニティビジネスの立ち上げ・継続の支援を、地元行政からの委託を受けずに開始するなど、設立以来、住民自らによる自律的な地域づくりを支援。地方自治法60周年記念総務大臣表彰(2007年)、ふるさとづくり大賞(団体表彰、2015年)、地域再生大賞(2017年)など、高い評価を受けています。
同センターの創設メンバーとして事務局長を務める斎藤さんは、その一連の取り組みを自ら企画・運営し続けるとともに、感染症下でも、自粛・中止で地域のくらしの問題の深刻化や地域づくりの停滞を放置するのではなく、やり方を変えて臨む地域が増えるように、全国各地で働きかけを続けていらっしゃいます。
自律的な地域づくりの基盤となる、地域の「これまで」と「これから」を、住民自らが理解して判断・実践に結び付けるための材料づくりと機会づくりをどう進めるか。斎藤さんからじっくり伺います。
参考


高田新一郎(たかた しんいちろう)さん (特)ほほえみの郷トイトイ 事務局長

山口市阿東地区(旧・阿東町)で、2010年に地域唯一のスーパーマーケットが閉店されることになった際、住民調査に基づき、「対処療法ではなく、将来にも対応できる課題解決のしくみが必要」と住民自らの力で店舗を再開しようという機運が生まれ、若い世代の中から手を挙げた高田さん。その後、住民に開設支援金の拠出を呼びかけ、170万円を集めて店舗が開設され、地域住民自らが惣菜を調理するなど、取り組みが積み重ねられています。特筆すべきは移動販売。人口約1千人、600世帯弱、高齢者率が6割に達する地域で、週5日・年間50週、車両2台が、補助を受けずに黒字で営業しています。「ものを売りに行く」のではなく、「会いに聴きに」行き、「地域に安心をお届けする」。そんな移動販売をどのように確立されたのか。経過と今後の見通しを、じっくり伺います。
参考


対象

・社会事業家として事業を始めている方、これから始めようとされている方
・ビジネスモデルの作り方を先輩社会事業家から学びたい方

共催/協力

・共催:
一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)
小規模多機能自治推進ネットワーク会議
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]

・広報協力:(特)ETIC.

プログラム(両回共通)

  • ・ゲストのご紹介、趣旨説明
  • ・ゲストご自身からビジネスモデルの紹介
  • ・聞き手からの質問(聞き手:川北秀人(ソーシャルビジネス・ネットワーク理事、IIHOE代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人)
  • ・ご参加者からの質疑応答(チャットなどの方法で、お1人1問ずつ、ご質問をお願いします。)

参加費/申し込み方法

・個人でご視聴の場合:各1,500円
・複数でご視聴の場合:各2,500円(「複数でのご視聴」とは、ひとつの会場に集まって、スクリーン等に映写して、複数名で視聴する形式を指します。参加人数は問いませんが、使用いただけるzoomアカウントはひとつだけです。)

下記ボタンよりお申し込みください(申し込み締め切り:2023年6月12日(月)*定員になり次第締め切ります。)




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