【レポート】『社会事業家100人インタビュー』 株式会社四万十ドラマ 畦地履正 氏

第26回『社会事業家100人インタビュー』
「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」第26回

2014年4月7日(月)19時~21時 
於:(特)ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット

ゲスト:畦地履正さん 株式会社四万十ドラマ 代表取締役

 

<プロフィール>

1964年四万十町(旧十和村)生まれ。通信関連企業への就職を経て、87年、十川農協(現高知はた農協)に就職。94年に四万十川中流域町村(大正町・十和村・西土佐村)が出資した第三セクター会社、株式会社四万十ドラマに就職。2005年の市町村合併に伴い、行政の株式を買い取った地域住民が株主となり完全民営化された。07年10月、同社の代表取締役に就任。

「四万十川に負担をかけないものづくり」をコンセプトに地域と密着し、自然循環型企業を目指した事業展開を行っている。07年に道の駅「四万十とおわ」の運営を四万十町より指定管理を受け、1日1000台未満という交通量の少ない国道に面しながら、2012年には年間1億5千万円を売り上げた。

 

<今回のインタビューのポイント>(IIHOE 川北)

中山間地域で、「そこにあるもの」を商品にして、東京をはじめ全国の市場に、さまざまな切り口で風穴をあけてきた地域振興の第一人者。地域資源をいかした商品を、力強いデザイナーとともに骨太の地域ブランドに育てるとともに、その経験を活かして、他の地域の活性化にも協力している。素材を大事にするブランディングの徹底や商品開発力に注目が集まるが、現場の生産者とともに、しくみを育てていく、そのビジネスモデルのステージの進化を学んでいただきたい。


足元にあるものを、資源と考える

高知県は森林率84%で全国一位、四万十町に限れば森林率90%を越え、田畑を除くと数%しか人の住める土地がありません。高い高齢化率や経済の指標を見れば日本中で高知はビリですが、頭を切り替えれば、CO2吸収率は日本一位。美しい山川やお茶の段々畑といった、日本の守りたい風景があり、豊かな本物のくらしがあります。

地域にあるもので産業を興すには、まず足元のことを知らなければなりません。20年前に第三セクターができた頃は、私は地域の人、取り組み、文化等詳しいことは知らない状態でした。そこで、まず地域にある強みを調べました。

農家の方たちが庭先でつくる自家消費用の野菜は、農薬を極力つかわないで育てています。この無農薬インゲン豆2kgをおばちゃん3人が高知市内のスーパーへ出荷したところから、四万十ドラマは始まりました。現在、年商は3億5千万円を超えています。農薬を使いたくないから、虫も草も、手で取る。その手間暇を惜しまない人たちが、我々の宝です。

また、四万十の茶葉も、著名な他の産地で採れた茶葉にブレンドされて、よその銘柄名で市場に出ていましたが、それを何としても変えたいと思いました。そこで、「手摘み・手刈り」をしていることを強みとして価値を打ち出したところ、「しまんと緑茶」シリーズは我が社の主力商品になりました。「四万十の緑茶を購入することは、地域の段々畑を守ること」というストーリーが理解され、東京駅の駅ナカにも入っていて、今年5月からはナチュラル・ローソンでも取り扱いが始まります。実は、高知県は和紅茶の発祥の地。今後、緑茶の消費は減ることが予測されるため、「しまんと紅茶」シリーズも開発しました。和紅茶の世界においては、トップの商品開発力だと誇っています。


調べて、絵を描く ―地域振興のビジョン

我々は地域の商社です。庭先の野菜も、天然アユ、天然うなぎも、全部、四万十にあったもの。地域にはうなぎをさばく名人がいて、「この名人がさばく天然うなぎはここに来ないと食べられない」って聞くと、観光に行きたくなるでしょう?

調査してみて、地域産業の主力になるのは、お茶と栗とシイタケだと考えました。栗はかつて年間500トン採れていましたが、現在は約30トン。生産者は収穫した栗を、ただ農協へ持っていき、農協は市場に販売するという仕組みで「人任せ」になっていました。ここに後継者がいなくなる原因があります。

四万十の栗は大きくて、一般的な栗より1粒平均で5g重い。生栗を蒸すと糖度は20度近くもあり、非常に高い評価を得ています。有名な栗の産地にも視察に行きましたが、どこも自地域の栗を「大きくて甘い」というだけで、グラム数も糖度も測っていませんでした。そこで我々は徹底的に調べて、四万十は栗の加工・販売まで地域で行い、大きくて、甘くて、さらに手間暇のかかった商品にしています。

 

栗の鬼皮を手でむいて、渋皮を爪楊枝でとり、仕上がるまで3日間かかる「物語」があります。既に東京の洋菓子屋に採用され、その商品は百貨店でも取り扱われました。加工、販売まで地域でやれば若者の雇用が生まれます。我々は、栗畑をもう一度再生させることを鍵に、3年かけて栗の木を1万本植えました。

7年前にオープンした道の駅「四万十とおわ」のそばに、栗の加工場を併設した「しまんとおちゃくりcafe」を始めます。植えた栗1万本から商品ができるまで、5~10年かかりますが、原材料の栗だけで1億円分の収穫を見込んでいます。その栗を1.5次加工すると、2・3億円の価値になり、菓子にすると10億円になります。10億円を売り上げる商社ができれば、地域は変わります。

栗の栽培基準も、我々がつくります。「こうつくれば単価が高く売れる」という仕組みを示せば、生産者は喜んでやってくれます。高く売るのは若者の仕事です。地域に若者の働く場所ができます。地域の再生や地域のブランドで、世界に売っていくチャンスもあります。10億円を売り上げるしくみは、私たちのビジョンです。栗では実現に向けて着実に動いています。栗で成功すれば、お茶でも、シイタケでもできるでしょう。

地域振興にはビジョン、「絵を描く」ことが必要です。文字じゃ地域の人には伝わりません。ビジョンの原点は地域で考えます。外部のコンサルタントから与えられるものではないし、原点がないままブランディングを進めても、表面的なパッケージデザインにしかなりません。自分たちに何ができるか、何をやりたいかという考えを強く持って、自分たちが進みたい方向を絵で示すのがビジョンです。また、自分たちの「考え方」を伝えるために、デザインの力を使うことも、とても重要です。


「しまんと新聞ばっぐ」で都市と農村の交流

しまんと新聞ばっぐは、世界の共通語になっている「もったいない」と「折り紙」が融合したもので、大変、注目を集めました。2007年にニューヨークのギフトショーに出展した際は、有名ブランドメーカーのバッグと並んで評判を呼びました。きっかけは、「四万十川流域で販売される商品は、全て新聞紙で包もう」という、梅原真さんの提案。地域のおばちゃんが折り方を考え、「作り方レシピ」として特許も申請しました。当初、新聞バッグは高知新聞でしか作っていませんでした。

これが評判を呼び、「作って売りたい」という声があがり、2009年には折り方のインストラクター養成講座も始めました。この講座は四万十でしか開催しないことで、観光客を呼び込み、コミュニケーションを図ります。作れる人が増えると、発表の場が欲しくなり、「新聞バッグコンクール」を始めたところ、毎回500もの作品が集まるようになりました。預金通帳入れとして高知銀行のノベルティになったり、東北の復興支援にも使われたりという、コラボレーションも次々に生まれています。環境配慮と日本の文化への関心から海外での評価も高く、アラブ首長国連邦で開催された万博に出品されたり、タイでのイベントで使用されたり、ベルギーでは新聞バッグの紹介のために、地元の新聞紙面にデザイナーの提案する図柄が掲載されたりしました。国内では、神奈川新聞社の70周年の記念紙に掲載されました。

当時、道の駅で包装紙を新聞紙に代えたのは、全国でも初めてでした。ビニール袋を必要とする人は5円を支払い、そのお金は森林の保全のために使われるようにしました。これも循環のしくみのひとつです。地域にあるものでビジネスする、利益は地域に返すという循環のしくみの本質は、どの事業でもぶれません。

商品開発にはリスクをとることも必要なので、事業開発の投資的段階では積極的に公的助成金や補助金は利用してきましが、組織の運営自体は自分たちでやってきました。そろそろ、補助金からは距離を置く時期にきていると思っています。今後は人材育成も視野に、新規事業には丁稚奉公、いわゆるインターンシップを採用して挑む計画です。本気で地域振興に取り組む人材を増やし、四万十で育った人材が他地域にも広がってゆく大きな循環のしくみを考えています。

 

(文責:前川)

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』 株式会社K2インターナショナルジャパン 岩本真実 氏

『社会事業家100人インタビュー』第25回
先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ
2014年3月4日(火)17時~19時
於: 250 Nikomaru Honey Cafe Boom Boom(ニコマル ハニーカフェ ブンブン)

ゲスト:(株)K2インターナショナルジャパン 岩本真実さん

 

 
<プロフィール>

1971年神奈川県生まれ。野村證券株式会社OL時代、コロンブスアカデミーにてボランティアを開始。1997年より海外で不登校児と共同生活を送りながら、就労支援のためのレストラン、ブックショップ等計4店舗の立ち上げに携わる。2005年に帰国し、現在は、湘南若者サポートステーション統括コーディネーター、にこまる食堂プロジェクトリーダーとして、若者の自立・就労支援の第一線で活躍。2013年からは(特)ヒューマンフェローシップの代表理事も務める。社会起業家のためのビジネスプランコンテストSTYLE 優秀賞受賞(2007年)、日経ウーマンのウーマンオブザイヤー「リーダー部門第9 位」(2008年)受賞。

 

<今回のインタビューのポイント>(インタビュアー IIHOE川北)

課題を抱えた若者の就労支援は、「どう寄り添うか」だけでなく、「どう効果的に就労を継続できる力を育てることができるか」も重要。飲食店という、競争の厳しいサービス業の営業の現場と、共同生活できる環境を持つとともに、ボランティアなど、職場の上下関係以外に相談や会話できる存在までそろえていることで、それぞれに課題を抱えた多様な若者が多数、継続的な支援を有効に受けることができている。それが可能になった経過を、ぜひ、学び取ってほしい。


若者就労支援は自立生活支援から始まる

引きこもりやニートなど、さまざまな課題をもつ若者が就労できるようになるためには、まず、本人が自立して、安定した毎日を送れるようになることが必要です。食や睡眠など生活の基礎が崩れ、自己管理ができていない若者は、親元から離れて当事者と共同で寮生活をすると、生活のリズムが整い、時間管理ができるようになってきます。生活圏をともにすることで、対人関係も少しずつ改善していくのです。そこで、K2インターナショナルグループ(以下K2)では、さまざまなタイプの共同生活寮や自立支援ホームを設置・運営し、すべての活動の基盤として位置付けています。


お皿洗いで、適性がわかる

K2全体の事業規模は約5億円。自主事業と、国や自治体からの委託金・助成金が半々です。JR根岸駅周辺に、タイプが異なる就労の場を複数設けており、それらの資源を活用して、1人1人の状況に応じた段階的な支援プログラムを組み、専門家を含むチーム体制でサポートしていきます。

飲食店を軸としている理由は、(企画や仕入れ、下ごしらえ・掃除などの裏方や接客など)いろいろな仕事の基礎を含んでいて、1人1人にあったプログラムが組みやすいからです。お皿洗いをさせてみるだけでも、その子の適性はだいたいわかるものです。また、たとえ研修であっても、直接お客さんの入りや反応をみて、自分がどのように役に立っているのか実感できるため、最初から実際の経済の場に入ってもらうことは、とても大切だと考えています。

他県から(最近は韓国からも)視察に来ていただく機会が増えましたが、これから若者就労支援を始めたいという方には、「自主事業として、まず食堂をやってみませんか?」とお勧めしたいです。


多様な就労の場をつくって活用する

JR根岸駅前に2010年にオープンした「にこまる食堂」は、年会費1000円を払って“サポーター”になると、1食250円で食事ができます。基本は自主運営ですが、地域の家庭菜園などからの食材提供、ボランティア、寄付を募っています。利用者の朝夕の食事の場でもあり、閉鎖的になりがちな若者就労支援活動を、地域の人たちに自然なかたちで知ってもらう場にもなっています。

開墾から手掛けた「にこまるソーシャルファーム」は、利用者の研修プログラムでの活用や食材調達目的だけでなく、畑管理で利用者の親御さんと連携したり、食堂の生ゴミをたい肥として活用したりするなど、副次的効果も生んでいます。

(今回のインタビューの会場ともなった)「250 Nikomaru Honey Cafe Boom Boom(ニコマル ハニーカフェ ブンブン)」は、2013年のオープン。K2本社ビルの屋上で飼育されているミツバチからハチミツを採取し、そのハチミツを使ったカフェメニューを展開中です。今夏から、近くの横浜プールセンター売店で、レモネードの販売も予定しています。

カフェ店頭では、「ねぎしの森のハチミツ」だけでなく、オーガニックのはちみつを原料とした輸入商品なども販売している。

お好み焼ころんぶす」は、根岸本店のほか、港南台駅前店(2001年オープン)、石川町駅前店(2008年オープン)があります。歴代の店長は元利用者。独立してお好み焼き屋を始めた人もいます。K2がてがける中では一番ハイレベルで、地域の一番店を目指しています。

大阪風のお好み焼きの他、もんじゃ焼き、広島焼き、チヂミなど多彩なメニューを展開。被災地支援の一環として、石巻の食材を使った料理もある。

 

ニーズの変化に合わせて、支援のスタイルを展開する

利用者は9割方男性ですが、女性ももちろん受け入れています。昔は、口コミや新聞の取材記事によって利用者が集まりましたが、現在は、受託している国や自治体の事業経由が一番多いです。インターネット検索も増えてきているため、ウェブサイトのリニューアルを考えているところです。また、なるべく若いうちからの切れ目のない支援が大切という観点から、県内7~8つの高校へのアウトリーチをもともと手掛けており、K2がキャリア教育の授業を担当している高校もあります。

20年前は、10代の登校拒否・家庭内暴力などの問題を抱えた子どもが主な利用者で、「一時的につまずいている状態」からの復帰の足掛かりとして、学校以外の活躍の場を提供すれば大丈夫だったのです。国内外での支援プログラムは、その子の将来への希望(進学や資格取得、就職など)へのステップのひとつという位置付けでした。

しかし10年前くらいからは、複数の課題を抱えた20~30代の若者が増加してきました。彼らは、停滞している期間が長いために、主体的に将来への道筋が描けないことが多く、K2は、継続的な就労の場(と形態)を自前で増やしていく必要にせまられました。取材などで、「手広く展開しているんですね」と言っていただくことがありますが、決して最初から多角化しようと計画してきた訳ではありません。

結果的に、K2のスタッフは、マネジャークラスも含め、元利用者が6~7割を占めるようになりました。正社員として働きながらメンタル面での治療を継続する人など、並行支援が必要な人もいますが、新しい利用者を迎えたとき、過去の自分の立場にたって考え、先輩として、適切なサポートを提供できます。また、共同生活が長いので、強い信頼関係を築けているのも強みでしょう。

東日本大震災で、元スタッフの被災がきっかけとなり、被災地支援事業もスタート。石巻食材を使ってつくったお弁当を、横浜市役所や複数の区役所で販売しています。石巻に拠点を設けて活動中ですが、利用者が支援する側に立つと元気になることを、ここでも強く実感しました。

 

事業の周辺に、新しい事業を生み育てる

地域で雇用の場を継続していくにともない、事業の周辺にも事業が生まれてきます。元利用者やスタッフが結婚して子どもができて、「子育て支援の場がほしい」という要望が出てきたことと、元利用者の若者にとっての働く場としても可能性があると考え、子育て支援拠点と24時間対応の「ぽにょぽにょ学童クラブ」ができました。地域で学童が閉鎖されていく現状を知り、逆に、これは参入のチャンスがある!と考えました。子どもを通じて、その家族に若者就労支援を理解してもらう場にもなっています。

横浜市立みなと総合高校の学食「アロハキッチン」の運営も行っています。高校との連携の中で、学食の運営する業者さんが定着しないという現状を知り、若者の就労支援の場として活用することを条件に受託しました。お好み焼き屋のセントラルキッチンとしても機能しており、対人関係が苦手な利用者は、ここではお客さんの目を気にすることなく働くことができます。

 

地域から愛され、信頼される存在になるために

飲食店などの事業を通じて、日常的に地域の人たちと触れ合う場はあるものの、K2がこの地でより存在感を増していくためには、別のアプローチを考える必要があるかもしれません。「ねぎしの森のハチミツ」は、そのツールとして大きな可能性を秘めていると感じます。さらに、地域の人に注目・理解してもらえるようなメディアへの出方や、地域への貢献度を数字で示していくなどの取り組みも、今後進めていきたいです。

(文責:棟朝)

第26回社会事業家100人インタビュー4月7日(月)19:00~開催!!

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社会事業家の先輩にビジネスモデルを学ぶ!
社会事業家100人インタビュー 第26回
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~足元にある豊かさを新たな産業にするしかけ~

ゲスト:(株)四万十ドラマ 代表取締役 
     畦地履正様
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2014年4月7日(月)19:00~21:00 
@ ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット(渋谷)
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一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 、
特定非営利活動法人ETIC.の協働事業として開催する、
先輩社会事業家からビジネスモデルを学ぶための本企画。

今回は(株)四万十ドラマ 代表取締役 畦地履正様がゲストです!
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「四万十川に負担をかけないものづくり」
を行いなら、四万十に生きる人々や山川田畑、風景など
四万十川流域の資源を活かした新しい環境観光産業を発信。

2007年から指定管理者として運営する道の駅「四万十とおわ
では1日1000台未満という交通量の少ない国道に面しながら、
年間来場者数15万人、年間1億5千万円を売り上げる(2012年)。

もともと地域にあるものをみつけ、活かした商品開発。
生産者の意識を育て、ともに課題に取り組みながら、
生産現場を守り育てる取り組み。
そして四万十川全流域の企業と団体が連携して新しい観光産業
のしくみを作り、四万十の価値を伝えていく活動。
四万十川をまんなかにして、地域住民と都会をつなげ、
足元にある本当の豊かさ・生き方を発信しながら
流域に住む人とともに、新たな産業をつくってきた。

この実績・経験をもとに他地域の支援も行う
四万十ドラマの畦地履正さんに、
地域の足元にある豊かさを新たな産業に育てるしかけを学びます。

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● ゲスト:畦地履正(あぜち・りしょう)様
     (株)四万十ドラマ 代表取締役 
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プロフィール:
1964年四万十町(旧十和村)生まれ、 83年高知県立東高等学校卒業、
同年通信関連企業に就職。87年、十川農協(現高知はた農協)に就職。
94年に四万十川中流域町村(大正町・十和村・西土佐村)が出資した
第三セクター会社、株式会社四万十ドラマに就職。
2005年に第三セクターから完全民営化。市町村合併に伴い、行政の株式を
買い取り地域住民が株主となり新たにスタート。
07年に「道の駅四万十とおわ」の運営を四万十町より指定管理をうける。
同年10月代表取締役社長就任、現在に至る。

「四万十川に負担をかけないものづくり」をコンセプトに地域と密着し、
自然循環型企業を目 指した事業展開を行っている。
四万十川の会員制度「RIVER」の立ち上げや、四万十川の地域資源を活かした
商品開発に携わり、中でも「四万十ひのき風呂」は、捨てていた端材を利用した
循環型商品として80万枚を出荷、そのほか「しまんと緑茶」「しまんと地栗」
シリーズや「四万十川新聞バッグ」などの商品を開発し地元産業を築いている。
その他、四万十川流域集客システムをつくる「四万十また旅プロジェクト」にも
参画し、新たな観光産業を生み出している。
2012年より「東北新聞バッグプロジェクト」を立ち上げ、東北復興の支援をしている。

2007年度 高知県地場産業大賞受賞(地域おこしでは初めての受賞)
      農林水産省「立ち上がる農山漁村」認定
2008年度 経済産業省「ソーシャルビジネス55選」認定
2010年度 総務省「地域づくり総務大臣表彰」優秀賞受賞

主な役職:
2010年 総務省・地域力創造アドバイザー
     高知県・観光おもてなし委員
2011年 農水省・6次化産業ボランタリープランナー
     石川県・里山創成委員
2012年 ふるさと財団・地域再生マネージャー

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● 開催概要
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日時:2014年4月7日(月)19:00~21:00

場所:ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット(渋谷)
   http://www.etic.or.jp/etic/access.html

定員:約30名

参加費:  
 SBN会員: 1,500円
 SBN非会員: 2,500円
  https://socialbusiness-net.com/
※うち500円は、ゲストの指定する寄付先に寄付させていただきます。
 (参加費は当日、受付にて徴収させていただきます)
※同日にSBN会員申込していただくと、会員価格でご参加できます。

対象:
社会事業家として事業を始めている方、これから始めようとされている方
ビジネスモデルの作り方を先輩社会事業家から学びたい方

主催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)
   IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 
協力:特定非営利活動法人ETIC.

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● プログラム
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◇ ゲストのご紹介、趣旨説明
◇ ゲストご自身からビジネスモデルの紹介
◇ インタビュー
  インタビュアー:ソーシャルビジネスネットワーク理事、  
  IIHOE代表者 川北秀人
◇ 参加者からの質疑応答

・参加者からの質疑応答の時間を設けますので、
 ご参加いただく方は1人1回はご質問ください。

・ゲストの事業についてご理解いただくために、事前資料をお送りします。
(参加申込いただいた方にご連絡します。)

・希望者の方は終了後に1時間程度懇親会にご参加いただけます。
(同会場にて。1500円程度予定)

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● 申込みについて
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下記URLのフォーマットに記入の上、4月6日(日)までにお送りください。
定員になり次第、締切らせていただきますので、お早目にお申込みください。

http://goo.gl/skWyL

※開けない場合は、メールにて、お名前、ご所属、ご連絡先(eメール、電話番号)、
SBN会員有無、懇親会参加可否 を書いてお送りください。
送付先 hoshino.iihoe@gmail.com

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【お問い合わせ先】
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 IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 担当:星野
 hoshino.iihoe@gmail.com 070-6971-3523

※本事業はSBN理事を務めるIIHOE川北と、SBNとの協働事業のため、
申込対応業務をIIHOEにて担当しています。

◇本プロジェクトのfacebookページ
 http://www.facebook.com/100JapaneseSocialEntrepreneurs
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【レポート】『社会事業家100人インタビュー』特定非営利活動法人JCI Teleworkers’ Network 理事長 猪子和幸氏

『社会事業家100人インタビュー』第24回

ゲスト: (特)JCI Teleworkers’ Network 理事長 猪子和幸様

 

 

 

<ゲストプロフィール>

1938年徳島市生まれ。62年に高等学校(商業科)教員となる。

73年、徳島県情報処理教育センター創立と同時に入所し、以後14年間、生徒実習、教職員研修、教育情報処理システムの開発に携わる。

87年、現場に復帰。高等学校へのコンピュータシステムとインターネット環境の導入・整備と学習活動での有効利用を実践的に研究。この間に高等学校で使用する文部省検定教科書、情報処理検定試験用の参考書・問題集、専門誌へのレポートなどの執筆も行う。

99年高等学校教員を定年退職、障害者・高齢者など「社会生活・職業生活弱者」の自立をICT利活用技術の指導とテレワーク(在宅就業)の創出で支援することを目的として「JCI Teleworkers’ Network」を創設(2002年特定非営利活動法人認証)。以降、「チャレンジド」とともに、新しいワーキングスタイル・ライフスタイルの創出とテレワーカーたちの全国規模のネットワーク構築に努めている。

 

特定非営利活動法人 ジェイシーアイ・テレワーカーズ・ネットワーク 理事長
特定非営利活動法人 市民未来共社 理事
一般社団法人 ソーシャル・ビジネス・ネットワーク 監事
公益財団法人 e-とくしま推進財団
 理事

 

 

<今回のインタビューのポイント>(インタビュアー IIHOE川北)

技術の進化は、社会の進化をもたらすか。猪子先生の実践は、その問いに「Yes」と答え続けている。
どんな障碍・ハンディキャップを負う(チャレンジド)人も、支援を受けるだけ、働かされるだけでなく、他の人々と共に働く基盤づくりの担い手にと、しっかり歩を進めていく。そんな就労の場を創り出す姿勢とプロセスを、ぜひ学びとっていただきたい。

 

テレワークの先取り。チャレンジドから健常者へ

私は1962年から 37年間、高等学校の職業学科で商業専門の教員をしていました。
生徒たちは、卒業と同時に社会に出て、仕事に就く子がほとんどでしたから、「健全な職業観を持って欲しい」という話をいつもしていました。自分ががんばったことが人の役に立ったらうれしい、それでお金がもらえたらもっとうれしい、そんな風に思えたら、その子たちは幸せな職業人生を送れるのではないかと思ったのです。退職の当日まで生徒たちにそんなお説教をして、それをそのまま退職後の仕事に活かしたいと思い、退職の翌日に団体を立ち上げたのです。

私たちの事業は一般には障害者支援だと思われていますが、「障害者支援」ではなく、「チャレンジド」の社会的・経済的自立のための事業です。

中にはもちろん、障害のある人も、難病患者も、高齢者や子育て中の方も、家族の介護を抱えた人もいます。私たちは「心身の障害、難病、高齢などのために社会生活・職業生活の中で弱者の立場を強いられている人たち」をチャレンジドと呼びます。チャレンジドの人たちが胸を張って仕事をするために、働くことを通じて自己実現・社会参画するために、いろいろな事業を考え、生み出し続けています。

私の教員時代の仕事の半分は、コンピューターとインターネットに関わる仕事でした。ICTをツールとして利活用できれば、チャレンジドの人たちは時間と場所という制約から解放される。そこに新しいワーキングスタイルができる。新しいワーキングスタイルは、そのまま新しいライフスタイルにつながります。テレワークという新しい仕事のありようは、障害者やチャレンジドの人たちだけでなく、あらゆる職業生活を送る人に望ましい形だと私は思います。親が家で一生懸命働く姿を子どもが見て育つ。家を支えているのはそうした親のがんばりであり、仕事なのだということを子どもたちが理解するためにも、テレワークは理想的です。

そういう意味では、私たちはテレワークの先取りをして、新しい仕事のありかたをつくり、それを健常者に教えていくのです。そう考えれば、誇り高く仕事をすることができます。

 

障害者だからこそできる仕事・障害者でなければできない仕事を選ぶ

私たちは、仕事を創ったり展開していく際の理念として、「誇りをもって取り組める仕事をつくる」ということを大事にしています。働くことを通じて自己実現し、社会に貢献するという喜びを実感するためには、「障害者でもできる仕事」ではだめなんです。「障害者だからこそできる仕事」「障害者でなければできない仕事」でなければなりません。

例えば点字付き名刺の作成。文字の部分は、身体に障害があるが目の見える晴眼の障害者がつくり、点字プリンターで打ち出した点字シールは全盲のスタッフの自宅に送って検品してもらい、誤りを指摘して送り返してもらいます。そしてその点字シールを名刺に貼って、1枚1枚カッターで切り取る仕事は、繰り返し仕事が得意な知的障害のあるスタッフがやっています。名刺1枚つくるにも、それぞれの得手を活かしたチームで、彼・彼女たちだからこそできる仕事になっているのです。

また、ウェブのアクセシビリティ・チェックも、大きな事業に育ってきました。わかりやすく言えば、ウェブサイトが多様な障害を持つ人々にとって使いやすいものになっているかどうかを検証することです。ウェブのアクセシビリティは視覚障害者だけを想定してつくられることが多いですが、実際には、身体障害にも、知的障害にも、精神障害にも、様々な障害特性に沿った対応が必要であり、情報を伝えるだけでなく、WEBを通じた双方向のコミュニケーションができなければなりません。そのためには、それぞれの障害特性を理解し、どういう表現なら伝わるか、どういう配置であれば操作がしやすいか、といった細かい確認・配慮が必要になります。私たちの団体には、本当に様々な障害特性をもった人がいますから、ウェブのアクセシビリティを診断・評価するには最も優れた集団だと思っています。2007年に徳島県にウェブのアクセシビリティ・チェック事業を提案したところ採用され、県内24の地方自治体のウェブアクセシビリティについて診断・評価し、改善提案を行いました。その実績が買われて総務省の20万ページに及ぶホームページのアクセシビリティ・チェックをするという大きな事業の一端を受託することもできました。こうしたご縁がもとで、(株)インフォ・クリエイツのパートナーとして、NICT((独)情報通信研究機構)助成金事業「障害者雇用確保のための、在宅就労とウェブアクセシビリティの普及」にも参画して企業との連携を深めています。障害者をテレワーカーとして雇用することによる経営合理化のメリットを積極的に企業に伝えてきた実績として、2013年9月以降、IT関連企業3社に13名が雇用されています。

こうしたウェブアクセシビリティ・チェックの仕事は今後、多くの障害者団体にとって大事な仕事になっていくでしょう。幸い、私たちはこれまでの事業の中で多くの技術者を養成できてきましたから、これからは技術者を養成する仕事を全国展開していく予定です。2012年には、愛媛・香川の有志とともに「四国チャレンジド就業支援ネットワーク」を立ち上げ、情報共有、新規技術の協働研修、人材育成プログラム・指導教材の共同開発、さらには共同受注の実現による機会損失の回避などで連携を進めています。また、2013年から「えひめICTチャレンジド事業組合」と提携して、「ウェブ・アクセシビリティ診断技術者」に特化した人材育成プログラムを展開、当団体からスタッフを出向しての講習会を複数回実施しています。
逆転・反転の発想で障害を個性に

このように、それぞれの得手を活かした「誇りを持って取り組める仕事」をしていこう、と決めていますから、私たちは、袋詰めのような単純作業の仕事を請け負うことはありません。「障害者だからこそできる仕事」にこだわって選んでいるから、当初は仕事がない、ということもありました。その時は、勉強の時間です。勉強の時間を与えてもらったと考えて、それぞれの技術を磨けばいい。

チャレンジドであるということで、気持ちがネガティブになってしまう人もいますが、私たちは仕事を通して勉強させてもらっている身です。その仕事でお金までもらって、本当にありがたい。そういうポジティブな考え方でいこう、ということをいつもみんなに言っています。「障害があるから職場に行けない」のではなくて、「職場に行かなくてもいい」と考えてみる。お客さんがあなたのところに仕事をもってきてくれるようになる、そのためにその人自身の技術を磨き、人柄を伝えて、信頼関係をつくる。「どんなことでも、JCIに頼めば熱く受け止め、自分のこととして真剣に取り組み、必ず期待を大きく上回る成果を返してくれる」という厚い信認(JCIブランド)」を、一人ひとりの真摯な努力により醸成することと、「退路を断って、前にのみ道を拓く覚悟」を共有することが、私たちの「原動力」と心得ています。

2010年に、総務省の「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」に採択され、民間企業の協力を得て「JCI在宅就労支援センター」という、テレワーカーのためのICT基盤を整備しました。また2012年から徳島県の「新しい公共の場づくりのためのモデル創出事業」として、本センターを利活用したテレワークによる地域雇用の創出をめざして、徳島県と協働で人材育成を推進しています。

チャレンジドが自宅にいながら職業訓練を受けられるe-ラーニングシステムも導入しました。これで、精神障害者で集合教育が苦手な人や、移動が困難な重度障害者たちにも、在宅でIT技能を習得してもらうことができるようになりました。在宅業務管理システムの導入による業務の受発注・納品管理や、自宅のPCの機能が低くてもサーバー内で作業が行えるクラウドコンピューター「シンクライアントシステム」の導入など、テレワークをサポートするしくみは着実に進化しています。

さらに、愛媛県新居浜市の(株)白石設計(就労継続支援A型事業所を併設)と提携して、CAD学習教材開発と人材育成を推進し、製図業務をテレワークとして展開していくことも計画しています。ICTを活用した在宅就労の機会は今後ますます広がっていきます。

 現在、私たちの拠点に通うことができるのは、会員全体の10~15%で、それ以外は完全に在宅就業です。県外にも多くの会員がいます。われわれの団体は90%が多様な障害をもった人たちで成り立っていますから、これからはチャレンジドが主体となって経営する、複合的な経営体になっていかなければなりません。一つの属性に偏ったり、専業していたのでは事業体は続きません。チャレンジドとして様々な困難があるからこそ、それぞれが工夫をし、強くなれる。ものの見方が変わる。逆風を追い風に変えるためには、「回れ右」をすればいいのです。

私の仕事は、お子様ランチのチキンライスに刺してある小さな日の丸の小旗を、控えめに振るだけです。旗の動きを敏感に察知し、的確に増幅し、速やかに行動に移し、嬉しい成果を上げてくれるのは、頼もしいJCIの会員達です。

毎年の総会で、創設の原点・行動理念を確認しています。


 

 

 

 

JCIの会員たちには、逆転・反転の発想で意識改革しながら、障害を個性として社会に貢献してほしい。きっとそれができると、これからも信じて突き進んでいきます。

 

第2回生き方・働き方を変える大学・陸前高田ゼミ(3月21日~23日) 誰にも”居場所と出番”があるまちづくりスタディ・ツアー 参加者募集

 

 

 

現在7名の申し込みとなっており、あと数名受け付けが可能です。

(往復の交通費、食事代等の実費のみご負担ください。※宿泊費はSBNが負担します。)

参加希望の方は下記のメールアドレスまで、①~⑤の情報を記載しお送りください。

info@socialbusiness-net.com

①氏名
②携帯電話番号
③メールアドレス
④緊急連絡先(氏名・電話番号・住所)
⑤学びたいこと

第25回社会事業家100人インタビュー3月4日(火)17:00~ 開催!!

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 ◆社会事業家100人インタビュー
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 新たなビジネスモデルを創りだした先輩社会事業家100人に、そ
 のビジネスモデルを確立した経緯を学ぶ『社会事業家100人イン
 タビュー』。3月4日は、K2インターナショナルグループが経営
 するカフェ「ハニーカフェブンブン」(横浜根岸)での開催です!

  ◇日時:3月4日(火)17:00~19:00(懇親会19:00~20:00)
  ◇場所:ニコマル ハニーカフェ ブンブン(横浜・根岸駅)
  ◇ゲスト:岩本真実様
  (株)K2インターナショナルジャパン
  湘南・横浜若者サポートステーション 統括責任者
  (特)ヒューマンフェローシップ 代表理事

 引きこもりやニートの若者たちの自立支援に20 年以上取り組んで
 きたK2インターナショナルグループ。
 若者自立支援のための共同生活寮を9拠点運営するほか、相談事業、
 地域の子どもの居場所事業、学習支援、就労支援・ジョブトレー
 ニング事業を展開。就労支援事業の中では自営店舗を運営し、
 外部企業に頼らず、自分たち自身で雇用を創出。
 会員は250円という格安であたたかい食事を食べられる「にこまる
 食堂」やお好み焼き屋「ころんぶす」など若者のジョブトレーニング
 の場でもある飲食店を、横浜市内に6店舗経営してきた。

 横浜市との協働事業「若者サポートステーション」事業として
 「にこまるカフェ相談室」も併設。日常生活に困難を抱える若者たち
 が夜間でも来訪して相談できる相談窓口をつくり、経済的困窮や精神
 疾患、障がい、虐待経験など、利用者が抱える複雑な問題について
 専門的なサポーターが個別に寄り添いながら支援する場を提供している。

 自営店舗を運営して直接ジョブトレーニングの場をつくりだし、成長
 してきたその裏側にはどのような工夫と事業戦略があったのか。
 複雑な課題を抱える若者に寄り添った支援サービスを届けるための
 行政への働きかけと協働のしくみはどのようにしてできたのか。
 岩本真実さんに伺います。

   *詳細:http://blog.canpan.info/iihoe/archive/255

 ◇場所:250Nikomaru Honey Cafe Boom Boom
  (ニコマル ハニーカフェ ブンブン)
 神奈川県横浜市磯子区原町2-13-101
 JR京浜東北線・根岸線 根岸駅より徒歩5分。
 http://tabelog.com/kanagawa/A1403/A140308/14051958/

 ◇Web申込:http://goo.gl/skWyL
 ◇参加費:SBN会員1,500円、非会員2,500円
 *うち500円は、ゲストの指定する寄付先に寄付させていただきます。
 *懇親会(19:00~20:00)参加費 別途2,000円程度

 ◇参加対象者:
 社会事業家として事業を始めている方、これから始めようとされ
 ている方、ビジネスモデルの作り方を先輩社会事業家から学びたい方

 ◇定員:30名

 ◇主催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)、
     IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]

 ◇問い合わせ先:
  IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 担当:星野
     hoshino.iihoe@gmail.com 070-6971-3523

3月15日、「被災地復興ソーシャルビジネスメッセ」出展者二次募集開始(@仙台、無料)

3月15日に開催される「被災地復興ソーシャルビジネスメッセ」の出展者、二次募集を開始します。

復興支援に携わる100の事業者が出展する展示会。物販、商談、協力者の募集が可能です。
展示会に合わせ、復興ビジネスノウハウ講座などのステージプログラムも開催します!

出展料、ステージプログラム聴講料は全て無料となっています。 

今年の会場は仙台市の繁華街に位置し、物産市として一般の方に対する呼びかけも
行っているため、多くの来場者が見込まれる予定です。

申込みは、下記のURLからエクセルファイルをダウンロードいただき、
ご記入の上、下記宛先までメールまたは郵送にてお送りください。
申込書はこちら

■申込み
*出展案内は申込み締切1月31日となっておりますが、2月7日(金)まで延長しています
E-mail::sbforum@socialbusiness-net.com
郵送:〒107-0062 東京都港区南青山1-20-15 Rock1st 3F
一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク 担当伊藤 宛

自分が住みたいまちを考えるワークショップ(第3回課題先進国会議)参加者募集開始

「課題先進国会議」第3回目は、「自分が住みたいまちを考えるワークショップ」として展開します。
これからまちづくりが行われる被災地がフィールド。だから絵空事じゃない。
誰にも“居場所と出番”があるまちのモデルを、社会的企業家や、就労困難者支援の専門家と共に考えてみませんか。
被災地からは、陸前高田市の老舗の味噌醤油メーカー、八木澤商店の河野社長がお越しになります。

•日時:2014年3月7日(金)19時~22時 *開場18時45分
•場所:アミタホールディングス株式会社 東京本店
    (東京都千代田区九段北三丁目2番4号) *市ヶ谷駅より徒歩5分   
•主催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク
•協賛:NEC
•協力:アミタホールディングス株式会社
•募集:30名程度 
•参加費:会員)無料、非会員)500円 *軽食をご用意しています!
お申し込みはこちら
 

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』特定非営利活動法人マドレボニータ 代表理事 吉岡マコ氏

『社会事業家100人インタビュー』特別編(静岡開催)

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

 
 

ゲスト: (特)マドレボニータ 代表理事 吉岡マコ様

<ゲストプロフィール>

自身の産後の経験から、産後の女性の健康をサポートするしくみが日本にはまったくないことに気づき、1998年に「産後のボディケア&フィットネス教室」を立ち上げ。「私以外にも苦しんでいる人はきっといるはず!」「産後はダイエットではなくリハビリ」「母の健康は家族の健康」という信念の下、産前・産後に特化したヘルスケア・プログラムの開発、研究・実践を重ね、2007年に(特)マドレボニータを設立。2006年より産後ヘルスケアのプロとして「産後セルフケアインストラクター」の養成・認定の制度を整備。産後女性に日々接する現場をもつNPOとして、09年からは産前・産後のリアルを伝え、当事者の心構えと備え、そして周囲からの適切なサポートにつなげてもらおう、と『産後白書』を発行して産後ケアの社会的必要性を広く伝える活動を行っている。2011年マドレ基金をたちあげ、ひとり親、多胎児の母、障碍児の母など、社会的に孤立しがちな母親たちへの支援に着手。NEC社会貢献室との協働事業「NECワーキングマザーサロン」では、すべての女性を対象に「母となって働く」ことについて考え、語る機会を提供。2009年よりのべ4000人を超える女性が参加した。

<今回のインタビューのポイント>(インタビュアー IIHOE川北)

活動を始める・続けるだけでなく、質を保ちつつ一気に拡げるためには、しくみ化と発信が不可欠。それを着実に実践しつつ、事務局の運営体制も、これまでにないものを創出しながら、成長と進化を続けてきた同会から、基礎の実践と進化の姿勢を学び取ってほしい。

 

出産をめぐるパラドックス

マドレボニータ」はスペイン語で「美しい母」の意味です。母となったからこそ見えてくる醜い部分も受け止められるような器量を持つこと。それが私達の考える「美しい母」であり、そのために必要なのが産後ケアです。出産は確かにおめでたいこと。でも、「おめでとう」だけではすまされない現実があることも知ってほしい。産後の女性の10人に1人が産後うつ*を発症しているといわれています。普段、マドレボニータの産後のボディケア&フィットネス教室等でたくさんの産後の女性に接する現場の感覚としては、精神的にしんどい人はもっといるはず、と感じます。

私たちが2010年に行ったアンケート調査**によると、「産後うつと診断はされていないが近い状態になった」、と回答した人が100人中80人ちかくいました。実に10人中9人がなんらかの精神的なツラさを抱えながら子育てをしていることになります。また、幼児虐待について報告されている件数の内44%は子どもが0歳児の時に起こっているという調査結果もあります。「かわいい赤ちゃんを虐待するなんてなんてひどい母親か」というのが世間一般の反応でしょう。でも出産後の問題は母親だけを責めても解決しないのです。

日本の母子保健のシステムは、妊娠中、出産、乳児向けなど、出産前と生まれた赤ちゃんに対しては手厚く整備されています。でも産後の母親に対するケアは実はほとんどないのです。産後、女性の身体には特有の変化が起こり、精神面も不安定になりがち。そうした産後特有の変化や不調についてアドバイスできる専門家はほとんどいません。医師や助産師は出産についての知識はあっても、退院後の患者にはあまり接点がなく、専門知識として「産後」を教わることもほぼありません。医療機関では産後の生活をケアできないのです。産後に不調を訴える人がいても、産後に特化したアドバイスをできる人がいない。じゃあ、自分たちがその専門家になろう!と思って、産後の身体をケアするための研究開発をはじめたのが、「マドレボニータ」のはじまりです。

 

*産後うつ:産後に発症するうつ病で、10-20%に生じるとされています。一日中気分が沈む、日常生活の中で興味や喜びが感じられない、赤ちゃんに何の感情もわいてこない、食欲もなく体重が減る、不眠/睡眠過多などがサインとなります。マタニティ・ブルー(ズ)とは異なり、治療を必要とする病気です。

出典:母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」 http://www.mcfh.or.jp/jouhou/yougo/sangoutu.html

**2010年8月~同9月にかけ、インターネット上のアンケートフォーム等を用いて計106件の回答を得た。

 

現場を知ってる専門家は私達!

私は大学院時代に運動生理学を学びつつ、大学院の外ではヨガ、ピラティス、東洋医学、ダンスセラピー、骨格調整、オーラソーマ、レイキなど、数々のヒーリングアーツを勉強していたこともあり、自分の産後の身体のあまりの不調に納得できなくて、何か方法がないかといろいろ考えました。でも、医師に聞いても助産師さんに聞いても、産後の女性の体を本当に理解してアドバイスできる人はいなかった。産後1カ月を過ぎた頃、以前習っていたヨガの先生が連絡をくれて、家に来てくれることに。産後の身体に必要なケアを、自分を実験台にしながら考えていきました。

その結果わかったのは、産後の身体に必要なのは治療ではなく、リハビリだということ。リハビリによって自分自身の力を少しずつ取り戻すことができます。医療従事者による治療ではなく、当事者の苦しみをちゃんと理解して、それを解決するような、市民発のボディケアを開発しよう。そのプログラムをつくろう。まずはそれで自分が元気になりたい、と考えたのです。そして取り組むうちに、自分だけでなく、苦しんでいる人はきっとほかにもいるはず、と思い、産後のボディケア&フィットネス教室を1998年の9月にスタートさせました。自分の子どもが生後6か月のときでした。

最初の年の教室にきてくれた人はのべ約100人。最初は試行錯誤の連続でした。自分の身体を実験台にした、サンプル数1のプログラムでしたから、来てくれる女性たちをよく観察して、どんな不調が出ているか、どんなケアが効果的か、よく見たり聞いたりしていきました。でも本当のニーズは目に見えません。聞くだけでなく、その裏の本当のニーズを探ろう、彼女らの言動を注意深く観察し、考察し、本音を読みとろうと努めました。見えない本当のニーズ、そこにサービスを提供していくこと。その結果できあがったのが現在のプログラムで、1回2時間の4回連続講座。運動、コミュニケーション、セルフケアの3 部構成になっています。1回目は、ほとんどの人にとって産後初めての外出で、なんとか教室に来るだけで精一杯。それから徐々に身体をほぐし、精神的に余裕も出てきたあたりで、参加者に「自分自身の身体をちゃんとケアしよう、自分のための時間をつくろう」という意識が芽生えてきます。自分の体への意識が高まり、体力と身体スキルが身に付いてきた3回目からは、骨盤呼吸法などちょっと難しいことも取り入れて、自分で自分の身体をコントロールできる技を学んでいきます。そして最後の4回目ではウォーキングをして、美しく歩いて締めくくります。このように、たったの4回のコースでも、人の心身に大きな変容を起こすような構成にデザインされています。

こうした教室は、産後に外に出るきっかけをつくることができる、という意義もあります。産後のプログラムは決して、元気なお母さんだけが来るところではないんです。赤ちゃんと二人きりの時間を長く過ごす母親にとって、どんな人にでも産後うつは起こりうるし、幼児虐待は他人ごとじゃありません。母親たちの笑顔は当たり前のものじゃないんです。だからこそ、産後の早い時期から、外に出て人と出会い、自分の心身と向き合う機会をもち、自分の力を取り戻していくことが必要なのです。

現在では、12都道府県に拠点があり、全国50か所で教室を開催、年間約5000人にプログラムを提供しています。22人のインストラクターが各地で教室を開き、10人の事務局スタッフがそれぞれ在宅で、クラウド事務局という形でワークシェアをしながら団体の運営にあたっています。

最初は私1人で始めたプログラムでしたが、2002年からインストラクターの養成をはじめ、06年にインストラクターの認定制度をつくりました。産後プログラムを実施するにあたり必要なことをすべて洗い出した、300点満点の筆記試験と実技試験です。この試験があることで、インストラクターに産後プログラムの専門家としての緊張感とプライドがうまれます。この制度を導入したことで去っていく人もいましたが、ここまでコミットしてくれた人がその後の仲間として残ってくれました。

また、2段階の会員制度を設けていて、賛助会員は2年間で5000円の会費で現在200人。定期的に「マドレ通信」を届けて、私たちの活動を応援していただいています。一方、正会員は年間会費が25000円。正会員にのみ配布する「マドレジャーナル」を発行し、かなり中身の濃い情報を伝え、強い共感をしてくださる方々をつないでいます。現在、正会員は200人弱ですが、この中には、「活動に参画したい」という方が多く、私たちの事業の重要な担い手になっています。

 


手づくりの「公」をつくる

私達の事業は産後ケアのプログラムを提供していくことが中心ですが、プログラムを重ねるにしたがって、年間5000人の産後の女性に接している知見、現場で起きている実態を世の中に伝えていかなければ、と考えるようになりました。「産後の身体の変化について、出産前に知っていたら備えができたのに」、「夫や家族に、産後の心身の実際を知って欲しい」という参加者の声にも後押しされて、産後のカラダとココロのリアルを伝えるための『産後白書』を2009年から発行しています。マドレボニータの教室に通っている産後女性620人にアンケートを実施し、インタビューで生の声を拾った第一弾は、「出産直後からの身体の状態と夫婦関係」をテーマにアンケート調査結果をまとめ、産後女性の身体と心の変化を周りの人にも理解してもらうためのツールとなりました。さらに『産後白書2』では、「産後から考えるはたらきかた」をテーマに、「子育てしながらはたらく・はたらきたい女性1400人のリアル」と題して、マドレボニータとNEC が協働する事業「NECワーキングマザーサロン」の参加者アンケートや一般のWEBアンケートで1400人分の声を集め、子育てしながら働くことについての不安や悩みについてまとめました。そして2012年に発行した『産後白書3』では、「産前・産後のパートナーシップ」について、さまざまなパートナーシップのかたちを、当事者たちの声を中心にまとめています。

こうした、産後の実態を社会に広く発信していくことで、日本の母子保健システムでは見過ごされている「産後」を「出産」や「妊娠」と同じようにケアすべき事象として、産後ケアの社会的必要性、そして周囲の理解を広げていきたいと思っています。

本来、産後ケアは公的なサービスであるべきです。私たちの教室に来られない人にも、産後ケアを届けたい。最近は、地区センターで教室を開催したり、産婦人科病院のプログラムとして教室を開催することも多くなってきました。人口4500人の北海道清里町では、町と提携して清里町の産後女性の3割に無料(公費負担)でマドレボニータの産後プログラムを届けました。また、杉並区では「子育て応援券」というバウチャー制度があり、出生時に配布される4万円分の無償応援券を使用して、託児、家事代行、産後ケアなど様々なサービスを利用することができます。その無償応援券を使って、私達の教室に参加することもでき、それによって杉並区の受益者は4倍になりました。

こうして行政に積極的に働きかけることで、産後ケアを公的なサービスにしていきたいと考えていますが、私たちがプログラムを届けられているのは、日本全体で見ればまだほんのひとにぎりです。プログラムに参加するためには、通常は4回講座で12000円程度の参加費がかかりますから、それを払えない人もいるでしょう。ならば自分たちで手づくりの「公」を広げていこうと、「産後ケアバトン制度」を始めました。個人や企業から寄付を募って「マドレ基金」という基金をつくり、特に孤立しがちなひとり親や障碍をもつ児の母、双子や三つ子など多胎児の母などに受講料の一部または全額を補助するという制度です。マンスリーサポーター制度など個人からの寄付や企業からの寄付によって、産後ケアプログラムを受けた人が、次の人へとバトンをわたしていくしくみにもなっています。これまで、2011年3月から2013年9月現在、のべ167組の母子にこの制度を使ってマドレボニータのプログラムを受けていただきました。

私たちの出発点は、医療でも企業でも見落とされてきた「産後」という分野を市民初で開拓するというパイオニアスピリット。参加者からボランティアスタッフとなってくださる方は年間250人を超え、マドレボニータという団体が、単なるサービス提供者ではなく、市民の力を活かすプラットフォームとして存在していることを実感しています。教室の卒業生は、サービスの受益者で終わらず、卒業生の何割かは、応援の意味で会員となってくださり、そこからボランティアスタッフとしてプロジェクトへ参画してくれたり、新たなプロジェクトを提案してくれたり、積極的なコミットをしてくれています。それによって、団体本体だけではなしえなかった相乗効果もうまれています。会員のボランティアから有給スタッフになる人、マドレボニータに関わることで再就職先を見つけた人など、マドレボニータを通して、新たな人生を切り開いていっている人も多くみかけ、とても光栄な気持ちでいます。しかし、私たちが活動を続けていく一方で、幼児虐待は後を絶たず、産後うつやそれに近い症状を訴える女性の数はなかなか減りません。産後は、社会との接点が途絶え、最も孤立しやすい時期。その産後をサポートするしくみが日本には絶対必要です。すべての母となった女性が産後ケアを受けられる社会をめざし、「美しい母」を増やしていくこと。そうすれば日本は、世界はもっとよくなる。そう信じて、手づくりの公をもっともっと広げていきたいと思います。妊娠、出産で途切れず、産後まで責任をもってケアする「世界に誇れる母子保健」のシステムが日本にちゃんと整備され、産前から産後ケアまで、格差無く行き渡ること、これが私たちの究極の目標です。ひとつひとつの事業は、すべてここを目指すためにおこなっているのだということを忘れずに、関わる人たちとそのことを常に共有しながら進んでいきたいと思います。

【レポート】『社会事業家100人インタビュー』 株式会社アットマーク・ラーニング 代表取締役社長 日野公三氏

「先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ」

第23回社会事業家100人インタビュー

 

 

(株)アットマーク・ラーニング 代表取締役社長 日野公三さん

2013年12月19日(木)19時~21時

於:(特)ETIC.ソーシャルベンチャー・ハビタット

<プロフィール>

1982年岡山大学法文学部経済学科卒業後、株式会社リクルートに入社。88年に企画会社を設立し独立。94年に神奈川県の第3セクター「ケイネット」(パソコン通信会社) 取締役就任。99年にアットマーク・ラーニング設立、代表取締役社長就任。2000年に国内初のインターネットを使った通信制高校「アットマーク・インターハイスクール」(現:東京インターハイスクール)を開校するとともに、(特)日本ホームスクール支援協会設立。04年石川県白山市に「白山市美川特区アットマーク国際高等学校」、09年福岡県田川郡川崎町に「明蓬館高等学校」を開校。13年には東京都品川区に「明蓬館SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)」を開設した。

【主な役職】

株式会社アットマーク・ラーニング 代表取締役社長、美川特区アットマーク国際高等学校 理事長、東京インターハイスクール 理事長、明蓬館高等学校 理事長兼校長、(特)日本ホームスクール支援協会 理事長、一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク 理事

 

<今回のインタビューのポイント>(川北)

制度を利用するだけではなく、今ないものをつくりだすのがNPOや社会事業家。ニーズに応えるために、オペレートではなくプロデュースして初めて、存在意義があると言える。新しいものをつくるチャレンジャーであり続ける姿勢としくみづくりを、日野さんから学んでほしい。

 

「あなたの代わりに私がやります」

 神奈川県の第三セクターであるパソコン通信会社のケイネットの経営にかかわった際、「不登校生サロン」BBSで展開されている高度な議論に、驚くとともに大きな可能性を感じ、1997年、不登校児のためのインターネット・ハイスクール「風」を開校しました。ケイネットの事業縮小のため、2年で営業権を譲渡せざるを得ませんでしたが、約180人の生徒が学び、ニーズの高さを実感、インターネット・ハイスクールでの公益性と収益性は両立できると確信しました。

 学校法人をつくり、私学を立ち上げることも考えましたが、それだと5年~10年平気でかかってしまいます。すでに気にかかる中学生、高校生やそのご家族がいましたので、悠長に時間をかけることはできませんでした。そこで、株式会社立の新しい学校の立ち上げを決意し、ホームスクールやインターネットスクールの先進地であるアメリカへ何度も視察に行って提携校を探すとともに、設立資金を集め始めました。リクルート時代にお付き合いがあった日本IBMや日本マイクロソフトのOBから出資を募ったのですが、その際のくどき文句が「あなたの代わりに私がやります」です。

日本では、(戦後は状況が変わり、実践が減ってきましたが)キリスト教布教団体や功なり名を遂げた経営者が私学をつくってきた歴史があります。(不登校や発達障害など)スペシャル・ニーズを持つ子どもは増加の一方で、それぞれの事情や特徴に応じたきめ細やかな対応が必要ですが、メディア・テクノロジーをフルに使えば、経営的に成り立つことを訴えたわけです。

 

ICTと地域資源の融合で学校をつくる

 まず2000年に、インターネットを活用した通信制の高校「アットマーク・インターハイスクール(現・東京インターハイスクール)」を立ち上げました。ワシントン州のホームスクール支援校、アルジャー・インディペンデンス・ハイスクールと提携しており、アメリカの高校卒業資格を得ることができます。教科書やカリキュラムは生徒が主体的に決め、スクーリングの義務はありませんが、学習コーチングのサポートを受けられます。近年は、主に帰国子女等の受け皿となっており、2013年12月現在、約80名の生徒が在籍しています。

 2004年には、全国初の市町村認可による特区第一号高校「美川特区アットマーク国際高等学校」を石川県白山市に設立。2013年12月現在、約180名の生徒が在籍し、卒業時の進学率は通信制高校第1位(75%)、難関大学合格力は907位(通信制高校第1位)となっています。

 2009年には、構造改革特区制度のもと、福岡県川崎町に明蓬館高等学校を設立しました。不登校や発達障害の生徒を積極的に受け入れており、普段は自宅でインターネットを利用して授業を受け、品川・御殿山キャンパスでは随時補習が行われ、相談もできます。また、川崎町本校で年に10回程度実施される、3泊4日のスクーリングでは、全国から来たさまざまな生徒や地元の人たちと一緒に、普段の生活とはかけ離れた体験ができるため、心身とも大きく変化する子がいます。2013年12月現在、390名の生徒が在籍しています。

 

特区制度と廃校利用で、生徒も地域も活性化する

 川崎町の校舎は、06年4月に廃校となった小学校を町がリノベーションしたもので、地域との交流拠点になっています。実は、本校設立が決まった当初、「暴走族が来るのではないか」等の懸念や誤解が拡がり、地元で強い反対運動がおこりました。粘り強く対話の機会を重ねていくうち、青年団団長から「ここは、いろんな人を受け入れる抱擁力がある地域だと思う。このままでは限界集落になってしまうから、外の人に来てもらえるのはありがたいのではないか」という踏み込んだ発言がでるなど、徐々に理解を得てきた経緯があります。

 地域の人と向き合う中で、若手や高齢者は受け入れてくれやすいと感じました。ただ、初対面で反対する人は、それだけエネルギーがあるということなので、賛成派に取り込めば、強力な推進力を発揮してくれるものです。反対する人には、学校の運営や行事等にいろいろキャスティングし、(ボランティアではなく多少報酬を払って)学校運営に関与していただきました。また、4か月に1回開催される地域支援協議会では、情報公開と対話を続けています。

 その結果、明蓬館高等学校は、地域活性化の機会づくりの場として、役場や住民から厚い信頼と期待を受けるようになりました。たとえば、地域のお母さんたちと生徒が一緒に、校舎の調理スペースを使ってつくった地元の料理がとても美味しいと評判になったので、自信を得た町の人たちが、レシピ開発・農産加工品の製造を手掛けるようにもなりました。

 日本には現在4000もの廃校があって、これからも増えていきます。このようなかたちでの活用は、今後も大いにあり得ると考えています。

 

生徒と保護者のニーズを直視する

 スペシャル・ニーズを持つ子どもは増加の一方をたどっています。発達障害が原因で不登校となり、ひきこもりからうつへと進んでしまうケースも多く、早い段階での的確な対応が必要なことは言うまでもありません。

 そこで13年4月、品川区にSNEC(スペシャル・ニーズ・エデュケーション・センター)を開設しました。発達障害(LD:学習障害、ADHD:注意欠如多動性障害、ASD:自閉症スペクトラム)の専門家が、生徒・保護者面談の結果を基に個別支援・指導計画を作成し、学習面だけでなく、日常生活スキル、人とのかかわり方、進路・就労について個別指導・サポートしていきます。生徒自身の希望や得意な面を伸ばすことを第一に考えますが、保護者の多くは、SNECにたどり着くまでに相当疲弊しており、彼らに寄り添うこともまた大切です。

 

学校経営者の仕事はチームデザイン

 本校の教職員には、以下の3つを求めています。

①問題意識を持って、ライフワークとして取り組む意思のある人

②通信制の学校が自分にふさわしい(これがわが道)と思える人

③経営・継続を考えられる人(教職員には、二宮尊徳の言「道徳なき経営は犯罪である。
  経営なき道徳は寝言である。」を繰り返し伝えています。)

 

 専門性の高さはもちろん大事ですが、結局は「生徒と保護者の評価」なのです。また、何日もかけてこだわって教材をつくりこんだりする先生もいるので、仕事に納期を設け、2時間かかったのを20分でできないかなど、時間の使い方には常に工夫を求めています。

 中退率を下げるには、担任制が有効です。10代は承認されたい欲求が強いので、ソリューションを提供しなくても、決まった相談相手がいるだけでいいことも多いものです(逆に、教えられ過ぎると選択肢がなくなり、人のせいにしがちになります)。さらに、退学しそうな生徒の状況(家庭環境が複雑、勤労社会人であるなど)は早めにつかみ、一人の先生だけに任せず、教職員の会議で共有・協議するようにしています。

 また、教職員には外部の情報や専門家に触れてもらう機会をつくるなど、刺激を与え続けることが必要です。教員と職員、常勤と非常勤、内部と外部の専門家など、リソースを組み合わせ、各々の専門性や特徴を生かしながら高めあうことで、新しいものが生まれていきます。

 

必要とされる教育を生みだす

 アメリカでは、ホームスクールやチャータースクール、オンラインスクールなど、教育にいろいろな形態があるため、「不登校」という概念もないのですが、これらは、市民が自分たちに必要だと感じて、学校をつくる権利を行使した結果、各地で生み出されたものなのです。

 日本では、画一的な教育を受けなければという強迫観念がまだ強いですが、当社としては外部組織との連携も積極的に進め、今後もオルタナティブな教育機会を拡げていきます。

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